助産師の歴史 10 あったこともないことにする

年末年始に備えて12月後半は少しリスクのある産婦さんの分娩誘発が増える  と書くようになったなんて、10年ひとむかしですね。

10年前だったらまだ、「病院でのお産はスタッフが楽をしたいために日中に無理に産ませる」「医療介入の多い、『人間的でない不自然なお産』」とか批判があるかもしれないと、書くことをためらっていたかもしれません。

 

それでも誤解のないように説明をすると、一生に一度遭遇するかどうかの確率で起こる稀なことにも備え、救命することが求められている時代になりましたから、何かあれば周産期医療センターへ少しでも早くつなげることが大切です。

ほとんどを自施設で対応できていますが、時に出血が多くなる、新生児の状態が悪いなど、搬送の判断が必要になります。

あらかじめリスクが予想できる方のお産が、人手の少ない夜間・休日、長い休みなどにあたらないように調整し、できる限り安全な体制を準備することは、広く地域の周産期医療ネットワークシステムの中での分娩施設の責任ですね。

それでも「自然に」とおっしゃる方にも、待てるところまではどきどきしながら対応しています。

このリスクを見極め、待てるところは待つことができるのは、熟練した達人級の産科医の先生がたが、この半世紀で日本のお産を守って来られたからこそ、です。

 

そして、母子ともに無事に出産を終える、これもまた近代産婆の時代から一世紀以上をかけて引き継いだ本質だと思うこの頃です。

 

*「院内助産」とか「アドバンス助産師」について書かれていない*

 

昨日紹介した「科学的根拠に基づく 助産の本質」の最後に、「資料 助産をめぐる出来事」の一覧がありました。

 

1899年(明治32年)の「産婆規則」から1942年(昭和17年)の「妊産婦手帳」までは3項目しか挙げられていないのに、1945年(昭和20年)から1951年(昭和26年)「保健婦助産婦看護婦法改正案」まで3ページもあります。

GHQに対する気持ちが並々ならぬ人たちがまだいるようです。

 

さて、助産師会のみならず医療界でも大きな問題になったと認めざるを得なかったあの件は、どう書かれているだろうとみてみましたが一覧には書かれていませんでした。

 

では、女性には産む力がある、赤ちゃんには生まれる力があると進めた院内助産の話や、「正常なお産は助産師の手で」と鳴り物入りで始めたアドバンス助産師という民間資格はどうだろうとみてみましたが、見つけたのはこの一行だけでした。

2013年(平成25年) この年、助産師実践能力認証(施設助産師の実践能力としてラダーⅢレベルを認証する)仕組みづくりの動き。

 

 

なんだかなあ。

「出来事」であって、「歴史ではない」のでしょうね。

 

 

助産師の歴史」まとめはこちら