散歩をする 394 ふたたび平城京へと戻る

近鉄大和朝倉駅を14時35分発の大阪上本町行きに乗りました。初めての駅は戸惑いますね。出発ホームを間違えて慌てて階段を昇り降りしてなんとか間に合いました。

さらに近鉄八木駅で乗り換えを間違えて引き返したので、予定よりも30分遅れになりました。日没が早い時期なのに痛恨のミスでした。

 

市街地の風景が続いたのでちょっと居眠りをしてしまい、はっと気づいたら水田に白銀のススキの穂が幻想的な風景になっていました。近鉄橿原線奈良盆地の真ん中の水田が多い地域を走ります。一度乗ってみたいと思っていました。

枝に残る柿の色も美しく、沿線には溜池があちこちにあります。郡山城のそばを通過した時に、美しい堀が見えました。いつか訪ねてみたいものです。

九条駅のあたりでは灰色の屋根瓦に白壁の家が見えました。

懐かしい薬師寺と唐招提寺の裏手を通りました。2か月ほど前は夏の風景でしたが、今回は紅葉です。

 

15時38分に尼ヶ辻駅に到着しました。

 

垂仁天皇陵から喜光寺へ*

 

尼ヶ辻駅で下車し、垂仁(すいにん)天皇陵へ向かいました。車窓から小さなこんもりとした山が見えるのですが宝来山(ほうらいさん、ほうらいやま)古墳で、ここも宮内庁管理でまだ「本格的な調査はされていない」と書かれています。

 

住宅の間の小さな道を何度が曲がったのですが、昔は水路か小さな川だったと思われるような細い暗渠の道が周濠へとつながり、周りには畑や田んぼがありました。

水を湛えた周濠に沿ってしばらく歩きましたが、きっと稲穂が育つ時期には水面が隠れて水田の中に小さな山がポッカリとあるような風景になりそうです。

 

そこだけなんとも静寂な雰囲気で、自分がどこにいるのかいつの時代なのかふと混乱しそうです。周濠から離れて国道308号線の旧道に出て、車や自転車の喧騒に我に帰りました。

 

北へ150mほど住宅地を歩くと国道308号線のバイパスが通っていて、先ほどまで天皇陵のそばを歩いていたことが信じられない現代の風景でしたが、その手前にはしっかりと今も現役の水田がありました。

地図ではその田んぼを潤す水路は北側からきて、垂仁天皇陵の周濠へと流れこむように見えます。

そして周濠からは南へと水路が出て駅周辺の水田を潤したあと、唐招提寺のそばを流れて秋篠川へと流れているようですが、ここに至るまでどんな水利の歴史があったのでしょう。

 

天皇陵の周濠の水で育てられたお米、食べてみたいものですね。

 

途中、曲がり角に「喜光寺 徒歩5分」とお手製の地図があり、「行基さん大感謝祭 2022年」というポスターが貼られていました。

人気絶大。希代のカリスマにして、国土づくりの先駆者。そして大仏造立プロジェクトを成功に導いた名プロデューサー。仏の心を、民衆の暮らしを、日本の未来を、見つめ続けた行基さん。

「大感謝祭」なんてバーゲンみたいだとクスッと笑ってしまいましたが、「行基さん生誕1354年」の記念イベントが11月20日にあるようです。

 

バイパスの地下道を通って北へと出ると、お寺がぽつりと建っているのが見えました。

のんびりと歩いていたので閉館時間のあとで中には入れませんでしたが、尼ヶ辻駅の近くの古墳のあたりを地図で眺めていた時に見つけたお寺を見ることができ、さらに「民衆の暮らし」をつくってきたことで十数世紀後にも「行基さん」と呼ばれている雰囲気を偶然にも知ることができました。

 

 

大和西大寺駅から近鉄線で平城宮跡を見る*

 

天気予報では降雨確率ゼロだったのに、喜光寺のあたりでパラパラと狐の嫁入りの雨になりました。盆地のお天気でしょうか。

 

少し北の菅原天満宮の近くに水路があるはずなので目指すと、角に「菅原町案内図」がありました。水路や溜池がしっかり描かれている地図で、目指していたのは「遺跡天神堀」であることがわかりました。

菅原天満宮の前には「水利組合集会所」も描かれていて、やはり溜池や水路が今も大事にされている生活なのでしょうか。

 

木や白壁に灰色の瓦の落ち着いた家並みを歩くと、「歴史の道」がありそれをたどると近鉄西大寺駅方面へと出るようです。

小さな池と公園のような場所があり、ここが天神堀のようです。西の少し離れた場所に今池がありそこからの水がいったん溜められ、そしてまた水路で住宅のそばを流れているようでした。

 

北へと向かうと住宅の間に四角く広い水田がありました。ここも現役の水田のようです。

さらに北へと向かうと西大寺の境内と保育園の前に出ました。帰宅してから西大寺を検索して、初めて東大寺に対して建てられたことを知りました。

 

近鉄大和西大寺駅南口は、通勤通学の多勢の人で混雑していました。

奈良行きの列車が出発すると、じきに広大な草むらの中に建つ大極殿正殿が夕日に輝いている風景が現れました。

 

時空を超えてあちこちを歩いた一日が、一気に蘇ってくるなんとも壮大な景色でした。

 

 

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