一昨年の10月下旬に北上川の始まりのあたりを見に出かけ、そのあと八戸駅から馬淵川沿いに本八戸駅まで歩きました。美しい馬淵川と落ち着いた八戸の街、そしてはっと汁の美味しかったこと。
ここ1ヶ月ほどその地名がニュースから流れ、日々増えていく人数に大変なことになってしまったと、心が痛みながら何が起きたのだろうと情報を追っていました。
断片的な情報はあってもなかなか全体像がわからなかったところ、10月21日に謝罪会見がほぼ全文ニュースになっていました。
読み始めるうちに自分自身がさまざまな当事者に立ったような気持ちになりながら、惹き込まれる会見内容でした。
覚書のために記録に残しておこうと思います。
「本当に申し訳ございませんでした」「吉田屋」吉田広城社長が涙を浮かべ謝罪会見 弁当の集団食中毒から35日… 改善報告書の提出など報告 【冒頭20分間の謝罪内容・ほぼ全文】
全国で500人を超える食中毒患者が発生した弁当の製造会社「吉田屋」の社長が21日会見を開き経営者として「慢心と油断」があったと謝罪しました。
吉田屋 吉田広城社長
「今回の食中毒事故におきまして健康被害にあわれた皆さま、そしてご家族の皆さま、本当に辛い思い、苦しい思いをさせてしまったことに対するお詫びをさせていただきたい。本当に申し訳ありませんでした」
八戸市の「吉田屋」が製造した弁当を巡っては全国29都道府県で521人の食中毒患者が確認されていて、市の保健所は推定される食中毒の発生原因に外部委託したコメを冷却する間に原因菌が増殖したことなど5点を挙げています。
会見で吉田広城社長は外部委託したコメを受け入れ独自の判断で冷却するなど「慢心と油断」があったと述べました。その上で被害者への補償については販売店舗と弁護士を通じ進んでいるとしました。一方で発生から1ヶ月以上会見を開かなかったことへの批判には全容の把握や原因究明、被害者への対応のめどが立つまで時間を要したと説明しました。
吉田屋は今後、外部業者に炊飯を依頼しないなどとする改善報告書を10月18日付で保健所に提出していて、営業禁止処分の解除に向け業務の改善をしたいとしています。
【以下、「吉田屋」吉田社長の冒頭20分間の謝罪のほぼ全文です】
まず、今回の食中毒事故におきまして、健康被害にあわれた皆様、そして、ご家族の皆様、本当につらい思い、苦しい思いさせてしまったことに対する、お詫びをさせていただきたい。
本当に申し訳ございませんでした。
食中毒の発生から1か月が経ちました。その間、世間をたいへんお騒がせしています。先日、保健所より食中毒の原因、発表がありました。これを受けまして、その経緯と業務の改善、その状況においての詳しくお話をさせていただきたい。
駅弁は旅のお供であり、郷愁を誘うそのような商品の側面があると思います。一方、お弁当作りは時間と温度管理が勝負です。調理・盛り付け、チェック、運搬、配達、保管、そして販売。その工程を短時間のうちに適切な温度管理のもとすべてが一直線になり行わなければなりません。
今回の食中毒は、外部の米飯社が製造したご飯が端を発している形になっています。しかし、製造された米飯を受け入れ、そして独自の判断により冷却し、それを使用した。そのこと自体が、今回の食中毒の発生させた大きな要因です。
保健所からは、外部で製造された米飯の受け入れに伴うリスクの認識があまかったという厳しい指摘をいただきました。その通りでございます。納入される米飯について、発注時に温度指定をしていたにも関わらず、受け入れ時、温度の測定を初日はしていなかった。盛りつけ時までそのままの状態で保管していた。盛り付け時に温度の高いことに気づき、自社の判断で冷却して使用した。
そのことにより、不適切な温度管理のもと、時間経過で菌が増殖する恐れがあることを十分に理解せずにいたったことは、手前どもの責任は本当に大きいと痛感しています。そして、このような誤った判断をしたことは、経営者の私の慢心と油断があったのだと強く痛感しています。
皆さんのお口に入る、そういったものを作っている、商いをしている、そういう自覚がもっと強ければ、このような事態にはならなかったと強く感じています。
今はただただ、そのことを恥いるばかりです。
本当に申し訳ありませんでした。
また、今回の食中毒によって、全国に521人もの被害を拡大した全国に及んでいます。被害を受けられた方にはたいへん、辛い思いをさせてしまった。本当に心より謝罪申し上げます。申し訳ございませんでした。
当社の弁当を販売したスーパー・販売店・商品の回収、お客様の最前線にたって、説明と謝罪をしていただきました。多大なるご迷惑をおかけしたとともに、深く感謝申し上げます。ご対応ありがとうございます。
全国の同業の駅弁業者、その従業員の方々、風評で9月の事故以降、イベントが中止になったと聞いています。その件も本当に申し訳なく思っています。すみませんでした。
また、駅弁フェアなどを通じ、旅のおともとしての駅弁を愛するファンの皆様、多くのお客様にお弁当の信頼を失墜させたことに対する申し訳ないという思いも強くあります。
今回の食中毒事故を通じて、私自身、弁当を製造することが社会的にこんなに大きく影響するのだということをあらためて痛感しています。
これから、再発の防止、信頼の回復、精一杯、努力してまいりたいと思います。
地元八戸を有名にしたい、そういう思いで頑張ってきました。しかし、ニュースでこのように八戸を多く取り上げることになり、本当に深く申し訳ない気持ちでいっぱいでございます。まことに申し訳ございませんでした。
いまできることは、保健所とともにしっかり再発を防止するそういったシステムを構築し、また、1人1人のお客様に向き合い、1つ1つの工程を丁寧にしっかり、確実に実行し、ファンの皆様にまた信頼して買っていただけるような商品づくりをすることだと思っています。
皆様におかれましては、引き続き、見守っていただけますよう、ふして、よろしくお願い申し上げます。
(2023年10月21日、ATVNEWS青森テレビ)
この謝罪会見の内容そのものが失敗とその責任に向き合う大変さが伝わってくるものですが、自分がその立場だったらどうしていたかと突き詰められるように読みました。
そして、たくさん寄せられたコメントもまた正論で石をぶつけるかのようなものが少なかったことにホッとしました。
やはり、みなさん業種は違っても同じようにシステムで事故を防止するリスクマネージメントが浸透してきたここ30年ほどを共に生きてきたのだと、この謝罪会見とコメントから実感しました。
生きている限り、誰もが事故や犯罪を起こす側になる可能性があり、またそのどちらの家族にもなる可能性があるので、失敗から再発防止の教訓を得るということは最悪の状況から祈りと希望へと変えることでもあり、それこそがリスクマネージメントの本質ですね。
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