某「機能性表示食品」の健康被害について、先日、厚生労働大臣がお怒りだというニュースが流れました。
「○○」死者調査の報告3月以降なし、武見厚労相「もう任せておけない」…○○製薬「確認を重視」と釈明
〇〇製薬の「〇〇」成分入りサプリメントを巡る健康被害問題で、同社が摂取との因果関係を調査している76人の死者について、厚生労働省に報告していなかったことが28日、明らかになった。問題の発覚時にも行政への遅れが指摘されており、同社の姿勢に批判の声が上がっている。
「報告がなかったことは極めて遺憾。もう〇〇製薬だけに任せておけない。厚生労働省が〇〇製薬に調査計画を立てさせ、進捗状況も管理する」。この日、報道陣の取材に応じた武見厚労相は、語気を強めた。
(以下略、製品と製薬会社の名称は引用者が変更)(読売新聞、2024年6月29日)
たぶん、私自身が20年ほど前からの医療と代替療法の問題を考える機会がなかったら、なんと無責任な会社だろうと思っただけだったことでしょう。
今回のこのニュースの怒りをあらわにする大臣の顔を見て、逆にそれはないよなと思いました。
「効果がある」「効果はわかっていない」の境界線を曖昧にしたまま、虚構の世界が繁栄するようにしたのはそもそも政治の力だったのですから。
厚労大臣と消費者庁長官の責任はどうなのでしょう。
現実のさまざまなことが高度な専門性で築かれている現代社会では批判や謝罪よりは再発防止の視点が必要で、まずはトクホやら機能性表示食品について根本から見直すのが製造業にしても医薬品会社にしてもリスクマネージメントではないかと思いながら、憮然とした厚労大臣の顔を眺めたのでした。
*機能性食品とトクホ*
2000年代に入って、それまであまり考えたことがなかった「健康を商売にする」機運がこういう代替療法の広がりとともに増えました。
今回のサプリメントというのは医薬品ではなく「機能性表示食品」だそうです。
そういえば「トクホ」というのもあったけれど違いは何かと検索したら、消費者庁の「機能性食品表示とトクホ、何が違うの?」という説明がありました。
特定保険用食品(トクホ)
消費者庁長官が許可した内容を表示
機能性表示食品
本品は、事業者の責任において特定の保健の目的が期待できる旨を表示するものとして、消費者庁長官に届出されたものです。
医療の「保健」とも違う世界のようです。この法案を通した政治家の皆さんの責任は問れないのでしょうか?
今までこのトクホや新しく何か類似したものが出たらしいニュースがあっても、「効果があれば医薬品になる」のでそれらはただの気休め的な商売ぐらいにしか受け止めていませんでした。
その裏にはこんな抜け道的に広がっていたとは。
ああ、だから一日中なんだか「健康」「若返り」のシュールな広告ばかりになって、しかも儲かるからテレビのCMができるのですね、きっと。
「健康」まで虚業になり、そこで犠牲になったり被害にあう「ヒト」が出てもその失敗は認めない。
ちょうど医療に「経済財政諮問会議」やら「骨太」やら新しい資本主義が入り込んできた時期と重なりますね。
おかしいとは思っていてもきちんと考えなかった私自身にも、また責任がありそうですね。
おそらく、大臣の怒りは被害者の国民を思ってというより、なんらかの損失を自身が被ることへの怒りのように見えてしまいました。
うがちすぎならよいのですけれど。
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