最近になって高麗人蔘茶のことを思い出したのはテレビでその「問題」を耳にしたからですが、番組の合間には「〇〇で膝の痛みが取れる」「何歳若返る」といったサプリや化粧品の宣伝、言い換えれば人生のパフォーマンス向上のための「ドーピング的振舞い」とかの宣伝が入ります。
インシデントレポートを読んでいるかのような現実問題をとらえた内容だったのに、コマーシャルでは一転して自己実現とか自己啓発が延々と死ぬまで続く現代の中高年の世界に世の中はあまり矛盾を感じないものなのでしょうか。
どちらが現実の世界なのか、混乱しますね。
まあそれがいつものあちらの世界なのかもしれませんが。
*高麗人蔘の効果と副作用*
ここ10年ほど代替療法とは何かを考える機会があったおかげで、「効果はない」「効果はわかっていない」あたりを整理して考えることができるようになってきました。
最近では厚生労働省でも『「統合医療に係る情報発信等推進事業」』というサイトがあり、「朝鮮ニンジン、(高麗人参、オタネニンジン)」の説明を読むことができます。
「背景」にはこんなことが書かれています。
・朝鮮ニンジンは、中国、韓国、極東シベリアなどの極東が原産です。朝鮮ニンジンは、何千年もの間、健康目的で中国伝統医学に使用されてきました。
・健康目的で最も多く利用されているのは根の部分です。
・朝鮮ニンジンの経口(口から)摂取は、環境ストレスへの抵抗を高めるため、また、心身の健康を改善するための全身強壮剤として良いとされています。朝鮮ニンジンはサプリメントとしても利用されており、体力、集中力および記憶力の向上、免疫機能の活性化、アンチエイジングのほか、呼吸器疾患、心血管疾患、うつ病、不安、更年期のホットフラッシュなど、さまざまな健康上の問題を改善するされています。
これを読むと「効果があるのか」と思いそうになりますが、これはあくまでも「背景」で、続きをきちんと読む必要があります。
これまでに解明されていること
・これまでに解明されている朝鮮ニンジンに関するランダム化比較試験の多くは、質の高い試験ではない可能性があります。したがって、朝鮮ニンジンの健康促進効果に関する理解には限界があります。
科学的根拠に基づく医療という言葉が生まれたのは1992年ですから、世の中にきちんと「効果とは」という意味が浸透するにはまだまだ時間が必要そうです。
さらに「安全性」についてにはこんなことが書かれています(抜粋)。
・朝鮮ニンジンを推奨量で短期期間経口摂取する場合(最大6ヶ月)、多くの人では安全と考えられます。しかし、長期安全性に関する疑問が生じており、一部の専門家は幼児、子供、妊婦および授乳期の女性に対する朝鮮ニンジンの使用に反対しています。
。不眠症(睡眠障害)は朝鮮ニンジンで最も多くみられる副作用です。そのほかの副作用には月経異常、乳房痛、心拍数増加、高/低血圧、頭痛、食欲不振、消化不良などがあります。
・朝鮮ニンジンが血糖値に影響することを示唆するエビデンスが得られています。糖尿病の人は、朝鮮ニンジンを使用する前にかかりつけの医療スタッフに相談しましょう。
・妊娠中の朝鮮ニンジンの経口(口から)摂取は安全ではない可能性があります。朝鮮ニンジンに含まれる化学物質が、動物では先天異常を引き起こすことがあきらかになっています。授乳中の朝鮮ニンジン摂取の安全性にはほとんどわかっていません。
(強調は引用者による)
*科学の最先端をいくイメージの製薬会社ですが*
1960年台、小学生だった私には合わない味でしたが、高価な箱に入った粉末の高麗ニンジンや大きな薬品瓶の中に浸かっている高麗ニンジンのイメージは「効果がある」しかありませんでした。
半世紀後に、「効果はわからないけれど、副作用がある」ことまでわかるようになりました。
ところが「高麗ニンジンの効果」で検索すると、「活力をサポート」「健康の土台を作る」「冷え性」「虚弱体質」「発育期」に効能があるといった表現が、サプリメント専門の会社だけではなく医療機関で医薬品を納入しているような製薬会社でも使われていました。
まだまだ医療と代替医療は混沌としていますね。
そして世の中にシュールなことが多いと感じるようになったのも、1992年ごろからの医学の変化のおかげかもしれません。
「シュールな光景」まとめはこちら。
失敗とかリスクについての記事のまとめはこちら。