記憶についてのあれこれ 18 <馬が泳ぐ>

録画してあったサラメシの7月7日放送分を見ました。


福島にある競走馬のリハビリ施設での撮影でしたが、馬が気持ち良さそうに泳いでいるのを見てとても親近感を覚えたのでした。


番組ではリハビリ用なので泳ぐというより温まる話が多かったのですが、「馬診便り」を見ると調教用のプールの歴史や泳いでいるときの馬の状態が書かれていて興味深いです。


30〜50mのプールや流れるプールがあるそうで、その「流れるプール」は人が流されるほどの水圧のようです。


「1周50mのプールを平均45秒から50秒で泳ぐ競走馬がほとんどです」「なかには泳ぎ上手で1周35秒ぐらいで泳ぐものもいます」とありますが、これだと断然、ヒトの競泳選手の方が早いですね。
あ、もしかしたら私も馬と大差なくおよげるかもしれません、うふっ。
陸上で走ったら絶対に馬と同じスピードなんてあり得ないですけれど、水中なら負けないかもしれません。


水の中で速く泳げる馬が必ずしも陸上で速い訳ではなく、その逆もまた然りのようです。


陸上で走る時の呼吸数が1分間に120回であるのに対して、プール内で泳ぐ際には1分間30回程度なので、やはり馬にとっても泳ぐのは有効な有酸素運動なのかもしれません。
でも番組の中でもプールからあがってくる時の馬はなんだかよろけていて、いかにも疲れた様子が漂っていました。


<馬が好きだった父>


さてタイトルは「馬が泳ぐ」ですが、馬をみると馬が好きな父に関しての記憶があれこれと思い出されるのです。



私が小さい頃、家に木で作った鉛筆立てがありました。
その4つの側面にはアヒルと少年とか童話風の絵が彫り込まれていて、その中のひとつに颯爽と走る馬が彫られていました。


父が小学生の頃に作ったものだそうです。


父は手先がとても器用だったので、その鉛筆立ても小学生が作ったとは思えないほどのできばえでした。
馬は本当にそこから飛び出してくるかのような躍動感が伝わっていました。


それ以外にも家には馬を描いた絵がいくつかあったと記憶しています。


どうやら父は馬が好きだったらしいということは感じていましたが、詳しい話を聞いたことはありませんでした。


10年ほど前に父が認知症になり1日に何度も散歩に出かけるようになった頃、時を同じくして、実家の近くにある休耕田の跡地に厩舎ができて父の散歩コースになりました。
厩舎の方も父の事情を察してくださって、馬の近くに行くことも許してくれていたようです。


「お父さんは小さい頃から馬が好きだったの?」「どこで馬と接していたの?」
もう答えは父の記憶からは消えていました。


陸軍幼年学校という日本軍のエリートコースに進み戦争のまっただ中に突入していた少年時代の父にとって、あの颯爽と走る馬はどのような思いがあって彫ったのだろう。
その答えもいまはわからないままです。


ただ、馬が好きだった少年期を戦争に費やした父に対して、あの厩舎はもしかしたら神様からのプレゼントだったのかもしれないと思えるのです。






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