世界はひろいな 16  <野菜でもあり果物でもあり>

前回の記事で「草本(そうほん)」という用語を紹介しましたが、私がこの言葉を知ったのはバナナがきっかけでした。


「バナナは木ではなくて草」だということがどこからともなく広がり、バナナが実際になっているところを見たことがない日本人でも、なんだかそれまでのバナナのイメージが覆されて「へー」というトリビアになっていったのが1980年代でした。


その火付け役は、鶴見良行氏の「バナナと日本人」ではないかと踏んでいます。



私も東南アジアに暮らしてバナナの「木」は身近にありましたので、「あれは草なのか」とあらためて驚いたのでした。
2〜3mにはなりますからね。


その後、バナナプランテーションを見学させてもらう機会があって、苗の段階から成長して収穫の時期を迎えるバナナの状態をみて「草」なのだと実感したのでした。


<バナナは果物ではなくおもに主食であり野菜>


バナナは草であることも驚きでしたが、1960年代にバナナ輸入自由化によって日本でもそれまでの高級果物から庶民的な果物になった80年代に、生産国ではあれは果物ではないということにも驚いたのでした。


果物として食べられるのは主にモンキーバナナのような小さい種で、日本で見かけるようなキャベンデイッシュはほとんどみかけず、あっても味が好まれないようでした。


おもにプランテーンという加熱加工するタイプが好まれていて、茹でたり、油で揚げたりして主食として食べていました。


wikipediaバナナでは以下のように書かれています。

バショウ科バショウ属のうち、果実を食用とする品種群の総称、また果実のこと。いくつかの原種から育種された多年草

「バナナの木」と言われるように、高さ数mになるが、実際には草本であり、その意味では果物ではなく野菜(果菜)に分類される。

いやあ、果物なのか野菜なのかわけわかんないですね。



日本では考えた事もない食べ方が、バナナの花を食べることでした。
wikipediaの写真にあるように、紫キャベツを大きくしたような形をしています。間に見える黄色い部分(果指というのですね、言い得て妙)が成長して何キロもの大きなバナナの房になるのですが、その先端の花をサラダにしたり、ココナッツミルクと煮込んだりして食べられていました。


こうなると「野菜」ですね。
バナナは果物なのか、野菜なのか、はたまた主食なのか。


<若いうちは野菜、熟すと果物>


熱帯で暮らして「野菜か果物か」を考え続けて来たもうひとつの理由に、同じ植物がその時期によって野菜にもなり果物にもなるものがあったことでした。


マンゴーアレルギーで泣く泣くマンゴーをあきらめた話でも書きましたが、マンゴーは熟す前はどちらかというと野菜の感覚で副食として食べます。


似たようなものとして、パパイアがあります。


80年代初めの頃は日本ではまだパパイアはほとんどお目にかからない果物でしたので、マンゴーの代わりに「帰国するまでに食べられるだけ食べよう」とどん欲に食べていましたが、果実としてでした。


だんだんと現地の家庭料理を食べる機会が増え、庭からひょっと青いパパイヤをとって来て野菜として料理に使うことを知ったのでした。

沖縄やフィリピン、タイなどでは、果物としてよりも、むしろ野菜として扱う。未完熟で青いパパイヤの皮をむき、果肉を千切りにし水にさらして炒め物に使う。

日本ではその後エスニック料理の流行で、タイのソムタムのように生でサラダとして食べることのほうが知られるようになったのかもしれません。


パパイアの果実には種がたくさん入っていて、スイカのように食べながら地面にプッと吐き出すと、半年後ぐらいにはすでに1mを超えて育っているほどです。
「木」だと思っていたのですが、たしかにwikipediaにあるように台風などですぐに倒れてしまいます。

パパイアは多年生であり、背が高くなり、しかもしだいに茎が太くなるので、樹木と見ることができるが、茎は非常に柔らかく、台風などで容易に倒れる。また幹部は木質化しておらず、倒れたものがかれると、すぐに腐って軟化するため、木ではなく草として捉えられる場合もある。

いやはや、草なのか木なのか、果物なのか野菜なのか。


日本で、熟す前は野菜、熟したあとは果物として食べているものは思いつかないのですが、ご存知の方、是非教えてください。





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