10年ひとむかし 20 <チョコレートは幸せな気分になる食べものだった>

チョコレートというと思い出す光景がいくつかあります。



私が4歳ごろに、お正月にフェリーに乗って家族で伊勢神宮に行ったのですが、夜暗い中でフェリーに乗った記憶がかすかにあります。そして、幼児には少し怖く感じる夜の船旅とくっきり対照的に思い出すのが、船の中で食べたガーナチョコレートの赤いパッケージでした。


Wikipediaガーナチョコレートの説明を読むと、私が食べたのは発売されて間もなくの時期だったようです。そして赤い箱の記憶は、間違いではなかったようです。


小学生になると、遠足の前の日はおやつ選びで楽しかったですね。
キャラメルやチョコレートの製品の種類がどんどんと増えていった時期で、今もまだ変わらずにある製品がけっこうあります。
アポロチョコレートは、パッケージの愛らしさとイチゴ味を1年中味わえるお菓子として大好きでした。


こんなに美味しいものができる「ガーナ」という国はどんなに素敵な国なのだろうと、空想の世界にも引き込まれました。



1970年代に入ると、洋酒入りチョコレートなど日本製のチョコレートの種類も増えました。


1985年には1ドル250円が120円になり、身の周りに輸入品が増え始めた時代に入ったことはこちらの記事にも書きましたが、1980年代以降は、チョコレートも世界中から珍しい製品が手頃な価格で買える時代になりました。


あるいは小さな一口大のチョコレートが1個200円から数百円するような高級チョコレートも登場するようになったのは、80年代から90年代あたりだったのかもしれません。



<バレンタインデーと義理チョコ>


私が高校生の頃には、気になる男性にチョコレートを渡すバレンタインデーが近づくとドキドキしていました。
当時は、いつ頃からそんな風潮が流行り出したのか考えたこともなかったのですが、「以前から」そうだったのだろうぐらいに思っていました。


Wikipediaを読むと、どうやら1970年代に始まり定着したようなので、この時代から鵺(ぬえ)のように広がっていくバレンタインデーのお先棒を担いだひとりだったのだと、ちょっと赤面したい気分ですね。


ところが、そんな私もさらに驚いたのが義理チョコでした。
1980年代半ばに東南アジアで暮らして帰国したら、義理チョコとホワイトデーがあっという間に広がっていたのでした。
ああ、なんと無駄なことを・・・と思っても、職場の力学には勝てず、お金を徴収されたのでした。


<嗜好品から健康食品へ?>


高カカオチョコレートで検索していたら、国民生活センター「高カカオをうたったチョコレート」がありました。てっきり、認知症との関係についての注意喚起と思ったら、日付が9年前になっています。

チョコレートは普通30〜40%のカカオを含むが、最近カカオ分が多いことをうたった「高カカオチョコレート」が、各社から発売され、種類も急激に増え、売り上げを伸ばしている。


しかし一方で、高カカオチョコレートはカカオの含有量が多いことから、脂質が多くエネルギーは相対的に高い。また、利尿作用や興奮作用のあるテオプロミンやカフェインが含まれていたり、アレルギーを起こす人がいることも知られているため、摂取には注意を必要とする人もいる食品である。さらに、近年、残留農薬やカビ毒の一種であるアフラトキシンが、チョコレートの原材料である生鮮カカオ豆から検出され、積み戻しや廃棄が行われていた報告もある。
(強調は引用者による)


たとえ9年間の間に、原料の管理が改善されたとしても、赤字の部分は変わらないことでしょう。


さて、10年ぐらい前に高カカオが話題になったあたりの記憶が、全く私には残っていないのでもう少し検索してみました。
「nikkei BPnet」というサイトの「明治製菓の『チョコレート効果』(1)〜カカオの割合を高め、健康志向の消費者をつかむ」という、2006年のインタビュー記事がありました。

1993年に、みのもんたさんが司会する情報番組をきっかけに、「ココアブーム」が到来しました。ココアに多く含まれている「カカオ・ポリフェノール」という成分が、健康志向の高い消費者の注目を集めたからです。

このブームに対応する形で明治製菓が発売したのが「チョコレート効果」です。高カカオ、高ポリフェノールを特徴とした商品でした。発売当初の売れ行きはそこそこ。以降、売り上げが低迷した時期もありますが、やめることなく継続して販売してきました。

2004年の秋、タレントの楠田枝里子さんが『チョコレート・ダイエット』という本を出版しました。本には、カカオの割合が70%以上のチョコレートを毎日の食生活に正しく加えると、ダイエット効果を発揮すると書かれています。
この本の発行を機に、カカオの効用が雑誌などで取り上げられるようになり、高カカオチョコへの関心が急速に高まったのです。

ああ、そうですか。
そしてさらに10年後には、認知症予防として「健康志向の消費者」(私の母とか・・・)の心をつかんだのですね。


なんだかなあ。
あの幸せな気分で食べていたチョコレートが、思えば遠くへ来たものです。




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