4月5日の記事から競泳会場で感じた話がもう少し続きます。
大会の最終日、いつもの通り選手の皆さんのアップの様子を観るために、競技開始1時間前の開場に合わせて辰巳に向かいました。
平日は並ぶことはないのですが、土日、特に日曜日は観客が増えるので少し列ができます。
といっても、数十mぐらいですが。
いつもと違うのは、いくつかのテレビ局のカメラマンとアナウンサーがいたことでした。
珍しいなと思いながらも、建設中のアクアテイックセンターを眺めながら門が開くのをぼーっと待っていました。
しばらくすると、カメラが私たちをとらえ始めました。
「(え〜、勝手に映さないで)」と背中を向けました。
そして、アナウンサーの練習する声が聞こえました。
「見てください。開場1時間前からもうこんなに並んでいます。皆さん、やはりスーパー女子高生の活躍に期待されているのですね」、とちょっと興奮気味のトーンでした。
たしかに、ここ3〜4年ほどの活躍は目覚ましいものです。中学生から高校生だと周囲からの期待だけで押しつぶされていきそうなものなのに、飄々と記録を伸ばしていっています。
最近では国際大会でも世界のトップ選手と互角に闘う力を持つようになって、技術だけでなく精神的にも伸びている姿をみるのは、こちらもうれしいものです。
さらに彼女のコメントは有頂天にもならず、淡々と自分のレースを振り返り、そして目標に対してどうしたらよいのか客観的に語る点でもすごいなと思います。
特に、今年は出場するたびに日本新記録を更新していくので、マスメディアが注目しないはずはないことでしょう。
ただ、アナウンサーの言葉に、「ここに並んでいる人は皆、それぞれの想いがあるのに、勝手にひとまとめにして欲しくないな」と思いました。
<話題性とか興奮性の怖さ>
こちらの記事の「自分に与えられたタラントンを見い出す」で、最近、話題性だけで世の中に消費されていくようなスポーツ選手の葛藤をテーマにした番組を観たことを書きましたが、もうひとつ番組名を忘れたのですが、陸上の末續選手の話を偶然観ました。
たしか「10秒の壁」への強いプレッシャーについてだったと思います。「どんなに優勝しても頑張っても、そのことは称えられずに、『10秒を切れなかったね』というようなことばかり言われた」ことで精神的に病んでいったという話でした。
競泳も同じで、イアン・ソープ選手やグラント・ハケット選手も引退後にうつ病などで苦しんでいることを知りました。最近では、あのフェルプス選手も深刻な不安症とうつ病に苦しんでいたことが報道されました。
優勝やメダルを期待され新記録を期待されていくことが、時にどんなに残酷な結果になることでしょうか。
それを後押ししてしまうのが、観客側の興奮にあるのかもしれません。
末續選手が10年ぶりに陸上選手権に出場した時、会場が温かい拍手に包まれたことをその番組では伝えていました。
ほんと、わかります。
実際に競泳会場でも、話題性だけでない、静かな興奮の場面がたくさんありますからね。
私は、一人一人の選手が、それぞれの目標のどの位置にいるのか理解しながら応援するために開場前から並んだのですけれど、「日本新記録連発に興奮する観客」の一人として映されたら、ちょっと不本意ですね。
「イメージのあれこれ」まとめはこちら。