先の衆議院議員選挙のあと、これで今までの政府に感じたことがないような怖い手法で健康保険証が廃止されようとしている流れが見直されるかな、取りすぎた消費税という失敗が少し見直されるかなと期待したのに、急に空気が変わってしまったことに驚く毎日です。
選挙前には消費税の見直しやマイナンバーカードへの意見もたくさんあったはずなのに、突然「103万円の壁」に話題が移ってしまい賛同する意見が大量に書き込まれるようになりました。さらに党首自身がそれまで主張していたことと矛盾した行動で批判されそうになると、政治家の個人的な問題と政策は別だとまた大量のコメントが書き込まれるのはなんなのだろうと思っていました。
選挙で荒稼ぎや世の中へ大きな影響を与える新たな山師的な仕事によるものなのでしょうか。
でも書き込まれる意見を読むと、あの80年代90年代の開発途上国での草の根運動や母乳推進運動に感じた「どこを切っても金太郎」に似ている印象です。
とても組織的で、組織が優先する問題には熱意があるけれど、もっと生活上のさまざまな問題があるはずなのに組織の末端にいる人やそれ以外の声はかき消される。それに似ているような気がします。
たとえば消費税を下げれば、生まれたばかりの赤ちゃんからの高齢者まであるいは生活費への負担が減るのですから、国民の生活を考えると優先順位はそちらではないかと思うのですけれど。
ところが、なんだかかたくなに「手取りの増額」に固執しているように見えました。
ああ、その背景は労働運動の対立の歴史だったのかと、この記事を読んで腑に落ちました。
私自身は労働運動に関わったことはないし労働運動の歴史もわからないのですが、良い意味で共産党系と学会系の人は世の中のことに一生懸命になるのが似ているのに、政治運動となると半目しあうのが不思議だと思ったことがあります。
新たなネットでの選挙運動の時代のように言われているけれど、この記事を読んで「反共」でくっついたり離れたりの半世紀間の「イデオロギー闘争」がその根底にあるから、あの大量の書き込みがあるのかと印象が変わりました。
いろいろとねじれた社会ですね。
そしてだから隙を突かれるのでしょう。
覚書のため記事を書き写しておきます。
実は 「空中分解寸前だった」 国民民主党、 「103万円の壁」の「次」は何か
(「ビジネス➕IT、2024年11月24日)
保有議席の4倍に当たる28議席を獲得し、大躍進を遂げた国民民主党。21日には自民・公明の与党とともに「年収103万円の壁」を見直すことで合意することに成功した。しかし、その躍進の裏では4つの支援労組のうち2つが離脱寸前の危機にあり、いつ空中分解してもおかしくない状況だった。他党からの吸収工作やメディアからの軽視を乗り越えた彼らは「103万円の壁」の次に何を目指すのか。国民民主の真の姿に迫る。
国民民主を支えてきた4つの民間労組
「私たちは本当にギリギリのところまで追い詰められていた。今回の衆院選で国民民主党は現有議席の4倍に当たる28議席を獲得し、大躍進したもので、この選挙までは、国民民主党を支援する4労組(4産別)のうち2つが離脱する瀬戸際で、いつ空中分解してもおかしくなかった」
そう振り返るのは、国民民主関係者だ。立憲民主党、日本維新の会に次ぐ野党3党というポジションにありながら、存在感をなかなか発揮せず、支持率は長い間低迷していた。
国民民主は、4つの民間労組(産別)が支えてきた政党である。それらの組織は、参院比例での得票順に、電力、自動車、UAゼンセン、電機となっている。ちなみにUAゼンセンは、小売流通や繊維を中心にアルバイトやパートで構成された組織である。
参議院議員選挙の比例では、この4つの民間労組がそれぞれ候補者を立てていたが、2019年、2020年の参院比例選で獲得できたのは3議席のみであった。
いずれも電機系労組(電機連合)が擁立した候補者が落選している。しかも、電機が擁立した候補者である矢田稚子(やた・わかこ)氏が獲得した得票数は15万929票であったが、かつて同じ「民主党」であった立民(立憲民主党)の比例最下位当選者の得票は11万1703票であった。
つまり、矢田氏が立民から立候補していれば当選していた可能性が高く、国民民主ゆえに敗北を喫したということになる。
自民党に取り込まれそうになった経緯
こうした点に目をつけたのが、自民党の麻生太郎氏と茂木敏充氏であった。落選した矢田氏を岸田内閣の首相補佐官として取り込み、あわよくば国民民主そのものを自民に飲み込もうという算段があった。
「来夏の参院選が近づく中で、比例で最下位当選だったUAゼンセンが、参院選比例候補の公認申請をなかなか出そうとしなかった。国民民主内では、電機が立憲へと合流するのではないかと疑心暗鬼になっていた」(国民民主関係)
このように、国民民主は空中分解寸前まで追い込まれていたのである。国民民主の創立メンバーの1人である高沢一基区議会議員は、悔しさをにじませる。
「孤立・孤独対策の担当大臣の設置、コロナ給付金、ヤングケアラーの問題も国民民主の提案からスタートしていますが、政策が実現するときには自公が『私たちがやりました』と演出してしまう。
現在、大きな課題となっている103万円の壁だけでなく、トリガー条項、再エネ賦課金の廃止をずっと私たちが言い続けてきました。
今回の自公との協議がどう決着しようとも、いつか実現すると思います。それぐらい政策には自信を持っています。立憲や維新は、与党に対して『是々非々』という言葉をよく使うと思いますが、それでは与党が提示してきたものを判断するという姿勢であり、受け身でしかありません。
私たちは『政策協議』と言い続けてきました。こうした積極的な姿勢は、私たち国民民主の『源流』にもある私たちのDNAのようなものです」
日本にある3つの主要な労働組合と各政党との関係
高沢氏のいう『源流』とは、国民民主の前身である希望の党でも、民進党でも、民主党でもなく、民社党のことである。ここで民社党から国民民主に至る系譜を説明しておこう。
日本の労働組合には、大きく3つの塊がある。共産党系、自治労や日教組など公務員の組合である総評、そして民間労組の集まりである同盟である。
このうち、共産党系や総評はかなりの左派・護憲勢力であるのに対して、同盟は中道右派に位置する。労働組合というとそのまま社会主義の集まりのようなイメージを持つ人も多いかもしれないが、ほとんどの民間労組のオフィスには日の丸が掲げられており、過去にはPKO協力法案や安保法制に賛成している。この3つの労働組合のうち、共産党系と同盟系の組合は、同じ会社の中で激しく対立してきた歴史がある。
革命を掲げ、会社の状況などお構いなしに本部からの指示を受けて団体交渉に臨む共産党系労働組合と、会社の発展なくして労働者の給料アップや待遇改善もありえないと考える同盟系労働組合では、話が合うはずもない。
現在も続く国民民主の共産党系アレルギーは、この系譜からも確認できるだろう。こうした組合の性格の違いを念頭に、「提案」型の政党であることを先の高沢区議は強調しているのである。当時を知る民社党系の旧都議会議員はこう述べる。
「ソ連からお金をもらっているのが社会党。米国からお金をもらっているのが自民党。私たち民社党こそが、日本人による日本人のための政党だと自負していた。小さくても国民生活のための一番の政策を自民に提示してきた」
「このように、同盟は共産党系とは絶対に組めないものの、民間と公務員で棲み分けがなされていたことから、労働者のための大きな塊をつくったのが「連合」である。
そして、この連合と鳩山由紀夫氏の大きな出資によりつくられたのが民主党だ。3年3ヶ月の民主党政権を経て、安倍晋三元首相に「悪夢の民主党政権」と繰り返しののしられ、党勢は悪化の一途をたどった。
「民主党を引き継いだ民進党には有権者の支持があまり集まらず、選挙にもなかなか勝てない状況が続いていた。その状況を打破すべく、岡田克也民進党代表は急速に共産党との距離を縮めていった。
後に代表となる前原誠司氏はそのことを非常に危惧していた。前原氏は就任後、民進党を解体し、小池百合子東京都知事と組んで希望の党を結成し、紆余曲折を経て国民民主党が誕生した。立憲と合流しようとしてできなかった理由はいくつかあるが、1つには共産党との距離感が影響したと思う」(先の国民民主関係)
民主党は日本維新の会の一部と合流する形で民進党を作った。党名を考える際、安保法制をあべ政権が進めていた時期であったため、「立憲民主党」という言葉を党名に使うのは護憲勢力や左派のイメージが強くなるとの反対があり、実現することはなかったという。
先に述べた国民民主の系譜に触れたので理解しやすいと思うが、選挙での敗北を重ねる中で、同盟系の支持母体は国民民主に、総評系の支持母体は立民に分かれた。しかし、単純に分かれたのではなく、圧倒的に支持率で勝る立民に、本来政策的にも思想信条としても国民民主に所属するべき議員たちが次々と立民に入党していくようになった。
あらゆる方面から「オモチャにされてきた」
孤立を深める国民民主党に対して、「友党」と言いながら選挙区に平然と刺客を送り込んでくる立民。国民民主幹事長である榛葉賀津也氏の選挙区に、立民は徳川家弘氏を擁立されたこともあった。
結果は榛葉氏の辛勝に終わったが、国民民主は自公の法案には賛成することが多い一方で、立民の誘いや共闘には一切乗らないという確固たる姿勢ができあがった。
また一緒にやろうと言いながら、支持母体もろともに飲み込みを図る自民党。企業団体の支援は受けないという一方で「民間労組は組める」という矛盾だらけの秋波を送ってくる維新。
「茂木敏充さんには怖くて聞けないようなことも玉木さんなら気軽に聞けちゃう」などと放送中に玉木代表を軽く扱っていることを公言するメディア。あらゆる方面からオモチャにされる政党。これが今回の衆院選前夜の国民民主、暗黒時代の実相である。
103万円の壁の見直しで、企業、労働者から大きな喝采を受けた国民民主。現状の支持率を維持できれば来夏の参院選では8議席以上の比例議席が獲得できる見込みだ。国民民主を支援する労働組合関係者はこう期待を込める。
「去っていった人々を恨むより、厳しい中で残ってくれた仲間を大事にしていきたい。国民民主は一般的な現役世代にとっては有益な政策をこれからも打ち出していくべきだ。私たち民間労組は経営者と対決するというよりは、対等な立場で生産性三原則のもと、会社の発展も考慮し活動を続けてきた。時代が大きく変化してきている中にあって、今や経団連を中心とした経営者は与党(自公)、労働組合は野党との考えではなく、国益と日本の成長と雇用拡大および就労環境の改善をともに考える段階に入っているのではないか。
国民民主党には103万円の壁とガソリン減税に続き、家計支援施策のもう一つの柱である再エネ賦課金の徴収停止および原子力発電所の再稼働で、家計を温めていくべきだ」
読んで少し頭の中の霧が晴れてきました。
こうした労働運動を中心にした政治運動に問題解決をまかすのは、もう嫌だなと。
そこに当てはまらない労働者や国民の生活がたくさんあるのに。そして今までのその労働運動とイデオロギー対決でむしろ失ったものはたくさんあると思うのですけれど、労働運動にも失敗を認め再発防止を考えるリスクマネージメントってあるのかな。
このところ政治が面白いと思うようになったのは、社会には膨大な知識や経験あるいは歴史の蓄積があり、失敗から再発防止を考えるリスクマネージメントが浸透したから正確で緻密な社会が回っていると思えるようになったからです。
次の時代には、信念やイデオロギーで対決し合う政党政治は不要になるといいですけれど。
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