まだまだ被災後の混乱が続く中、少しずつ能登半島の生活を取り戻すニュースが聞こえてきます。あの美しい能登半島を再訪しぐるりと一周してみたい、それが私の人生のやり残した宿題の大きな一つです。
あの被災直後から「なりわい」といった表現や「海業」とか、あるいはまだそんな時期じゃあないのに「創造的復興」とか「復興の隘路(あいろ)」と言った言葉で、まるで「観光資源」としてしか考えていないのではないかと思う対応策が続きました。
そこへ昨年の9月に大雨の甚大な被害が起こり、今度こそ「国は全力で生活を守ります」と言ってくれるかと思ったのに「注視する」とか「指示する」ばかり。
悲しすぎて、本当に日本の政府はどうしちゃったのだろうと思いました。
*「能登から新しい日本を」*
久しぶりに首相が能登に言及したニュースのタイトルが目に入りました。
「能登から新しい日本を」
今度は期待できそうと読んでみました。
「能登から新しい日本を」選挙戦2日目にして石破首相が能登入り・・・相次ぐ地震を踏まえ防災体制の強化を訴え
(2025年7月4日、石川テレビ)
3日公示された参議院選挙。選挙戦2日目の4日、石破首相が能登入りし、防災体制の強化を訴えました。
のと里山空港で開かれた演説会でマイクを握った石破首相。トカラ列島で相次ぐ自信や南海トラフ地震を踏まえ、防災体制の強化を訴えました。
石破首相:
「地形が悪いからねえ半島の先端部だもんね。なかなか地形厳しいよねあるいは財政力弱いよねだからこそ、この能登から新しい日本を作っていかなければならないのだ世界有数の災害大国ならば世界一の防災大国にしなければならんのです。」
県が要望している防災庁の分局について石破首相は日本海のどこかにおく考えを示し「能登教訓を活かすのは当然だ」と述べました。
(以下略、強調は引用者による)
えっ? これを能登の方々の前で言ったとは。
今でこそ一見インフラが頑強な都市とそれ以外の地域の差は大きいけれど、半世紀前なんてまだまだ都内だって崖っぷちに家を建てることもなかったし、水のあるハケの下の裕福な生活と武蔵野台地の上の困窮した生活の時代だったわけで、日本中「地形が悪く」狭い国土を十何世紀もかけて人が住めるようにそして飢えることがないようにと農地を整備してきたのではないですか。
私とたいして年齢が変わらないのに、そんなことも忘れてしまったのでしょうか。
能登には6000年前から人が住んでいるし、江戸時代には全国の正確な測量のために伊能忠敬も穴水を訪ねた記録もありますね。
能登半島の海岸線を地図で拡大すると入り組んだ小さな突起部分にも地名があるわけで、今回の地震のように海岸が隆起したり反対に沈んだりしても、長いこと人がそこに住み地形と共に生活を築いてきた証拠ではないですか。
そして今回の災害は、能登半島の付け根の氷見のあたりから石川県の内灘、そして新潟県まで広大な範囲で液状化の被害がありました。
穀倉地帯が広がる平地は、これもまた長い時間をかけて「潟」の干拓をして農地に変えた場所でした。
何を持って「地形が悪い」とか「半島の先端部」だというのでしょう。
「地形が悪い」のであれば島嶼国の日本で、災害時に長期間通信インフラやテレビの視聴が妨げられることがないようにしますと言ってくれたらよかったのに。
ほんとに、最近の政治家の皆さんは言葉が軽すぎますね。
*コメの値段が倍になったのは災害?*
さて、そのニュースの続きにこんな発言がありました。
演説に先立ち石破首相は能登の住民と座談会を開催。
この中で被災した農家から、今年作付けできなかった農家への支援とともにコメの価格について消費者だけでなく生産者への配慮を求める声などが上がりました。
石破首相:
「一年間でコメの値段が倍になって消費者がコメを買えないというのは、災害と何が違うんだとできるだけ農地を集約してコストを下げてお米の値段がもっと安くなるようにする。でもそれは生産者が努力してコストが下がったんだからその下がった分は国民みんなで負担しようよと」
(以下略、強調は引用者による)
コメの価格が倍になったのは投機的な動きによる人災だから備蓄米放出という口先介入をしているわけで、それを「防災」にかけてはぐらかすのはおかしいですね。
そしてやはり行き着くのは「農地の集約化」や「コストを下げる」という日本の農業をぶっ壊そうというこの流れ。
で、「国民みんなで負担しようよ」と政府の補償の責任については滑っとはぐらかす。
就任当初は朴訥な話し方で他の政党とも対話をしているように見えたので、今までの総理大臣よりはマシかと思っていましたが、正体が現れ始めたのか変節したのかつじつまの合わなさが目立ってきましたね。
日本語は七面倒とか言っちゃう首相ですからね。
やはり政治家を本業にしない方が、人としてまともに生きていける社会になるような気がするこの頃です。
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