散歩をする 104 房総半島を回る

房総半島を横断した後、まだ一度も行ったことがない外房を見たいと思い立ちました。

 

数日もしないうちに、また朝早く家を出て千葉に向かう電車に乗りました。

天気は快晴、年末の人の少ない時期なのか電車はがらがら。絶好のお散歩日和です。

千葉駅から外房線に乗りました。蘇我までは内房線で車窓の風景も馴染みがあるのですが、外房線もまた、駅名がおもしろいですね。

蘇我から始まって鎌取、誉田(ほんだ)、土気(とけ)と駅名だけでも歴史を感じさせるのですが、どんな郷土史があるのでしょうか。大網は内陸部なのですが、地図で見るとおそらく昔は海岸線がその辺りだったのではないかと、その駅名の由来を想像しました。

さらに東浪見(とらみ)なんて、字面からなんとなく意味がわかるものの、読み方が日本的ではないような、ちょっとエキゾチックですね。

読み方があまりに変化球すぎて、「安房」をなんと読むのかど忘れしてアボウだっけと混乱してしまいました。

不思議な安房(あわ)の国です。

 

*勝浦漁港と朝市*

 

最初の目的地は、勝浦でした。

昨年、油壺験潮場を訪れたとき、国土地理院のホームページで勝浦にも験潮場があることを知り、いつか見てみたいと思っていました。ただ、地図と航空写真で見ると油壺験潮場とは異なり、駅からも遠く人気も全くなさそうです。

験潮場は諦め、外房の海や海岸線のようす、そしてたくさんある漁港を観ることにしようと思いました。

 

あまり細かな日程はたてずに、1時間に1〜2本の電車を乗り継いで、その時の気分次第の散歩です。

 

千葉県は暖かいだろうと思っていたのですが、車窓から見える水田には前日の雨が氷になっていましたし、勝浦駅に降り立つと、冷たい海風が吹いていました。

行く前にあらかじめ房総の風速を調べておいたのですが、到着したのが9時過ぎでまだ少し風があった時間帯のようです。その後は風がなくなり、コートを着て歩くと少し汗ばむくらいの陽気でした。

 

駅を降りて坂道を下ると、勝浦湾が目の前に青く見え始めます。波もなく、水平線まで穏やかな海が目の前に広がっています。もう、この海を見ただけでも満足。

観光客も少ない時期でしたが、一角だけ車と人が並んでいる場所がありました。朝市が開かれていて、都内近郊からも車で買いに来ているようでした。

普段は、人混みはもう十分という生活ですが、市の雰囲気はまた別ですね。ちょっと立ち寄って、散歩の邪魔にならない程度に買い物をしました。

 

そこから、漁港へ。東南アジアで暮らした地域の漁港と違って、部外者立ち入り禁止の雰囲気なので、外から眺めて港の外れまで歩いてみました。中で働いている女性の姿もあって、漁港で働いてみたいなと羨ましく思いました。これからはあちこちの漁港も散歩してみたいなと、30年来の壮大な願望を思い出したのでした。

 

*鴨川から太海へ*

 

次の目的地は鴨川です。有名な観光地でもあるのですが、私にとっては亀田総合病院を思い出させる場所です。医療従事者ならそうかもしれませんね。

 

2000年代前半、まだ周産期医療ネットワーク ができる前で、当時勤務していた施設から切迫早産の妊婦さんを NICUがある施設へ送る必要があり電話の前で産科医が何時間も搬送先を探しても都内近郊での受け入れがなく、亀田総合病院なら受け入れてくださるという話がありました。搬送手段はヘリコプターでということでした。ご家族が鴨川までは遠すぎると悩んでいる間に、なんとか別の病院が見つかったのでした。

 

房総、特に外房の交通手段が限られた市町村の救急搬送を受け入れている病院として、それ以前から耳にしていたのでしたが、いつか実際にその地域を見てみたいと思っていました。

 

勝浦を出て、海が見えたり、トンネルをくぐったり、車窓の風景が何度も変化しながら、鴨川駅につくその手前に大きな病院がありました。

鴨川は想像以上に広い平担な土地でしたが、ここを拠点にあの入り組んだ複雑な地形の地域医療を担っていることが、車窓の風景からではありましたが少し理解できた気がしました。

 

鴨川の綺麗な海をしばらく眺めてから、心はまた井の頭五郎氏になって、刺身定食を堪能しました。

 

あ、鴨川には本当に川に鴨がたくさんいました。

 

さて、次の目的地は太海です。

地図で見つけて読み方がわからずに気になったのですが、「ふとうみ」で、なぜ「太い海」という地名になったのか、そして以前テレビでみた仁右衛門島があることに惹かれて降りてみました。

釣りをする人と仁右衛門島を訪れる人が少しいるくらいで、静かな漁村でしたが、圧巻だったのはその海の綺麗さでした。東南アジアを思い出させるような透明な海です。

漁村の細い路地を歩いて駅に戻ったのですが、どこからも静かで美しい海が見えていました。

 

日帰りだったので、ここからは外房線から内房線へと乗り継いで車窓の風景を楽しみました。

トンネルや山あいを抜けると小さな集落そして太平洋が見える風景が何度も繰り返されるのですが、すべての土地を歩いてみたいと思わせる風景でした。

房総半島を歩き尽くす、壮大な計画が出て来ました。

 

 

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