今年は本格的な海水浴シーズンの前から水難事故のニュースが多いような印象です。
この3年間からの開放感のようなものが、人を水辺に引き寄せるのでしょうか。
最近、夏になると耳にする「離岸流」という言葉はいつ頃から使われ始めたのだろうとふと気になりました。
40年ほど前、「自分は大丈夫」とどこにでも水があれば飛び込む勢いだった頃に島の周辺には激しい海流があること、ダイビングで数キロ沖合まで流されることもあるという現地の方の話に、海の怖さを知りました。いえ、本当は怖かったのに強がっていたのですけれどね。
当時は「沖合に流された」「溺れた」という表現ぐらいだったような記憶です。
*平成の中頃からだろうか*
第九管区海上保安部海洋情報部のホームページの「離岸流を知る」を読むと、2004年(平成16)に「離岸流セミナー」が開かれ2006年(平成18)からの調査資料が公開されていました。
このあたりから「離岸流」が世の中に定着し始めたのでしょうか。
離岸流とは何かについても専門的な話をわかりやすく書かれていました。
離岸流とは?
海岸に打ち寄せた波が沖に戻ろうとする時に発生する強い流れのことです。
最大で2m/sec(1秒間に約2m進む)となることもある
人の早歩きくらいの速さですが水中だと早く感じられる。
10~30m程度とあまり広くない
海岸と平行に少し移動すると逃れられる
離岸流は、一旦発生した後、1ヶ月近く同じ場所で発生し続けることもある一方、発生から2時間後には位置を変えることもある(気まぐれな性格)
砂浜の整地や入れ替えで流れや発生状況が変わることもある
すごいですね。いつの間にか観察と数値化によって、離岸流とは何かという研究が地道に行われてきていたようです。
*自分は大丈夫と思う人へどう伝えるか*
ところがその東南アジアで海流の怖さを教えてもらった時、実は海辺でバーベキューをしてビールも飲んで泳いでいたのでした。
「酒を飲んで水に入って水難事故にあったニュース」を聞くと自分の過去は忘れて困った人たちだと思いたくなりますが、とてもとても人のことは言えないですね。
この海上保安庁の説明だけで今の私には十分怖さも理解できるし、どういう対応をしたらよいかまで知りたいと思えますが、もし当時この説明を読んでもやはり他人事にしか感じなかっただろうと思いました。
「自分は大丈夫」と思い込んだ人に基本的なことを理解してもらうのは、感染症でも難しいですからね。
*秒速2mの離岸流とは*
先日、たまたまつけたテレビで松田丈志氏が離岸流について解説をしていて、検索すると「水難事故 こんな状況になったら?離岸流に巻き込まれたときの対処法と子どもが溺れてしまったときの対処法【Nスタ解説】」(2023年7月25日、TBS NEWS DIG)がありました。
この離岸流に関しては、松田さんもご経験されたことがあると。
松田丈志元競泳日本代表
私は、ウォーターセーフティと言って、自分の身を守るための資格をとっているんですけれども、速いときは、秒速2mにもなるといわれている。それがどれぐらい速いかというと、世界のトップ選手が全速力で泳ぐ100mのタイムくらいの速さなんですね。今の私が、秒速2mの離岸流に向かって泳ぐとしたら、多分30秒も持たないです。それぐらい速いスピードが生まれる離岸流なので、やはり海に入る前にどこに離岸流が発生しているのかというのを確認する必要がありますね。
あの松田丈志氏が全力で泳いでも50mを泳ぎきれないほどの流れの強さなのかと、印象に残りました。
ホラン千秋キャスター:
目視ではわからない?
松田丈志元競泳日本代表
目視でもわかります。浮遊物の流れであったり、色が違ったりします。海であれば、地元の人、ライフセーバーに聞けば、必ず離岸流の場所っていうのは把握していますので、まずはそれを知った上で、海に入ってほしいと思いますね。
おそらくこれほど噛み砕いてわかりやすい説明でも、大丈夫と思ってしまうのが人の世界かもしれませんね。
それでも、過去の失敗からこれだけ離岸流とは何かという事実が明らかにされてきた時代だったようです。
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