散歩をする 478 佐保川を上り、大仏池へ

充実のランチで元気が出たので、今回の散歩の最後の計画を実行することにしました。

 

2020年に法隆寺駅の南側の大和川の川合を訪ねたときに、その支流の佐保川を知りました。

地図で見ると東大寺の北側のあたりから平城京を南西へと対角線状に流れているので、おそらく歴史的にも意味がありそうですが頼みの綱のWikipediaにも詳細がありません。また東大寺の南側を流れる吉城川のように、佐保川の上流部は起伏の激しい場所を流れていることが想像できます。

ここを歩いてみたいとずっと思っていました。

上り坂が続くので、最後の力を振りしぼる散歩になりそうです。

 

 

佐保川沿いに多門町まで*

 

県道44号線沿いにJR奈良線の踏切を越えたところから南へと入り、佐保川を目指しました。住宅地が広がる中、結構大きな田んぼが残っています。

田んぼのそばにピンク色の花が見えたので近づくと、ツルボではなくイヌタデでした。日頃は見間違えるはずもない花までツルボに見えてきました。

 

しばらく歩くと佐保川の堤防らしき場所が見え、周囲は高い木々があってまるで森のようです。

堤防に上がると川幅は2~3mあるかぐらいでしょうか、案外とこぢんまりとした川ですが、ずっと遊歩道が続いています。

玉川上水沿いを思い出しながら歩くと、堤防の下に現役の水田があります。佐保川の水を利用している地域でしょうか。

 

なんと心地の良い川沿いだろうと思っていると、忽然と遊歩道がなくなり住宅地に入り川から離れました。

 

小さな5叉路がありその一部に小さな公園があったので近づいてみると、「大佛鉄道記念公園」とあり車輪のようなものが見えました。

大仏鉄道

 今から100年以上前、「大仏鉄道」が走っていました。

大仏鉄道とは、当時の鉄道会社「関西(かんせい)鉄道」の加茂と奈良を結ぶ、わずか9.9kmの路線の愛称です。

 明治31年4月の開業後、終着駅の「大仏駅」は、東大寺大仏殿の最寄り駅として、大いに賑わいました。

翌年5月、同社は大仏駅から奈良へ路線を延長。奈良駅への乗り入れを果たすと、観光の終点は大仏駅から奈良駅へと次第に移って行きました。

 そして明治40年8月、加茂駅から木津駅を経て奈良へと至る平坦なルートが開通すると、急坂の難所を抱える大仏鉄道は休止となり、同年11月に廃線。わずか9年の歴史に幕を下ろしました。

 大仏鉄道は、営業期間が短く、当時の資料も乏しいことから「幻の大仏鉄道」と呼ばれています。路線の跡には、隧道(ずいどう=川の水や人を通すためのトンネル)や橋台(橋の上部構造の両端を支える基礎)などの遺構が所々に残され、1世紀前の姿を今に伝えています。

 色鮮やかな深紅の蒸気機関車「電光(いなづま)号」などが駆け抜けたという幻の鉄道。当時を思いながら廃線跡をたどれば、周囲の景色も一層美しく見えるかもしれません。

 

ここから北へといくつかの隧道を越えて、現在のJR加茂駅まで線路があったようで、水田の中と東大寺の森のそばを走っていた鉄道の想像絵が描かれた案内板でした。

「小さな五叉路」はかつて駅前の賑やかな場所だったのでしょうか、まさに道に歴史ありですね。

そして明治から大正、昭和初期にかけての鉄道敷設のためのトンネル工事にかける時代の熱意の歴史について知らないことばかりでした。

 

住宅地の間の道がまた佐保川沿いになったあたりで、かつて水門だったような古い橋が残り、そばに小さなお社がありました。

このあたりからさらに上り坂です。やれやれと思って歩き始めると、なんと川の水辺に鹿の群れがいました。奈良ですね。

東大寺奈良公園のあたりだけかと思っていたので、歩いてみないと鹿の生活圏もわからないものですね。

 

橋の向こうに東大寺の屋根が見えました。

奈良女子大のあたりで佐保川の流れは北東へと曲がり、住宅の間を流れているのに渓谷の趣になってきました。

山が近づき、聖武天皇佐保山南陵につきました。砂利道を歩くと、砂利と思っている中にちょっと黒っぽい鹿の糞がそこかしこにありました。

 

*多門町から東大寺大仏池へ*

 

今回の最後の目的地の大仏池を目指します。

昨年春に鏡池を訪ねましたが、中学校の修学旅行で東大寺の大仏と正倉院を見学した時の大仏池と鏡池の記憶が全くありませんでした。

 

多門町から東へまっすぐ町家の続く通りを歩くと転害門(てがいもん)に突き当たり、東大寺の敷地へと入りました。

時間があるので正倉院も訪ねようと思っていましたが、ここからがさらにきつい上り坂でした。なんとか大仏池に着いて、柵のような丸太に腰掛けて一休みしたのでした。

心地よい風の中、池に白鷺がいて、秋に向けて少し色づいた木々が大きな池に映っています。東大寺の屋根がすぐそばです。

なんと美しい風景でしょう。

 

4日間、詰め込んだ散歩が終わりました。名残惜しいのですが、たくさんやり残した宿題ができたのできっとまたこの地を訪ねることでしょう。

あとは近鉄奈良駅に向けて下り坂ですからなんとか歩けそうです。

 

なつかしい水門町を歩き、近鉄奈良駅が近づいたところで、ちょっと欲が出ました。

やはりあのビルに囲まれた開化天皇陵を見てみたい。

三条通を西へ歩くと途中ビルの間が途切れていて、その向こうに開化天皇陵とその入り口が見えました。

これだけで十分満足し、今回の散歩が終わりました。

 

 

近鉄線京都行きに乗り、平城宮東院庭園そばの水田を眺めたあとはすっかり意識がなくなり眠ってしまいました。

 

2021年から楽しみにしていた探し物はまた見つからなかったけれど、次に歩く楽しみにとっておきましょう。

 

 

 

 

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