真夏から晩夏に咲くツルボの話が真冬にずれ込んでしまいましたが、いよいよ散歩の4日目はツルボを探しに平城宮へと向かいます。
4時50分白々と明るくなり、カーテンを開けると若草山の山影がみえました。日が昇ると、東大寺と興福寺の屋根が見えました。奈良は高い建物が制限されているのか、どこからでも東大寺の屋根などが見えそうなところがいいですね。いにしえの人たちも同じような気持ちだったのでしょうか、しばらく東の方向を眺め続けました。
*開化天皇陵の周濠*
7時35分にチェックアウトし、開化天皇陵をまず目指しました。
近鉄奈良駅から西に200mほど、メインストリートの国道369号線のすぐそばの繁華街のど真ん中に周濠をたたえた天皇陵があるのも奈良ですね。
2020年になぜ周濠があるのかを知って以来、一昨年11月には万葉まほろば線沿線、昨年3月には大和西大寺近くの周濠など、奈良に行く機会があると周濠とそばの田んぼを訪ねています。
地図ではどこに入り口があるのかわからなかったのですが、漢國(かんごう)神社の参道の向こうに古墳の森が見えたので一か八か入ってみました。ところが入り口ではなさそうです。周囲の建物の外を一回りしましたが、結局たどりつけませんでした。近くを通る南北に向かう道は「やすらぎの道」とありますが、住所が「油阪」そして「念仏山寺」というくらいなので実際には急な坂道を上り下りしました。
出だしからのアップダウンの散歩に、今日一日体力が持つだろうかと平城宮跡に向かうバスに乗りました。
*今回は東院庭園を歩く*
2022年8月に訪ねたのは、平城宮跡の北側の第一次大極殿(だいごくでん)から南の朱雀門のあたりでした。
一本もツルボを見つけられず傷心のまま帰宅しましたが、今回の3日目に平城宮跡の敷地内を通過した時に、咲いていそうな可能性のある場所が車窓の向こうに見えました。
8時18分二条大路一丁目バス停で下車したあと、大きく曲がる国道24号線の高架の下道を歩くと小さな水路が見えて平城宮跡内に入りました。
その先に踏切があって、近鉄奈良線が敷地を通過していきました。この風景も奈良らしくて好きなのですが、なくならないといいなと勝手に思っています。
踏切を越えると、前日に目星をつけていた水田地帯がありました。平城宮跡と東院庭園に接して田んぼが残っています。
朱雀門の近くは葦など背が高い草が生い茂っていましたが、ここはあぜ道ですからきっとツルボが咲いているに違いありません。
稲の香りが漂い、時々近鉄奈良線の電車の音が聞こえ、すぐそばは平城宮跡という田んぼを独り占めです。
東を見ると若草山が見え、東大寺の屋根がここからも見えました。
なんと幸せな静かな朝の散歩でしょう。たまに、通勤らしい人が自転車で通っていきました。
こんな通勤風景も羨ましいですね。
あぜ道と草むらを目を凝らしながら歩きました。
この遠出の直前には明治神宮の群生も見たし、丸亀のため池や倉敷の高梁川東西用水樋門でも、そして武庫川右岸でもツルボを見ることができた充実の散歩ですから期待が高まります。
田んぼのそばでは見つかりませんでした。
でもまだまだ広大な第二次大極殿の敷地がありますからね。北へと北へとまた目を皿のようにして歩きました。
もう少しで平城宮跡の敷地が終わりというところに、ベンチがありました。
疲労と絶望感で座り込み広大な草地を眺めると、ここからも東大寺の屋根が見えます。そして振り向くと後ろには第一次大極殿の建物が見えました。
萩や名前のわからない黄色の愛らしい初秋の花、広大な敷地は静かで鳥と虫の声そして風に草が揺れる音だけが聞こえています。
探し物はやはり見つけにくいものでしたが、奈良のこの静かで落ち着いた空気の中で時を過ごすことができました。
いつかまた平城宮跡に咲くツルボに出会えるのを楽しみにしておきましょう。
それにしてもツルボは不思議な花ですね。
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