水のあれこれ 340 豊橋海岸堤防耐震化工事

潮風と日差しにさらされて薄くなっていた豊橋海岸の案内図ですが、検索したら私が訪ねた昨年10月のわずか2週間後にその完工式が行われていたという記事を見つけました。

 

豊橋海岸の堤防耐震化完了

 

 東海・東南海地震に備え、県が進めていた三河湾沿岸の豊橋海岸吉前・神野新田地区海岸堤防耐震化が完了し、28日、完工式が豊橋市神野新田町メノ割の二十間川排水機場で開かれた。10年余りかけて延長5228メートルの堤防が耐震増強された。

 堤防が老朽化していた上、耐震点検では地盤の液状化により最大5メートル以上の堤防の沈下、崩壊が生じるため、地元住民の要望もあり、県が2006年(平成18)年度から国土交通省の補助を受けて耐震化工事を進めていた。総事業費は約85億円。

 工事は「二重締切矢板工法」。堤防両端に鋼矢板(こうやいた)を二重に地中深く打ち込むなどして堤防の沈下を軽減し、津波や高潮に耐えられるようにした。堤防背後地に広がる住宅、病院などを守る。

 式には、住民や県、市の関係者ら約50人が出席。地元住民らでつくる三河湾豊橋海岸整備促進期成同盟会の加藤勝久会長は「本当に良かった。南海トラフ地震が心配される中、完成したことは、住民や企業、団体などにとって安心して暮らせることにつながる」と待望の耐震化完了を喜んだ。

 根本幸典衆院議員や石原君雄副知事、佐原光一市長らも「住民の安全安心の確保につながる」などとあいさつした。式後、参加者は堤防を見学した。

 豊橋海岸の堤防は、水田の干拓でできた。1953年(昭和28)年9月の台風13号では、高潮と波浪により破堤し、海水が背後地へ流入、甚大な被害が出た。

(2023年10月29日、東愛知新聞)

 

 

「メノ割」とあるのでちょうど私が歩いたあたりですね。

 

 

事業が始まる前の愛知県の「海岸の整備(事業紹介)」(2017年1月4日)に、以下のような説明がありました。

2. 老朽化対策(老朽化した海岸堤防・水閘門の対策)

 愛知県の三河湾・伊勢湾沿岸においては、昭和28年の台風13号、昭和34年の伊勢湾台風の2度に渡る大きな被害を受けました。その復興として昭和38年頃にはほとんどの沿岸に海岸堤防、水門等が築造されています。

 しかしながら、復興で一度に整備していることから、築後50年近く経過した施設が多く、老朽化・地盤沈下等による機能低下や背後地の開発による機能不足も著しくなっていますので、海岸堤防、水門等が高潮・津波に対して十分な機能を発揮させることが課題となっています。

 

Wikipediaの「昭和28年台風第13号」を読むと、この年は超大型台風が相次いだようです。

愛知県の「被害」について書かれていました。

愛知県には25日夕刻に45mの暴風を伴って襲い、折からの満潮と重なり平均潮位より2.80m高い異常高潮となった。

そのため愛知県下の海岸堤防は156kmにわたって被災し、沿海部の民地23,350町歩はたちまち冠水して海となった。

愛知県では直ちに、174ヶ所13kmに及ぶ応急締切工事に着手し、最終的には総延長172km、総事業費199億円の膨大なものとなった。

その説明に「決壊する四号堤防(愛知県豊橋市神野新田干拓地)」の写真があります。

あ、もしかして私が下車した「五号バス停」というのは、「五号堤防」の意味だったのでしょうか。

 

それにしても「沿海部の民地23,350町歩派たちまち冠水して海になった」というのが、干拓地で生きるということだったのですね。

そしてさらに5年後に史上最大の風水害の伊勢湾台風がこの沿岸部に襲ったようです。

台風13号の被害から立ち直り始めた時の伊勢湾台風、この時代の方々のお気持ちはいかばかりでしょうか。

 

1960年台に入ると水害は激減しましたから、「なぜそんな堤防をつくる必要があるのか」「なぜ美しい海岸をコンクリートで埋めるのか」という世の中の雰囲気になったのかもしれません。

その中で過去の災害を忘れずに将来の災害に備えるための期成同盟(同じ目標の実現に向かって結束して活動する)の方々がいらっしゃったようです。

 

「失敗」「事故」「災害」というのは理不尽ですし、社会は喉元過ぎればすぐに忘れやすいので、こうした防災や感染症拡大への対策でも「対策の不備」を問うかと思えば「それはやり過ぎ」という反動にもなりやすいものですね。

 

歴史を知らないのに公共事業というだけで批判で目を曇らせてしまっていたことに、また大いに反省です。

 

海風の強い中でも粛々と工事が行われ、日夜寝ずの番で観察してデーターを積んで警告をしてくださる方々のおかげで私は安全に生きて来れたのだと思いました。

 

 

 

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