散歩をする 488 目久尻川から高座渋谷へ

目久尻川にかかる橋のたもとでぼーっと新幹線の通過を待つあやしい人になってしばらく立っていましたが、待っている時には通過しないものです。

10月下旬で日が暮れるのも早いので先を急ぎました。

 

目久尻川左岸は急な上り坂で、上り切った台地の上には苗木を育てる農園や畑が広がっています。たしか車窓から相模川左岸側の土は黒っぽいと印象に残ったのはこのあたりだったような気がするのですが、そこまでは黒っぽくもありません。

県道45号線沿いにまっすぐ北へ新幹線の線路の方へと歩くと「用田(ようだ)」という場所があります。地図からは田んぼが広がる場所をイメージしていたのですが、目久尻川左岸の高台のような場所でした。

 

やはり一瞬ですぎる車窓の風景を見落とさないようにするのは至難のわざですね。

 

お腹が空いてきたので、用田のお蕎麦家さんで遅いお昼ご飯を食べました。「ランチする」のが夢ですからね。

美味しいお蕎麦と店員さんたちの声が優しく穏やかなのが印象に残るお店で、元気になって歩き始めました。

 

 

*近づき難そうに見えた畑地を歩く*

 

相模川の手前までは、起伏に富んだ田園地帯と何ヶ所も切り通しの中を新幹線が通過します。

住宅も少なさそうなのでちょっと近づき難い場所に見えましたが、どんな歴史や生活がある地域なのか知りたくなりました。

 

用田の交差点からは県道45号線が急な下り坂になり、その先をまた新幹線が通過していきました。

高架橋の手前を右に入ると、住宅に沿って小さな川がありました。北東から流れてくる目久尻川の支流のようです。のぞきこむときれいな水の中に水草が青々と揺れていました。

 

高架橋をくぐるとそこは竹藪や森に囲まれた小さな谷戸の地域で、田んぼや畑、果樹園がありました。先ほどの小さな川はこのあたりが水源でしょうか。

西側の森の向こうの高台にあるのは浄水場のようです。

切り通しから出てきた高架橋を、何本も新幹線が通過していきます。今度E席に座ったら、見逃さないようにしたいものです。

 

東へと続く道は谷戸の上へと続く道で、けっこうな上り坂です。途中に薬王寺があり、さらに上っていきます。新幹線の走行音が聞こえました。

上り切ると切り通しの上の高台に最終処分場のような場所があり、その先はやはりそれほど黒っぽくない茶色い畑地が広がっていました。

 

畑のそばに大きな案内板がありました。息を切らしながら上った坂道でしたがあれでも「女坂」だったようです。

御所見花桃の咲く町女坂 女坂花桃の道 女坂に花桃を育てる会

春には桃源郷のような谷戸の風景になるのかもしれませんね。

 

その案内板の下に「ドクターイエロー運行予定表」があり、令和4年2月の運行日時が書かれていました。

奇跡的な偶然だから「見ると幸せになる」のであらかじめ知るのはどうかとも思うのですが、ここから先は広い畑の中をまっすぐな高架橋が通っているので確かに写真を撮るのには良さそうですね。

 

畑にはほわほわと緑色の葉っぱが見えるので、にんじんが植っているようです。その先に新幹線の車窓からあちこちで見かける「727」の看板が立っていました。

何本も通過していきます。新幹線を見ながら仕事をするなんてうらやましいけれど、地元の方々にはもう空気のような存在でしょうか。

 

高架橋をくぐって南側へと出ると、住宅が途切れるあたりに「葛原配水池」がありました。

葛原配水池

〔災害用指定配水池〕

この配水池は、綾瀬浄水場から送られてきた水を貯えて、藤沢市の皆様に供給するために築造されたものです。

また、この配水池は、地震など災害が発生した場合に応急給水に必要な飲料水を確保する配水池に指定されております。

日本初の水道道(みち)から一世紀半、今は災害時にも潤沢な水を確保する時代になりました。

 

このあたりから畑と空き地が広がる場所になりました。しばらく民家もありません。この辺が「近づき難そう」と思った地域かもしれませんが、実際に歩くとそばを何本も新幹線が通り過ぎるので孤独でもない散歩でした。

新幹線の線路も高架橋ではなく盛り土ですから同じ高さです。こちら側からも、車窓のペットボトルや乗客まで見えます。

次はいつ私が乗客側になるかなと思いながら雑木林の中を抜けると、その先はまた住宅地になりました。

 

住宅地が終わるあたりから急な下り坂になり、川と小さな田んぼが見えました。

橋を渡る時に、すぐそばを新幹線が通過していきました。

川の左岸側はまた小高くなって、地図には「キツツキの森」とあるのですが「稲箸社」という神社を囲むように森が残っていました。

「稲箸社」というのも初めて目にする神社名ですが、どんな由来や歴史や願いがあったのでしょう。

 

その小高い場所を迂回するように歩くとまた川が流れていて、先ほどの小さな川がぐいと流れを変えながら合流していました。だから「落合」という地名なのでしょうか。

 

北側から流れてくるこの蓼川(たてかわ)の両岸は渓谷のような場所に見えました。

遊歩道と公園が整備されていて、散策をしている人とけっこうすれ違いました。

 

直線距離だとあと1kmほどで高座渋谷駅ですが、日が暮れそうなのできょうはここまでにすることにして、中橋川バス停まで上り坂を歩きました。

バス停の目の前が新幹線の高架橋で先ほどのキツツキの森の下のトンネルへと入る場所で、バスを待つ間にも何本か新幹線を眺めることができました。A席に座ったら是非見逃さないようにしたいものです。

 

16時2分長後行きのバスに乗って高座渋谷駅に向かい、帰路につきました。

倉見駅からの散歩は、新幹線ならおそらく1分もかからないで通過するところを3時間半ほどの散歩になりましたが、車窓の風景に広がる生活を少し知ることができました。

 

 

 

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