シュールな光景 34 政治家は「骨」がお好き

ニュース記事に忽然と「背骨勉強会」なんて言葉が表れたので、びっくりしました。

 

自民党の人材養成組織「中央政治大学院」が中堅や若手議員などに向けた勉強会を4日から開始する。党派閥の政治資金パーティ収入不記載事件を受けて6派閥のうち4派閥が解散を決めたことを受け、派閥が担ってきた役割の一つである議員の教育機能を代替する狙いだ。

政治と金の問題があったときに、政治家としてどうあるべきか、根本の話をしたいと考えていた。派閥がなくなり、勉強する場所がなくなった。(それに)加わってくれれば、良いと思っている」

同大学院の学院長を務める遠藤利明前総務会長は2月20日、官邸で岸田文雄首相に勉強会について報告した後、記者団にこう語った。報告を受けた首相は「面白そうだね」と応じたという。

「背骨勉強会」と題し、思想史や地政学などについて学ぶ。対象は当所属の衆院当選4回、参院当選2回以下の国会議員のほか、元職や新人の選挙区支部長も含める。(以下略)

 

「自民『中央政治大学院』が4日から勉強会』、派閥の人材育成機能の代替狙う」(産経新聞、2024年3月3日)(強調は引用者による)

 

「政治と金の問題があったときに、政治家としてどうあるべきか」

ああ、やはり今の時代の雰囲気がわかっていないようですね。

「政治と金の問題を起こさないように政治家はどうするか」を求めているのに。

世襲の禁止や選挙区の制限とか、任期の制限や定年制とか、政治家のお金にもきちんと納税の義務を明記するとか、政治家の失敗に対するリスクマネージメントとか、「人事」という権力の集中の再発防止とかなのに。

 

 

*中央政治大学院?*

 

ところで、そんな大学院があるのかとググったら自民党の私塾だそうで、「面白そうだね」と人ごとのように反応した首相が総長のようです。

学院長と副学院長のWikipediaを読みました。

政治資金問題や統一教会の問題で禊を済ませていた人たちや、思想に偏りを感じる人も多いですね。

 

一番驚いたのは医師でありかつて厚労省保険医療課勤務の経験があるのに「なかなかみんなマスクを外さない。それを乗り越えていくためにも、今日皆さんのディスカッションで世論をどんどん広げていくことが大事だ」と、反ワクチン・反マスク・陰謀論団体でのイベントで挨拶をした人が、副学院長ということでした。

2023年2月といえば、「息を吹き返させる何かがある」と政治の変化に感じた頃でした。

なんだかなあ。

 

ああ、だからこの「大学院」には「思想史」が大事なのか。

 

 

 

*「骨」とは「投資」のことらしい*

 

骨太の方針」が気になり出したのは、2007年になぜか「経済財政諮問会議」で「助産師による正常分娩時の会陰切開、縫合」を「解禁」させようという動きがあったからでした。

 

「聖域なき構造改革の着実な実施のために経済諮問会議にて決議させた、政策の基本方針」がなぜ「骨太の方針」という変な名前なのだろう。なぜ助産師に会陰切開縫合を解禁させることが「聖域なき構造改革」なのだろう、何よりも医療のことなのになぜ勝手に経済諮問会議が決めてしまうのだろうと腑に落ちないことばかりでした。

そして2013年には現場での産後の対応もまだ暗中模索なのに、「骨太の方針」で産後ケアセンターが始まりました。

 

2022年には骨太の方針で「保険証の選択制」が決められたそばから保険証の廃止になったのはなぜだろう。

 

と、この政府の「骨太」とは何か気になって十数年、昨年、閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」に「官の投資を呼び水に過去最高水準の国内投資115超円の早期実現」「投資の拡大と経済社会改革の実行」とありました。

 

ああ、なるほど。

政府の「骨」は投資のことだったのかと遅まきながら気づきました。

 

最近よく耳にするようになった「地政学」の定義はなんだろうとググったら、こんな説明が目に入ってきました。

地理学と政治学を合成したものを地政学といい、そのリスク要因のこと。地理的な位置関係による、政治的や軍事的、社会的な緊張の高まりが、その地域や世界経済に与える悪影響のことを指し、近年では投資判断に大きな影響を与える要因となっています。

地政学的リスク。三井住友DS)

 

ああ、だから地政学なのか。

「リスク」と表現しても、より高度で正確性が求められるようになった社会でのリスクマネージメントと政治や経済とは違うものを指しているのかもしれませんね。

 

だから平気で国民に投資を勧め投資で財産を増やすことが政策になった結果は、労働の対価には見合わない持つものと持たざる者の差が開き、能力を持っていてもその階層を越えることが容易ではなくなった社会でした。

 

成功は社会のおかげ、成功者は必ず社会に還元すべきと明治時代の先覚者たちが築いた遺産、現代の政治家はその骨をしゃぶりながら自分の資産を増やしているのだと漠然ながら見えてきました。

まあ、本当に「成功する」とは何かもわかりませんけれど。

 

そうそうこの「背骨勉強会」、国民の声とはほどとおい政策を繰り返しそうな予感がしました。

「骨」には注意ですね。

 

 

 

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