母乳のあれこれ 29 <母乳とミルクの成長曲線>

母乳はミルクにない利点があるのはわかっているのですが、あまり表立って表現されないのが「母乳よりもミルクの方が(身長が)大きく育つのではないか」というもやもやした疑問ではないかと思いますが、いかがでしょうか?


このもやもや感は大きく分けて二つのことがあるかもしれません。

乳児時代の体格がその後どのように影響するか、その多様なパターンの全体像について明確な答えがない

身長・体重が小さめに生まれた赤ちゃんが1ヶ月健診では横並びになることもありますし、3〜4ヶ月健診や乳児の時期には横綱級に「大きい赤ちゃん」と言われ続けていたのに成長したらただの人になったりと、体格の変化は個体差というものがありますし、成長過程での栄養状況や運動などいろいろな影響があって単純な答えというのはないのでしょう。


それでも乳児期にある程度大きい方が、親も医療者側も不安材料が少ないのかもしれません。
そんなもうひとつのもやもや感が以下のようなことです。

母乳とミルクで育った場合に、体重差や肥満に与える影響については書かれていても身長に差が出るのかどうかについて明確が答えがない

ミルクによる肥満については不安にさせる研究や説明はよく耳にしますが、ミルクを足すことで身長への影響は何かあるのでしょうか。
幼児期以降は「牛乳を飲めば背が伸びる」とさかんに言われるのに、乳児期のミルクについてはどうなのでしょうか。
でも実際にはそれを否定する話も肯定する話も、周産期関係や小児科関係の本で目にしたことがないのです。


そのあたり、0歳時の成長パターンと成人したときの体格の関連性がもう少し整理されて「母乳だけで多少体重が小さめに育っても将来の体格が決まってしまうわけではない」というのであれば、なんとしても体重を増やさなければと追い詰められることもなくなるかもしれません。


<日本人の平均身長・体重の推移>


今ちょうどバレーボールのグラチャンが開催されていますが、全日本女子の平均身長が175cmぐらいのようです。大きい選手になると180cm台ですから、街中を歩いていたら見上げるような身長ですね。


1980年代頃、170cmぐらいあるとかなり背が高いと感じました。
私は同年代で身長順に並べば後ろ3分の1ぐらいだと思いますが、1990年代ぐらいになると周囲に急に背が高い女性が増えたように感じました。170cm台の女性も珍しくなくなりました。


この日本人の身長が急激に伸びたことを示すグラフが「日本人の平均身長・体重の推移」にあります。

男の平均身長は、1950年の160.3cmから2007年の171.5cmへと10cm以上、7.0%の伸びである。平均身長がこの間一貫して伸びている姿が印象的である。一方、女性の平均身長も、同時期に148.9cmから158.3cmへとやはりほぼ10cm、6.3%の伸びであり、男と同様、一貫して伸びている。もっともこの数年、横ばい傾向に転じた可能性も見受けられる。

1950年代、特に1960年代から1990年代半ばまでは、施設分娩へ移行し、ミルクを足しながらの規則授乳が積極的に取り入れられた時代に重なります。


もちろん、戦後の混乱期から高度経済成長の物質的に豊かな生活になって、全般的に栄養状態が良くなったということが背景にあると思いますが、この時期に混合栄養が推奨されたことと、日本人の平均身長が伸びたことと何か因果関係があるかないのか、何か研究があるのでしょうか?


何か資料をご存知の方がいらっしゃったら、是非教えてください。


今日はもやもや感を整理するために、とりとめもない話でした。




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