夜勤の労働環境についてのあれこれ 2 <電話が怖い>

1960年代、私がまだ幼児だった頃は、電話といえば電電公社(NTT)の固定式黒電話しかありませんでした。しかも電話は「近所に借りにいくもの」であり、自宅の電話を持つようになったのは1970年代に入ってからでした。


幼稚園の頃は、あれはなんという電話機ですか、横についたハンドルをグルグルまわしてかけるタイプのを見た記憶もあります。


1970年代に各家庭に電話が入り出した頃、親からしつけられた「電話のマナー」の一つに「夜8時以降はかけない。相手が驚くから」ということがありました。
電話というのは、たとえば家族の危篤を伝えるなど火急の事態の連絡用のツールだったのでしょうか。


1970年代終わりに看護学生になった頃は、固定電話も公衆電話もあたりまえのようにあちこちにあり、家族や友だちとのおしゃべりのツールになっていました。
それでも、「夜は電話をかけない」というルールは私の中にありました。


今も夜に電話が鳴ると心臓がビクッとするし、その後眠れなくなってしまうことがあるので、自宅の電話は呼び出し音は常に最小で、留守電にしておくことがほとんどです。


でも世の中には電話をかけたり、かかってくることが好きな人もいらっしゃるのでしょうね。


<夜中でも内線、外線がかかってくる>


夜間になると病院内の他の部署からかかってくる内線電話は少なくなりますが、夜勤中の内線電話はドキッとさせられます。
総合病院だと、だいたいは夜勤の管理師長からの「救急外来からの入院受け入れ」要請かもしれません。


残っている業務やケアの優先順位をすぐに立て直し、受け入れ準備のために緊張が走ります。


産科病棟になると、他の病棟に比べて夜間の外線電話が多いのが特徴かもしれません。
妊娠中の方からの異常症状の問い合わせ、お産が始まったという電話、あるいは退院後のお母さんからの相談などが入ります。


たいがいは慌てずに対処できる内容なのですが、時に、電話の向こうの声などから「急いで来院して」「救急車でもいいから」というぐらいの超緊急の事態があるので、外線の呼び出し音は本当にドキドキします。


あ、あと今働いているのは産科クリニックですから女性が対象です。
でも外線をとったとたん、男性の声だとすごく緊張します。
いたずら電話かどうか、見極める作業がプラスされるからです。
もちろん本人が七転八倒で会話もできない状況なら夫がかけるしかないのですが、ご自分で話せる人は最初から本人がかけてくださったら助かります。



<夜中に人を起こさなければならない>


夜間や休日でも、患者さんの状態が変わると医師に報告して指示をもらう必要があります。


1980年代初めの頃は、医師でも携帯電話を持っている人は限られていました。私が当時勤務していた病院では外科系の医師は携帯電話を持っていたのですが、「都内からは箱根までしか通じないからね」と言われるほどかかりにくいものでした。


今思えば、担当医がつかまらなくてもしかたがないと誰もが思えるぐらい、のんびりできた時代でした。
実際に、担当医や当直医に夜中に電話をかけて指示をもらうことも少なかったように思います。
記憶なので不確かなのですが。


今は産科という特殊性もありますが、分娩経過で異常の報告や、妊婦健診で通院中の方の電話対応など、どうしても夜中に医師に電話をかける必要が多くなりました。


「今、一番深く眠っている時間だろうな」「今電話して起こしたら、朝からの診察も大変だろうな」「そのくらい看護職で判断してと思われるかな。でも医師に報告をしておかないと後で問題になる可能性もあるし」など悩みつつ、電話をかけなければいけません。
この電話の呼び出し音でびっくりした医師の心臓が止まってしまうのではないかと不安になったりするのも、夜中の特殊な精神状態なのかもしれません。


あるいは、夜中の緊急帝王切開が決まれば、応援のスタッフに電話をかけて呼び出します。


夜勤中の電話というのはかかってくるのもかけるのも怖い、ストレスフルなものです。


私が夜勤で苦手といえば、この電話ですね。
退職したら、自宅から電話も撤去しようと思っています。携帯電話も常に居留守を使って。
メールがあれば連絡はとれますからね。



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