境界線のあれこれ  84 <益虫と害虫>

3週間ほど前に、ベランダの窓枠に小さなものがくっついていることに気づきました。
窓枠のタイルの目地の部分から細い針金のようなものが1cmほど飛び出して、その先に茶色の物体がボツんと付いていました。


こんなところに針金が飛び出していたことはなかったはずなにのにと、訝しく思いながら毎日ながめていると、だんだんとミノムシっぽい形になっています。
都会のみのむしはタイルの目地を利用するのかと驚きながらも、まあ害はなさそうなのでそのままにしておこうと思いました。


茶色の物体は日に日に大きくなって、直径3cmぐらいになりました。
ある日、その先端が蓮の花托のような形になっているのをみて初めて蜂の巣であることに気づきました。


検索すると、蓮の花托のような部分がだんだんとシャワーヘッドのような形に外へ向いて大きくなって行くのはアシナガバチのようです。


あっという間に、その花托のような巣にはアシナガバチが3〜4匹ぐらい出入りして、中に蜂の子もいくつか見えています。
スズメバチに比べると攻撃性は低いようですが、ベランダに出入りする時に思わぬことでハチを刺激してしまう可能性があります。
アナフィラキシーショックにおちいっていく我が姿を想像したら、やはり駆除するしかないのかと判断しました。



駆除の方法をいくつか読み比べて見ると、「素人はしないほうがよい」と書いてあるものもあれば、「直径10センチぐらいになる前に」「女王蜂が1匹だけの頃がよい」「蜂が10匹未満ぐらいなら業者に頼まなくても駆除できる」と具体的な話もありました。


まだ蜂も4匹ほどだったし巣の大きさも数センチだったので、自分ですることに決定。
日没後、部屋の電気を消し、巣をめがけて殺虫剤を噴霧しましたが、あっという間に息絶えて地面に落ちました。
ただ、死んだと思って近づいたり触ったりすると、刺される可能性があるらしいので、翌朝、明るくなってから蜂を拾い巣を撤去しました。


細い針金のような部分も蜂の巣の一部で、どうしてこんな目地の部分にしっかりと密着しているのだろうと驚くような素材でした。
Wikipediaの説明には、「樹皮の靭皮繊維を素材とし、それに唾液由来のタンパク質などを混入して素材とするので、一般のスズメバチの巣より強靭である」とありますが、小さな茶色の物体からわずか1週間ほどで着々のシャワーヘッドみたいで花托のような巣が出来上がっていくことはすごいですね。
そのまま巣が出来上がっていく様子を観察してみたいと思ったのですが、やはり刺されることも怖いですね。


家の中に住み着いている蜘蛛もできるだけ殺さないようにしているのですが、いかんせん、狭いベランダで巣の近くまで洗濯物を干したりするので、共存できそうにない距離でした。
駆除の方法として、冬になる前には巣を捨ててしまうそうなので、その時なら蜂もいないので安全に、しかもアシナガバチを殺さずに撤去できるということも書かれていました。
次に巣を作る時にはもう少し庭の広い家を選んでねと、蜂の亡骸に謝ったのでした。


アシナガバチはおとなしい性格で、巣にいたずらをしなければ、ほとんど刺してくることはない。むしろ蛾や蝶の幼虫を駆除してくれる益虫である」
それぞれの虫の生活史と生物のひろい世界について私にもっと知識があれば、無駄に「駆除」しなくても済むのですが、ほんと、ごめんなさい。


益虫か害虫かの線引きは、難しいですね。



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