行間を読む 217 「蓮ハ平和の象徴也」  (蓮についてのまとめ)

より蛇行した畦道を選んで歩き山陽新幹線の高架橋の近くの集落に入りました。

大賀博士顕彰碑の場所が描かれた地図がありましたが、これまた目の前の複雑な道のどれを歩いたらよいかわからないほどシンプルなものでした。まあ、地図というのは「環境と自分たちとの関係を概念化する手段」であり、「いかなる地図もつねに主観的である」ですからね。

 

一本道を間違えれば大賀博士顕彰碑とは出会えないのですが、迷ったらまたより蛇行する道を選びましょう。

田んぼのすみに何か新しい石碑が見えました。

 

近づいてみると「蓮ハ平和の象徴也」と彫られていました。

当日撮った写真を見直すと「象徴也」の部分が崩し文字のように彫られていて、本当にその読み方で大丈夫か確認するために検索したところ、岡山朝日高校同窓会公式webサイトの「先輩たちの足跡を訪ねて」にその由来がありました。

 博士の教育・研究活動には、常に平和を意識した行動が伴い、生まれ故郷の庭瀬城の堀に浮かぶ「大賀ハス」の横には、「蓮は平和の象徴なり」という博士の言葉を紹介した説明看板が建ちます。

 また、ご自身が書かれた文章にも、「昭和13年6月4日に起こった張作霖の爆死や、昭和16年9月18日に起こった柳篠溝事件を親しく目撃した私はこれを快く思わなかったので翌7年3月末職を辞して東京に帰った」(『烏城』106号(25)(原文は縦書き漢数字)の一節があります。

(同サイトより)

 

 

*「生きる希望や夢こそは、正に当時の世間に最も欠けていたところのものである」*

 

大賀ハスの発見」に、大賀博士の調査の協力者となった方の回顧が掲載されて、当時の雰囲気が書かれていました。

 

昭和25年、68歳の老博士は千葉市にある東京大学の検見川厚生農場の管理人高野忠興を訪ねて、「ここを掘れば蓮の実がでる」と、発掘を依頼する。一面識もない老人の唐突な願いに高野は驚いたが、「しかしながらどうも博士の言動には、何かみすて難いものがあることを感じた。この老貧学究が生きるのにも苦しいこのご時世に、何を好んで、子供の遊びのようなことをしているのか、なぜ、そんなばかげたことにむきになっているのか。話をきいているうちに分かってきた。何千年と眠ってきた蓮の生命をよみがえらすことに明るい望みを託し、夢を抱いておられるということがだんだんと分かって来た。そういえば、生きる希望や夢こそは、正に当時の世間に最も欠けていたところのものである。」(『学士会会報』1965-Ⅲ No.688)と感じて、発掘の協力者となった。

(強調は引用者による)

 

あの「市民の心はなかなか混迷を抜け出せなかった」とバラ園を始めた福山市の歴史が重なりました。

戦争の禍根は何世代にも続くし、戦争が終わっても生きる希望や夢が欠けた時代が続くのですね。

 

戦争だけでなく、政治や経済のあり方が間違ったことに対して「黒を白に、白を黒に」とする現代のような時代もまた、社会に生きる希望や夢が欠けた空気にさせるのだと重なりました。

 

数年前にふと蓮を見たいと思いついて出かけ、古代バスと大賀博士を知ることになったのですが、大賀博士のこんな思いが綿々と受け継がれていたとは。思えば遠くに来たものです。

 

 

*蓮の記事のまとめ*

いつの間にかあちこちの蓮や蓮の名がついた場所を歩いた記録や蓮について考えたことがたまって来ました。

<2015年>

ロータス・バース

上野動物園にパンダと蓮を見に行った

<2017年>

蓮の茎がカワウの巣に

水元公園の蓮

呪術的なものから解放される

神代植物公園の蓮とスイレン

水草

分類する

薬と毒とファンタジー

蓮の幻想

蓮池のオオワシのいる島

<2018年>

不忍池の生活史の定点観測

見ているはずなのに見ていない

ロータスさんの思い込みから始まった?

古代蓮を見に行く

花托から果托へ

花托のエネルギー

<2019年>

摩天楼

土はゴミではない

羽村の大賀ハス

車窓から見えた霞ヶ浦の蓮池

弘道寺のハス

日比谷花壇大船フラワーセンターの蓮

<2020年>

平等院の蓮

JR飯山線にある蓮(はちす)駅

潟駅前にある蓮池

<2021年>

伊佐沼の蓮

府中市郷土の森公園の蓮

「検見川発掘日記」

佐賀江の蓮池神社と蓮池公園

早朝の不忍池と昼の薬師池公園の蓮の花を見に

不忍池と辯天堂と蓮

水城公園と古代蓮

<2022年>

あさはた緑地公園の蓮の池

湿地帯で稲作に向かず蓮田となった長沼

残された蓮池の地名

福山上水と蓮池公園

小田原用水と「江戸口見付門外蓮池」

ソニックの車窓から見えた周防灘沿岸の蓮池

JR熊本本線の車窓から見えた松橋付近の蓮池

<2023年>

江戸崎行きバスの車窓から見えた蓮田

霞ヶ浦の珍しい蓮根のフライ

後楽園の井田と大賀ハス

香芝のハス池

鳴門線沿線の蓮田

旧吉野川河口の塩害による水争いを超えて蓮田に

作業の様子を思い浮かべながらご当地「蓮根つくね」をいただく

十二町潟のハス

庄川のほとりで岩魚と「蓮根の芽」をいただく

蓮田駅から菖蒲町まで見沼代用水沿いを歩く

陸羽西線代行バスの車窓から見えた最上川支流沿いの蓮田

<2024年>

清水濠の蓮

多米町の蓮田

中宿歴史公園の蓮池

東の池の蓮

犬養木堂記念館から庭瀬へ

大賀博士と庭瀬城

混乱と混沌とした葛藤の時代に次の希望が生まれる

河原津新田の蓮田

レンコン畑にもジャンボタニシ

長野県の蓮(はちす)駅と蓮堰

蓮(はちす)駅の前の蓮池と蓮堰

蓮堰と用水の神様

蓮駅から蓮堰と千曲川にはさまれた田んぼを眺めながら歩く

谷地池での蓮とオニバスの競争

<2025年>

名鉄竹鼻線沿線の蓮池

岐阜羽島駅駅前の小さな蓮田

岐阜羽島駅前のビルの間の細長い蓮田

土佐市の蓮池

「水のはけぬ川」と蓮池

国道1号線「東京から145km」あたりにある蓮沼の痕跡

吉田用水そばの蓮田もあった一大沼地帯

渡良瀬川左岸の蓮花川

蓮花と蓮華草

小倉の新幹線海底トンネルの出入り口のそばにある徳蓮寺のことば

江戸時代まで「蓮の御供」をしていた夜都岐神社

筒井城址の堀の間にある蓮池

稗田環濠集落のそばの蓮池

<2026年>

大雨にもヒトの感情の嵐にも負けず満開の蓮

 

 

「行間を読む」まとめはこちら

地図についてのまとめはこちら

失敗とかリスクについてのまとめはこちら