トイレについてのあれこれ 7 「5分の1の水で利用できる水洗トイレ」

少し前に、こんなNHKのニュースがありました。

 避難所などで活用 5分の1の水で利用できる水洗トイレ開発

(2019年4月9日)

 

地震が起きた際の避難所などでも衛生的な水洗トイレを利用できるよう、通常に比べて5分の1程度の少ない水で流せるトイレが開発され、メーカーが震度7を観測した自身からまもなく3年となる熊本市で説明会を開きました。

このトイレは大手住宅設備メーカーの「LIXIL」が開発し、災害への備えを考えるきっかけにしてもらおうと、熊本市内で説明会を開きました。

それによりますと、通常のトイレは5リットルもの水を使って配管に流しますが、新たなトイレは便器と配管との間にバネの力で開閉するふたがあり、水は1リットルあれば十分だということです。

また、ふたによって配管からの臭いも防げるほか、構造が簡単になったことで、手入れも容易で衛生的だということです。

水の量については平常時は5リットルに設定し、災害時に1リットルと切り替えることも可能だということで、メーカーは避難所になる公共施設などでの設置を勧めています。

LIXILトイレ・洗面事業部の松本新主幹は「災害時にも快適なトイレを提供できないかと開発にあたりました。避難所などの生活の質の向上に少しでもつながってほしい」と話していました。

 

正確な水の量はわからないのですが、家庭のトイレに比べたら少ない水で流せるトイレは時々見かけます。例えば、列車や高速バスの中のトイレとか、イベント会場での簡易トイレなどです。

 

「1リットルくらいで流せるトイレ」と聞いて、まず思い浮かべたのが1990年代に一時期居候させてもらっていた家のトイレでした。

 

*500mlから1リットルぐらいで流せるトイレ*

 

その家には水道はなかったが手押しポンプの井戸があったので、そこで汲んだ水をトイレにためて使用していました。

トイレは、井戸からも家からも数m以上は離れた場所に作られてました。

水を溜めた容器には500mlぐらいの小さな容器があって、だいたい1〜2杯で流していました。

トイレットペーパーを使わない天然のウオッシュレット方式でしたから、少ない水で流すことも可能だったのかもしれません。

 

1980年代から行き来していたその国に行って、印象的だったのが水洗トイレの普及率の高さでした。

日本の場合、水洗トイレか汲み取りかの二択になりますが、その国なら水洗トイレか青空トイレかになるので、まず汲み取り式トイレというものを見ることがありませんでした。

日本に比べたら下水道のインフラが貧弱だと思っていたその国で、わずかの水で流せる水洗トイレが当たり前のようにありました。

 

日本との差は、その流したものをどう処理して川や海に戻すかまでが社会のすみずみまで整備されているかどうかが大きといえそうです。

 

その居候させてもらった家は小さな家でしたが、庭にパパイアグアバが植えられていましたし、ヤギやニワトリ、あひるが庭を闊歩していましたから敷地はそれなりにありました。

それくらいの敷地があれば、生活用水の井戸の水源からも離して各家庭ごとの簡易浄水槽を作ることができるのかもしれません。そして簡易浄水槽で処理されたものが地中に戻されていたのだと思います。

1980年代に、イギリスの海外医療援助団体OXFAMから出されていた「Where There is No Doctor」に書かれていたように、安全な飲み水と排泄物を安全に処理して感染を防ぐために、わずかの水で流せる水洗トイレが普及していたのかもしれません。

 

反対に、日本では下水道が普及するにつれて下水処理センターまで長い下水道が整備されていますから、ある程度多目の水で流していかなければならないのかもしれませんね。

ちなみに、日本レストルーム工業会の「トイレナビ」の「トイレの年表」を見ると、1970年代前半は、水洗トイレを流すのに16リットル必要だったようです。

 

日夜、快適性と環境のことを考えてトイレの改良に取り組んでいる方々に、本当に頭が下がります。

 

あっという間に排泄物が水に流されて目の前から消えるのですからね。

そしてさらに少ない水になり、災害時にもトイレの心配が少なくなるのですから。

 

 

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