下水道についてのあれこれ 5 <水再生センターと「虹の下水道館」>

目黒川を流れる水の大部分が「新宿区の東京都下水道落合水再生センターで下水を高度処理したもの」であることを知って、30年来の宿題をしていなかったことに気づいたのでした。


現在の玉川上水が再生水であることを知ったのが30年ほど前だったのですが、関心はむしろ浄水のほうに向いていました。
ブログを書くようになって下水道についても考えるようになったのですが、水再生センターについてはあまり意識しないままでした。


地図をつらつら眺めている時にも、水色の四角が並んだ広い敷地があるのが目には入っていました。
あるいは、最近、年に何度も行く葛西臨海公園の側にも、その施設があります。
なんとなくそれが下水の処理場だということはわかっていたのですが、京葉線に乗っているときには海の風景に気を取られているので、線路の反対側に「水再生センター」があることに最初の頃は気づかなかったのでした。


「そうだ、浄水場だけでなく水再生センターの付近も散歩してみよう」と思い立ち、まずは落合水再生センターへ行ってみました。
神田川妙正寺川が合流する近くにありました。
敷地の一部が運動場や公園に利用されていて、その下では地域から大量に出る下水を処理して目黒川に循環させていると思うと、すごい事業だと改めて思いました。



<「虹の下水道館」>



この水再生事業について検索していたら、東京都下水道局による「虹の下水道資館」という施設があることを知り行ってみました。


「国際展示場」駅で降りると、ちょっと前なら近未来に感じるようなよく整備された街並です。
少し歩くと、その風景をなんら壊すことなく江東区の清掃工場とスポーツセンターがあって、その一角にありました。


こじんまりとした資料館ですが、子ども向けに作られた下水処理と再生水の使われ方についてのアニメがとてもわかりやすくて勉強になりました。


下水道の歴史をまとめたパネルも、とても基本的な歴史なのに案外知らないままに来てしまったと思いながら読みました。

1943(昭和18)年 下水道料金徴収開始
1958(昭和33)年 新下水道法
          都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与
1970(昭和45)年 下水道法の改正
          公共用水域の水質保全に資する
1986(昭和61)年 野火止用水の清流復活、新宿副都心水リサイクルセンターの運転開始
1989(昭和63)年 東京域レーダー雨量計システム、東京アメッシュ開局

「水辺はゴミや生活排水を処理する施設に近い感覚」(「水路をゆく」)だった時代から、これだけ高度に下水が処理されて再生水として活用されるためには、「公衆衛生」という概念が社会に浸透する必要があったことでしょう。



ところで、東京アメッシュは東京下水道局の事業であったことを、この資料館に来て初めて知りました。


何故、下水道局が正確な降雨情報を知る必要があるのかについては、アニメの中で、「増水時には止むなく下水を一部川へ放流する」と説明していたことが関係するのかもしれません。


私ひとり分でも毎日相当量の下水を流しているのですが、帰り道の満員電車に揺られながら、これだけの人が出している下水を粛々と処理しているシステムに、感謝を越えた畏敬の念が沸き上がって来たのでした。




「下水道についてのあれこれ」まとめはこちら
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