松浦鉄道西九州線の伊万里駅に到着し、道の反対側にあるJR伊万里駅に向かいました。
2階には両駅を結ぶ歩道橋があるはずなので階段を昇りましたが、なぜか行き止まりで、あわてて1階に戻りました。目の前にJRの駅があるのに横断歩道は少し離れていて、迂回しなければなりません。12分後の筑肥線唐津行きに乗り変えは余裕だと計画していたのに、まさかの信号待ちで焦りながらJRの駅に向かいました。
ふりかえると、やはりあの歩道橋を渡ってこちらにきている人がいました。ちょっと狐につままれた気分です。
ICカードが使えないので切符を自動販売機で購入し、お釣りが出てくる時間もまどろっこしく感じながら、待っている列車に飛び乗りました。
伊万里駅では、かつてはその先の松浦線と接続していたので、博多駅ー長崎駅間を結んだ急行「平戸」など、筑肥線と松浦線を直通運転する列車もあったが、1988年に松浦線が第三セクターの松浦鉄道に転換されたことにより直通運転はなくなった。また2002年に伊万里駅の駅舎改築とともに線路も分断された。
ああ、残念、1980年代半ばなら、佐賀ー諫早ー佐世保ー伊万里ー博多と一筆書き乗車券にできたのに。
ただ、姪浜駅ー博多駅間は福岡市地下鉄空港線と重複しているので、やはり一筆書き乗車券は一筋縄にはいかないようになっているのでしょうか。
*松浦川沿いに唐津へ*
伊万里駅を出てじきに列車は少し上りになり、小さな谷津沿いの棚田の風景になり、金石原(かないしはら)駅近くでは広々とした水田地帯が目の前に広がりました。
40年ほど前は、「高齢化社会」「過疎化」「労働力が不足」とさかんに将来への不安が伝えられていました。実際に人口減少で町や村が縮小されてたり外国からの労働力が必要な現実はあるのでしょうが、こうして沿線の風景を見たり、全国の航空写真をみると、水田は健在ですし、川や山の隅々まで防災対策が行われている風景をみると、あの頃の不安はなんだったのだろうと思うような堅実な社会があります。
一時的な不安や理想論に煽られることなく、長い視点では常に問題解決の方向へと進んでいるように見えますし、誰かが地道にそれをしてきたのだと。
あちこち遠出したくなるのは、そういう社会の変化を見たくなったこともあるかもしれません。
6月下旬、線路沿いの青い栗の実がピンポン大に実り始めていました。
桃川駅のあたりから松浦川の支流沿いになり、両側が水田地帯です。
肥前長野駅のあたりでは、地蔵川を思い出すような街や水路が見えました。
駒鳴(こまなき)駅のあたりから堤防が高くなり、高い木が増えて川面が見えなくなりました。
伊万里駅では結構乗客が乗ったのですがこの辺りでは数人になり、左から右へ、右から左へと座席を移りながら松浦川を追いました。
伊万里市から唐津市へ入ったところにある佐里駅では、一日乗車人数は2011年で「平均12人」とあります。川沿いの堤防は高く、その内側に広い水田と住宅地が広がっていました。
駅周辺の紫陽花も手入れされ、どの集落も健在という印象です。
肥前久保駅を過ぎたところで東側から唐津線が並走し、このあたりから右岸、左岸から支流がいくつか合流して松浦川の川幅も広くなりゆったりと流れています。松浦川も沿線も美しい風景でした。
鬼塚駅の手前で、大きな支流との合流部が見え、そして下流側には取水堰が見えました。
ここから線路は北西へと曲がり、松浦川左岸から少し離れました。唐津城が見え、水路と遊歩道の落ち着いた風景が見えるとじきに唐津駅に到着しました。
ここで下車し、今度は同じ筑肥線の筑前前原(まえばる)駅行きに乗り換えです。
ホームの上をトンビが旋回していて、海が近いことを感じました。
*唐津から筑前前原へ*
地図で唐津のあたりを見ると、松浦川が河口付近で北西へと曲がり、右岸側は砂州と思われる地形が長細く伸びています。
ここを見てみたいと思っていたので、前原行きの列車に乗って和多田駅を越えたあたりからずっと車窓を眺めました。
松浦川を渡るときに、右岸川からの自然堤防と左岸側の唐津城、そしてその向こうに海が見えて満足です。
松浦川を渡ると右岸側はずっと松林が続いています。線路の反対側には小さな水田が残っていました。朝早い朝食から何も食べていないので、この水田から何個のおにぎりができるのだろうと、考えることはご飯のことになってきました。
延々と続く松原の途中にある虹ノ松原公園駅は、そのまま目の前の自然公園の入り口になっていました。
浜崎駅のあたりからまた海が見えて、鹿家駅のあたりでは真っ黒な瓦屋根と楕円形の棚田がなんとも別世界の美しさで、筑肥線に乗ってからも「すごい」と思わず口にしてしまう風景の連続です。
ところどころ小さな川を渡るくらいだったのですが、あの毎年ニュースになる九州の大雨はどこへと流れるのだろうと考えているうちに筑前前原駅に到着しました。
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