あちこちを散歩をしているうちに、「難解な名前」に突き当たるようになりました。撫養川のように漢字は知っているけれど読み方が全く違うことにはお手上げです。今は検索するとすぐにわかるので読み方がわからないまま字面だけで理解したままでも現地には辿り着けるのですが、なんだかモヤモヤしてしまいますね。
読めない、意味がわからない名前も地名であれば解読していく楽しさはありますが、人名が読めないのは困りますね。
また読めたとしても「発音」の違いもあります。
先日のヨハネス・デ・レーケについてもWikipediaで見かけるのは「ヨハネス」ですが、農林水産省のHPでは「ヨハニス」となっています。「ネ」と「ニ」の一文字でも、その国の言語の発音にしたら全く通じないこともありますね。
外国語名だけでなく、私の父の名前には「ズ」が入っていたのですが、いまだに「ズ」だったか「ヅ」だったか娘でいながら混乱することがあります。
仕事がら名前に使う漢字の多さと複雑な読み方でいく通りもの可能性ができてしまう不思議な日本の名前に難しいといつも思うのですが、さらに最近では移民の子孫の方々が日本に戻ってこられて移民先の名前が入っているため、カタカナ表記やミドルネームが入る名前もあります。
日本語読みの問題は、読み仮名があれば正確に把握できるだけではなくなりました。
とつらつらと考えていたら、なんと「戸籍にフリガナがない」というニュースに意表をつかれました。そういえば戸籍謄本をまじまじと見たことがありません。
これもマイナンバーカードの問題噴出のおかげで知りました。
その記事を覚書のために書き残しておこうと思います。
マイナカードで露呈 「戸籍にフリガナがない」問題
山口健太氏(YAHOO!JAPANニュース、2023年6月4日)
マイナンバーカードで登録できる「公金受領口座」に、家族名義の口座が登録されていることが報じられ、話題になっています。
ただ、現状ではシステム上、確認することが難しいようです。なぜこんなことになっているのか背景を解説します。
戸籍の氏名に「読み仮名」がない問題
公金受領口座では、前の人が使った端末をログアウトせずに次の人が操作してしまうという問題がありましたが、それとは別に、家族名義の口座を(おそらく意図的に)登録したケースが見つかったと報じられています。
NHKはその背景として「氏名のフリガナ」の問題を挙げています。この点について、河野太郎デジタル大臣は「法改正でふりがなが公証されるようになれば、口座名義人情報との自動照合が可能となります」と5月23日に説明していました。
逆にいえば、現在の仕組みでは自動照合できないことがうかがえます。せっかくマイナンバーカードを使っているのに、なぜ照合することができないのでしょうか。
実は、マイナンバーカードのICチップに記録されている4情報(住所・氏名・生年月日・性別)には、氏名の読み仮名(フリガナ)が含まれていません。
しかし、金融機関の口座名義を照会する際には氏名のフリガナを用いています。一般に、氏名とフリガナを自動的に変換することはできないため、マイナンバーカードと金融機関の口座を自動的に照合することはできないというわけです。
マイナポータルから公金受取口座を登録する際、氏名や住所などは自動的に入力されるのに、フリガナだけは手入力する必要があるという、一見すると理解に苦しむ仕様になっているのはこのためです。
具体的な例として、次のようなケースを考えてみます。
・マイナンバーカードの「山田 太郎」
・手入力のフリガナ「ヤマダ ハナコ」
・金融口座の口座名義「ヤマダ ハナコ」
人間が見ればこの人のフリガナは「ヤマダ タロウ」ではないか、と思うところですが、マイナンバーカードに情報がない以上、「ヤマダ ハナコ」を間違いとする根拠もありません。
それなら最初からマイナンバーカードにフリガナを登録しておけよ、と思うところではありますが、それも難しい注文です。これはそもそも日本の戸籍にフリガナが登録されていないためと考えられています。
日本には戸籍とは別に住民基本台帳があり、こちらは出生届などに基づいた読み仮名が登録されている場合が多いようですが、これは検索用など事務的な都合によるものなのだそうです。
つまり、我々が日常的に使っている読み仮名というのは、基本的には本人がそう主張しているだけで、公的に証明できるものではないということになります。
これではデジタル化において明らかに不便なので、戸籍や住民票などに氏名の読み仮名を追加する改正法案が6月2日に成立したと報じられています。これが施行されれば、全国民の正式な読み仮名を(日本の歴史上初めて?)決めることになるでしょう。
とはいえ、全国民が申請するのは大変なので、おそらくは住民基本台帳をベースに、「この読み仮名で間違いないか?」といった通知が送られてきて、意義のある人は申し出るような段取りになると筆者は予測しています。
ただ、マイナンバーカードの交付申請書が送られた際には、そこに点字表記として記載された読み仮名に「濁点」や「大文字・小文字」、「両音異字」などの間違いがあるという指摘が相次いだだけに、似たような騒動が再び起きる可能性はあります。
いずれにしても、戸籍の公的な読み仮名が確定すれば、マイナンバーカードの券面やICチップにも公的な読み仮名を加えることが可能になり、金融機関との自動照合も実施することになりそうです。
デジタル化に一歩前進か
そもそも読み仮名が曖昧な状態で公的受取口座の登録を進めたことが問題だ、という指摘もありますが、コロナ禍において給付金を迅速に配布できるようにすべきという当時の社会的な要請を考えれば、一定の合理性はあったと考えられます。
その上で、名義が異なる口座を意図的に登録するケースとしては、子どものお金を親名義の口座で管理するような場合が考えられます。ただ、0歳から口座を開ける銀行は多いので、基本は子ども名義の口座を用意することになるでしょう。
マイナンバーカードに関する一連の問題は、システム障害や人為的なミスなどさまざまな要因が指摘されていますが、今回の件については戸籍や住民基本台帳の制度がデジタル化に対応できていなかったことが原因といえます。
戸籍の氏名に使われている漢字については、デジタル庁の主導により、システムを問わず正確に表記できる取り組みが進んでいるとのこと。そして今回は読み仮名についても、デジタル化に向けて一歩前進したといえそうです。
追記:
6月7日、デジタル庁が公金受取口座の総点検結果を発表しました。根本課題としては、「漢字氏名とカナ氏名の照合ができないこと」を挙げています。
対策として河野太郎デジタル大臣は、年内を目処にAIなどを用いた「漢字氏名とカナ氏名とを照合可能な検知モデル」を開発し、目視確認と組み合わせるとのこと。また法改正により氏名のフリガナが公証されることに併せてシステム改修を行い、自動照合を実現することも発表しました。
(強調は引用者による)
「我々が日常的に使っている読み仮名というのは、基本的には本人がそう主張しているだけで、公的に証明できるものではないということになります。」
ああ、「私とは誰」なのでしょう。
そして仕事上、戸籍に残る大事な名前だからと慎重に漢字を確認して記載している出生証明書ですが、まさかの「出生証明書に書かれている読み仮名は公的に証明したものではない」とは。
日頃から形骸化した戸籍と現実の住民票に対応している人であれば現実の問題をたくさんご存知でしょうし、マイナンバーに一本化するとかデジタル化の前になんとかしたほうがよかったと思うこともあるのではないでしょうか。
戸籍ってなんでしょうね。
そして読み方が分からなくてもなんとかなってきた社会も、なんだか別の意味ですごいですね。
*追記*
記事を公開してから気づいたのですが、私が仕事上記入する「出生証明書」(出生届の右側)にはフリガナの記入はなくて、親が記入する左側の「出生届」のみフリガナを記入するようになっています。これは入院中にはその子の名前がまだ決まっていないので、医療機関側では書きようがないからだと思っていましたが、「母親」の名前にもフリガナがないのはどんな経緯があったのでしょう。
出生証明書一枚をとっても、その書式になるまでの歴史がありますね。
ちなみにここ2~3年で「捨印」の慣習がなくなり、それは助かりました。