10年ひとむかし 91 浦島太郎の気分

ブログを書き始めてから、自分の感じていることはどこから来たのか思い返しながらその「気持ち」を整理して書き残してみるという作業を意識しています。

 

最近、「浦島太郎の気分」になることが増えてきました。

初めてその気分になったのは1980年代半ばに2年ほど東南アジアで生活をしてから帰国した時で、その日に食べるものだけでも一杯一杯な生活の「途上国」から空路わずか3時間で戻ってきた日本には、食事も仕事もあっても「生きづらい」ことに悩みあるいは反対に「自分は特別な存在」という自信に満ちた人が増えてきたことにとても戸惑ったのでした。

 

今思えば、あの時期に日本から離れていなければその変化もここまで自覚できなかったかもしれませんね。

 

以来、日本の中だけでも浦島太郎の気分になることは多々あるのですが、おもに技術や産業がいつの間にか変化したことで社会の風景が変わったことに対してでした。

医療も日頃馴染みがなかった方が久しぶりに受診されれば、そう感じるのでしょうか。

 

 

*こんな浦島太郎の気分もあったとは*

 

昨年末に連続強盗事件が起こり物騒な世の中になったと、そのニュースを追っていました。

犯人は国内にいると思ったら、なんとフィリピンの入管の収容施設の中から指示をしていたというニュースに40年ほど前の記憶が蘇ってきました。

 

ニュースで映っていた「街中にある収容所」は、1980年代半ばとあまり変わらない建物でした。

私が訪ねたのは入管施設ではなく地元の刑務所でしたが、建物内も鉄格子ではなく金網が張られた部屋に何人も収容されていたのを見た記憶があります。

 

日本の頑丈な塀と監視塔があり、少し人里離れた場所に建つイメージとは全く違っていました。

 脱走を防ぐため高さ4メートルの壁に囲まれ、有刺鉄線が張り巡らされている。この中に、〇〇〇〇、△△△△両容疑者ら日本人の男4人(別の特殊詐欺に関与した窃盗容疑などで逮捕状)が収容されている。

 通信機器の使用は本来禁止されているが、職員に数万円から十数万円を払うとスマートフォンを使用できる。没収されたスマホが返却されたり、別の収容者から新たに購入することも可能。複数のスマホを持つ人もおり、スマホでカジノに興じるグループもいたという。 

(「ルフィ収容施設は『金がモノを言う世界』…賄賂でVIPルーム・複数スマホ・ゴルフ外出」読売新聞オンライン、2023年1月30日。伏字は引用者による)

 

1980年代のその刑務所でもお金が物を言う社会だったようでしたし、入国は簡単でも出国するまで賄賂が要求されるなんて日常茶飯事な国などいろいろなので、犯罪者でもVIP待遇があるのも驚きではなかったのですが、スマホがこの国でも広がったことで海外から犯罪ができるのかとちょっと浦島太郎の気分になったのでした。

 

すごく浦島太郎の気分になったのは、以下の部分でした。

「ルフィ」ら強盗グループの指示役は、施設内から秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」を使い、日本の実行役に強盗を命じていた可能性がある。

 

インターネットがまだなかった1980年代に使われていたテレックス、それがアプリになっているのかと思ったら別物なのですね。いずれにしてもスマホで海外とやり取りして犯罪を計画とか40年ほど前には思いつきもしないことでした。

 

ところで浦島太郎の気分とはなんだろうと頼みの綱のWikipediaを読んでみたけれど、よくわかりませんね。

世界中に似たような諺や物語があるようなので、何か普遍的なことと繋がるのだろうとは思うのですが。

 

少しだけ見えてきたのは、やはりあの「自分は特別」な感覚を持つ人が増えた時代にこの始まりがあるような気がしてきました。

私とは感覚が違う、そんな感じが浦島太郎の気分の一つかもしれません。

 

 

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