散歩をする 466 ツルボを愛でに明治神宮へ

散歩の記録が遅れに遅れて、ようやく8月下旬の記録です。

 

立秋を過ぎた頃からツルボを探しながら歩くようになって十数年、9月中旬ごろまでは目を皿のようにして道端を眺めています。

ここなら咲いていそうと思ってもまったく見つからなかったり、時期がずれていたり、ああもうダメかと思うとひょんなところに1本だけスクっと咲いていたり、本当に不思議な花です。

 

一昨年、千数百年も前の水田や都の跡に咲き乱れるツルボがあることを知りましたが、緊急事態宣言中で涙をのみました。

昨年8月下旬、開花したかどうかの情報も得られないままいよいよツルボを探しに西へと向かいました。広大な敷地や周辺の水田、周濠を歩き回ったのに一本も見つからず、一か八かの賭けのような散歩は惨敗でした。

 

傷心のまま、9月初旬に都内の秘密の場所を訪ねたのにこれまた1本も咲いていません。その数日後に、ツルボが群生するという都内のとある場所を訪ねてようやくその幻想的な風景を見ることができました。

ちょっと欲が出て、もう1ヶ所やはり都内の他の場所を9月中旬に訪ねたところ、ここもまた群生していましたが、残念ながら大半の花が咲き終わっていました。

その年にいつ開花するのか、いつまで咲いているのかがつかめず、はかなくもそのシーズンが終わってしまうのです。

 

 

 

明治神宮の鎮守の森とツルボ

 

 

一世紀前は不毛の原野だったことが信じられないほど、まるで太古からの森のような場所ですが、参宮橋から入ると広い芝生があります。

 

ひと月全ての日が真夏日という観測史上初めての暑さでしたから、今年はいつにも増してツルボがいつ咲くのか全く予想もできない年でした。

 

8月下旬、ダメもとで猛暑の中を出かけてみました。相変わらず暑いのですが、それでも立秋を過ぎた頃からミズヒキや猫じゃらしなどの秋の草がいつも通りに存在を現し始めました。

気温ではなく日照時間によるのでしょうか。

ツルボも例年通りかもしれないと、期待が高まります。

 

参宮橋駅では人もまばらだったのに、参道に入ると海外からのたくさんの観光客が鬱蒼とした鎮守の森の中にある本殿に向かって歩いています。

 

森の手前の芝生のあたりに、昨年は咲き終っていた群生地があります。

どうか咲いていますようにと祈りながら近づくと、最初は周囲の草むらしか見えなかったのにしだいに目が慣れてくると広大な原っぱ一面に咲いていました。

まだ数センチぐらいのものからぐんと20~30センチぐらいまでスクっと伸びたものまで、美しい姿です。

 

一本だけ咲いている姿も美しいし、群生しているのは本当に幻想的です。

こんなに美しいツルボかつては救荒作物だったとは。

 

 

少し歩いてはしゃがみ込んで眺めている私を見て「何があるのだろう」と気になる人もいたようですが、どうやらツルボは目に入らないようでそのまま本殿へと向かって行きました。

 

広大な草むらですが、少し外れると全く咲いていない場所もあります。

どうやって広がっていくのでしょう。不思議な花です。

かつて不毛の原野だったこの場所に自生していたのでしょうか、それとも全国から植樹のために運ばれてきた木々とともにこの地に根を下ろしたのでしょうか。

 

悠久の森とともにこのツルボの群生もまた一世紀前の人たちが遺してくれたものなのだと、少しこみ上げるものを周囲の人に悟られないようにしながら北参道へと向かいました。

 

 

 

 

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