生活のあれこれ 31 「水の歳時記」とため池管理

祖父母の田んぼが干拓地だったことを知り、2018年ごろから干拓と用水路を歩くようになりました。暇さえあればインターネットの地図を拡大して眺めていると、日本各地に大小さまざまなため池が密集している地域があることを知りました。

 

あの奈良もため池が無数にあることを紙の地図の時代には知らなかったのですが、いにしえより水に乏しい土地であり、栄華を極めた人たちの古墳でさえその周濠の水が現代もまだ周囲の水田を潤していることに惹きつけられました。

かくして関心は碧海台地のため池と明治用水知多半島のため池と愛知用水そしていなみ野台地と淡山疏水と広がり、ため池の多い地域と用水路を見て歩くようになりました。

 

ため池のある地域では、水が過不足なくそして事故もなく安全に維持されるためにどのような生活があるのだろう。

そんなことが気になってきました。

 

 

*「水の歳時記」*

 

香川用水記念公園の水の資料館には、「水の歳時記」という展示がありました。

 

ため池管理の行事が農村の風物詩に

灌漑期が近づく5月頃に行われる「井出浚(いでさら)い」に始まり6月中旬の「初ユル抜き」、夏の盛りの配水管理を経て、実りの秋を迎え収穫後の「池干し」、さらには堤防の草刈りや焼き払いに至るまで、1年を通じて維持管理にかかわるさまざまな行事が行われます。

それは讃岐の農村における四季折々の風物詩として、ため池の景観とともに人々の心に焼きつき、農村での暮らしに深く溶け込んでいます。

 

「井出払い」は用水路の清掃、6月には「池のほとりなどに祀られている水神様に豊潤を祈願」する水神祭、ため池の水を放水して田植えを開始する「初ユル抜き」、夏は配水管理、灌漑期が終わり11月から12月には貯水を落として保守点検する「池干し」、年末から年始には「池の樋管の水門を閉ざして貯水開始」という流れがあるそうです。

 

訪ねた9月初旬は配水管理も終わりに近づいた頃でしょうか。

配水管理

「水配(すいはい)さん」とか「鍬(くわ)かたぎ」とよばれる配水責任者の指示の下に無駄のない配水が行われます。

 

これから4日間、ただひたすらため池を見て歩く始まりにふさわしい展示です。

 

なかなかこうした「生活」に視点のある説明は少ないですからね。

ここまで来てよかったと思いながら読みました。

 

 

 

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