食べるということ 9 <味覚の東西南北差>

病気になった時の食事は「文化人類学的側面を合わせ持つ」ということですが、今回体調を崩した時にいわゆる和食をほとんど思いつかない自分にちょっと驚きました。


日頃はおいしいと感じる鰹だしとか昆布だしを使った和食の類いは全然食べたくなくて、思い浮かぶのはベトナム料理でした。


あっさりしたスープのフォーに山のように盛ったバジルミントなら食べられそうと思ったのですが、作る元気も食べに行く元気もないので幻のように浮かんでは消えていました。


ちょっと元気になったので、少し前の録画してそのままになっていた「コウケンテツが行く アジア旅ごはん」のベトナムの回を見ました。


ベトナム北部から南部へと移動しながら、それぞれの地域での家庭料理や調味料などを紹介していました。


私にとってのベトナム料理というのは、南ベトナムからのボートピープルとして難民になった人たちの料理が最初の出会いでした。
当時であった人たちは、「野菜でも魚介類でも北ベトナムに比べると豊富だし、南ベトナムの料理の方が美味しい」と食の面でも北ベトナムを意識して、南ベトナムへの郷愁や誇りを話すことがありました。


ところが、この番組では北ベトナムハノイから出発していて、ハノイに住む人が、「ベトナムでは南部と北部の味がまったく違う」「南部では砂糖をたくさん使って甘いので口に合わない」というようなことを言っていました。


私が食べたベトナム料理は、それほど砂糖を使っていた印象はないので、こんな味覚の差があることに少し驚きました。
時々買って食べるベトナム料理のお店も南部の料理だと思うのですが、私には甘いとは感じないので。


そういえば、私はまだあまりベトナム北部の料理を食べたことがないなと思いながら、その番組を見ていました。



<日本の中での醤油に対する感覚に似ているかもしれない>


私の母は関西出身で、関東出身の父と結婚しました。



子どもの頃に、「関東の醤油は真っ黒でしょっぱいから合わない」と母がぼやいていたのをよく耳にしました。


家では関東の醤油を使い、関東風の味付けになっていましたが、時々思い出したかのように薄口の醤油でうどんをつくっていました。
「あんな真っ黒なおつゆのうどんなんて・・・」といいながら。


時々、母方の祖父母の家に遊びに行くと、醤油の味の違いに戸惑いました。
なんとなく甘めに感じて、どうもピンとこないのです。
特にお刺身を食べる時には、むしょうに「普通の醤油で食べたい」と関東風の醤油が恋しくなりました。


南ベトナム北ベトナムの「甘さ」に関する違いも、こんな感じかもしれませんね。


東西南北と、同じ国でも所変われば味覚の違いは大きいですね。



今度は意識して北ベトナムの料理を食べてみたいと思いました。




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