専門性とは 3 <「専門職」の指すもの>

私が20代だった80年代ごろは、まだ「専門職」の指す仕事はとても限られていたような印象があります。


どこからどのように私自身の「専門職」の認識が作られたのかわからないのですが、たとえば「医師は専門職だけれども、看護職は専門職ではない」と思っていたところもあります。
なぜ看護職は専門職ではないと思っていたのかというと、当時は「女性は社会の中で低く見られている」という狭い視点でとらえていたのかもしれません。


ブログを書くようになり時代を行きつ戻りつ考えることで、1980年代初頭、当時最先端の病院で「最新の看護」というプライドを持って働き始めた頃は、看護の歴史から見れば1950年代から60年代の看護の大転換の時期がそう遠くない昔であったことを知らなかったからでした。


1950年代から60年代はまだ看護部という管理部門さえ整っておらず、病院に入院しても家族が身の回りの世話をし、食事の準備もしていた時代だったのですから。


看護に限らず、1970年代が乳児保育のあけぼのの時代であったり、高齢者介護は1980年代から90年代があけぼのの時代だったといえるぐらい、ケアはようやく、労働としての形が作られ始めたばかりだったのでした。


そういう意味で、当時「看護は専門職とは言えない」とどこからか言われていた意味が、ようやく理解できるようになりました。


<「専門職」の意味>


コトバンクに収録されている「専門職」の説明で、「世界第百科辞典 第2版」の解説に「専門職(専門的職業とも呼ぶ)の定義はまちまちであるが」と書かれています。


案外、明確な定義はないのは、看護と同じく新たに出現した多種多様な仕事がそれぞれ専門性を急速に発展させてきた時代の流れで、従来の「聖職者、法律家、医師、高等教育期間の教師、科学者、技術者、芸術家」(「世界大百科事典」)あるいは「一般的には医師や弁護士といった国家資格を必要とする専門的職業」(「日本大百科全書」)のようなイメージにはおさまりきらなくなってきたのでしょうか。


コトバンクの4つの辞典の中では、以下の部分が専門職に当てはまるかもしれないと思いました。

長期の教育訓練を通じて修得される高度の専門的知識・経験を必要とする職位(「ブリタニカ国際大百科事典」)

体系的な知識(学問)を長期間学ばないと就けない職業であること(「世界大百科事典 第2版」)

高度な専門知識や技能が求められる特定の職種(「大辞林 第三版」)


現在はまだ専門職と見なされていない仕事でも、事象を正確に観察する手法が確立され、経験という暗黙知を客観化できるようになれば、その職能集団は専門職として発展していくのかもしれませんね。


ただし、社会の問題を単純化したり、理論化を急ぐと、せっかく多くの人が地道に築いてきた専門性を揺らがせるるようなつじつまの合わないことがまかり通ってしまうので、専門性とか専門職という言葉には慎重になる必要がありそうです。



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