行く前に地図を見ていたら、豊橋駅のすぐそばにある水路に気づきました。牟呂用水であることがわかりました。以前、どこかで目にした明治時代に開削された用水路です。
駅西口からすぐのところに神野新田開発のために延長された部分が残っているようなので、豊橋駅に到着してまずこの用水路を見に行きました。
Wikipediaの牟呂用水の説明にもうひとつ松原用水について書かれていますが、こちらはさらに16世紀に豊川から水を引き始めていたようです。
大きな川から水を引き、農地が作られ、食糧を得る。
「灌漑」という言葉を小学生ごろに習っていたと思いますが、こうして実際にその用水路をたどって歩いて見ると、月並みな言葉でしか表現できないのですが、その重みに圧倒され続けています。
さて、地図で見ると豊橋市を流れる豊川は、市の中心部のあたりで大きく蛇行を繰り返しています。
コトバンクの世界大百科事典では、豊川放水路について以下のように言及されている部分が紹介されていました。
...豊川は流路延長が短く、河道のこう配が大きいのに、流域の降水量に季節的な変化が大きいため、河況係数(年間の最大流量の最小流量に対する比)は8:1と全国主要河川の中では最高値を示している。このため過去なんども洪水にみまわれ、鎧堤と呼ばれる堤防を築いたり、民家の周りに石垣を築くなど対策が講じられてきたが、最終的に解決されたのは1965年の豊川放水路の完成によってである。豊川を利用した灌漑用水としては、松原・牟呂両用水に加えて、68年に完成した豊川用水がある。
広範な土地を水で潤すだけの水量は、反対に家や田畑を流し、多くの生命を奪うことにもなるということですね。
*豊川放水路分水堰まで歩く*
豊橋駅から市電に乗って十分ぐらいのところに、吉田城跡と公園があります。川のすぐそばに城跡があるということは、あの熊野川を見下ろす新宮城のような高台だろうと思った通り、大きく蛇行する豊川を一望できました。
そのあとバスで豊川放水路の手前まで行き、放水路の堤防を歩いて分水堰を目指しました。
春の暖かな日差しだったので歩くと汗が出てきそうなくらいでしたが、風が少し強くなってきたので上着を脱ぐと少し寒く、またガードレールもない堤防を車を避けながら歩いていると風で放水路に飛ばされそうになりながら、ちょっと冷や汗の出る散歩になりました。
歩いている人なんていませんからね。
堤防を歩くこと20分ほどで分水堰につきましたが、その間、放水路側に流れている水はわずかでした。
2ヶ月くらい前に、下流を新幹線で通過したときにはかなりの水量があったので、季節の違いとか上流のダムからの放水量が関係しているのでしょうか。
この日は豊川本流もこの分水堰があるあたりは水量が少なく、河床が広範囲に見えていたのですが、大雨で濁流がこの堤防の上端近くまでくることを想像すると、この大きく蛇行した場所はそうとう危険だったのだろうと想像しました。
私が幼児の頃に完成したこの放水路ですが、私自身、水害の記憶がほとんどないのも、この時代にこうしたひとつひとつの工事が積み重ねられてきたからだったのだと改めて思いました。
*とよがわからとよかわへ*
豊川(とよがわ)から豊川(とよかわ)市内へは、歩いて20〜30分ぐらいでいけそうです。
分水堰付近はバスが通っていないので、豊川稲荷まで歩くことにしました。
地図で見ると、分水堰から水田地帯をまっすぐ歩けば名鉄豊川線の稲荷口にたどり着くようです。
この「豊川線」は「とよかわせん」と読むようですね。
このあたりで1万2000〜3000歩ぐらいだったので、まだまだ歩ける余力はありました。
ところが田園地帯の道路というのは車優先なのか、歩道もなく、前から後ろからひっきりなしに通過する車を避けながら、しかも次第に風が強くなってきた中を歩くのはけっこう疲れました。
そして、まっすぐな道というのは、目標が遠くに見えてもなかなか近づかない感覚が疲労感を増加させる感じです。
ようやく、観音堂という交差点から、歩道が整備された道になりました。
その交差点からはゆるやかに、でも結構な勾配の登り道になっています。
ここが、水田地帯と豊川の河岸段丘の境界なのかもしれません。
豊川稲荷が見えてきた頃に2万歩を超え、足を引きずるように歩いて、風の冷たさと疲労感の中、お店にたどり着きました。
そこで食べた温かいおうどんで元気になり、もうちょっと歩けそうな気がして豊橋駅まで戻ることにしました。
その途中、豊川放水路の下流部分を通過したのですが、分水堰付近の水量とは様相が違い、以前見たように相当の水量が流れていました。
ということは、あの分水堰より下流で、両岸に広がる水田地帯から水が流れ込んでくるのを受け止めているのでしょうか。
水を利用し、そして水を制するということは、本当にすごいことだとあちこちの放水路を見るようになって思います。
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