7月初旬に、何気なくつけたテレビで外国の女性が日本のおにぎりにハマっているという番組がありました。
テレビ東京の「世界!ニッポン行きたい人応援団」の7月8日の放送だったようです。
インターネットで見つけたおにぎりに一目惚れし、1年半前におにぎり店をオープンした女性をポーランドから招待する。「本物のおにぎりを学びたい!」と意気込む彼女は、創業59年のおにぎり専門店「ぼんご」を訪ねる。さらに、新潟の米農家を訪ね、田植え体験を通じて"ニッポンの心"を学ぶ。
ここ数年、海外でもおにぎりを販売しているという話題を耳にするたびに、時代とともにあり得なさそうなことが起こるものだと、30年前のことをいつも思い出していました。
東南アジアのある国で暮らしていた時に、同僚におにぎりを作って見たのですが、誰も手を出さなかったのでした。
中に入れるものは調達できなかったので、塩むすびだったと思います。
米の種類は違っても、炊きたてのご飯を塩でむすんで海苔を巻いたものだけで、私には食欲が出てくる味でした。
その国でももち米を丸めたお菓子はあるので、外見からはそれほど抵抗はなさそうなのに、あの黒い海苔にまず警戒心を持ったようです。
その国では、主食の米を大皿から手でとって小さく丸めて食べるのが作法でしたから、他の人が直接手で握ることに抵抗を持ったわけでもなさそうです。
米を主食とする地域では振り向いてもらえなかったおにぎりだったのに、30年後に、はるか遠いポーランドの女性がお店まで出すようになるなんてなんだか不思議でした。
しかも日本で食べてハマったというのでもなく、インターネットで見つけて、味を想像しながら作ったなんて驚きです。
それまでは食べ物の広がりというのは、人や物が直接出会い、ゆっくり時間をかけてある地域からある地域へと伝わり根付いていくものだとイメージしていました。
あるいは、80年代ごろからの本格的なカレーや90年代のエスニック料理がブームになったのも、海外へいく人が増えて実際に現地で食べたことがきっかけではないかと思います。
そして見慣れない食べ物には、警戒心が起こるのも当然かと。
それなのにインターネットで見て作る、見たことも食べたこともないおにぎりをそれだけで再現させる。
驚異的に変化することの多いなかでも、ちょっと想像ができないことでした。
「食べるということ」まとめはこちら。