水の神様を訪ねる 29 阿豆佐味天神社

残堀川のそばを歩いた時に阿豆佐味通りが阿豆佐味天神社の参道だとわかり、どんな神社なのだろうと検索してみました。

 

Wikipedia歴史が書かれていました。

その中の「阿豆佐味という社名」の由来について、諸説ありとしながらも以下のように書かれていることに、ちょっとうれしく感じたのでした。

湧水(阿豆=甘い、佐=味の接頭語、味=水で、甘い水の意)によるという説 

 

同じ日本語なのに、時代が違うとここまで意味が違うのですね。

「阿豆佐味」から、まさかの湧水にたどり着くとは。

 

水の神様ということで、これは訪ねてみたいと後日また出かけたのでした。

 

砂川から五日市街道に入るとじきに、右手に阿豆佐味天神社立川水天宮が見えました。

「水天宮」は産科ではサラシの腹帯とともに馴染み深いのですが、最近はほとんど尋ねられることもなくなりましたね。

本来は水と子供を守護し、水難除け、漁業、開運、農業、水商売、また安産、子授け、子育てについての信仰のようです。

立川水天宮玉川上水に近いので、水の神様かと思ったのですが、ホームページを読むと安産・子授けの守り神のようです。

 

*狭山丘陵と阿豆佐味天神社

 

殿が谷バス停を降りて、まず二つの須賀神社のうち左手の須賀神社を目指して歩いて見ました。

緩やかに上り坂になり、蛇行する道沿いに子どもたちが遊ぶ元気な声が聞こえてきて、小さな公園がありました。

そのそばを、小さな川が流れています。

 

目指す須賀神社の参道がどこなのかわからず、「マムシに注意」の立て看板に怖気づき、ここを訪ねるのは断念して、阿豆佐味天神社を目指すことにしました。

 

村山貯水池と山口貯水池を訪ねて、狭山丘陵は低い丘陵地帯であることに驚きました。

なんど近づいても、その先に都民の大きな水がめがあることが想像できないほど低いのです。

どうやってこの場所に貯水池を造ろうと考え出したのだろうと、当時の状況に思いを馳せながら、その低い丘陵地帯の山すそ沿いの住宅地と畑のそばを歩くと数分ほどで、あの参道にぶつかりました。

 

狭山丘陵の雑木林を背景に、静かな境内です。

由来を探しましたが、見つかりませんでした。

 

Wikipediaの「阿豆佐味天神社」の「概要」には、「瑞穂町と武蔵村山市のほぼ境界上に位置する古社」と書かれていますから、もともとはここから始まったのでしょうか。

892年(寛平4年)にこの地に創建され、立川の阿豆佐味天神社はその後のようです。

また、立川市砂川町に鎮座する阿豆佐味天神社は、1629年(寛永6年)ののちに砂川村となる地域の開拓に伴い、その鎮守として勧請し、1738年(元文3年)に本殿が造営された。砂川の新田開発を行った岸村(現在の武蔵村山市岸)の村野氏(後の砂川氏)は村山党の後裔を称する。また、小平市小川町の小平明神宮、同市仲町の熊野宮は同じく小川新田の開発を行った岸村の小川氏と、当社の社家、宮崎氏が、岸村に鎮座していた当社の摂社、神明宮と熊野宮を勧請したものである。

 

丘陵地帯の小さな川のそばから集落ができ、1653年に玉川上水ができ、1722年以降の新田開発によって現在の砂川のあたりへと集落が広がっていった当時の様子はどんな感じだったのでしょう。

「砂川」という地名も、水がなかった状況に由来しているのでしょうか。

 

そんなことを考えながら、二つ目の須賀神社を訪ねました。

江戸時代寛政二年(一七九〇年)の創建で、村内悪疫鎮護のため祀られたものです。

今の時代と重なり合いますね。

 

その須賀神社の横にも水の流れがあり、たどると里山民家という保存施設がありました。

狭山丘陵を背に、谷戸の湿地に小さな 水田が作られていたようです。

そしてこうした小さな流れを、残堀川がまとめていたのでした。

 

 

*神社を参拝している人の多さに驚く*

 

私が両親の不合理な宗教観から距離をおいた1980年代は、「結婚式はキリスト教、初詣は神社、葬式は仏教」という八百万の神も超越したかのような宗教の風潮にも困惑していました。

ところが、最近、水の神様が気になって散歩の途中にある神社に立ち寄るようになったのですが、どんな小さな神社でも、時期とか老若男女とかに関係なく、必ずといってよいほど参拝している人と出会います。

あの、神社の前で必ず一礼していた父の姿を思い出すような。

 

自分たちは正しいと思い込む独善性とは対極にある、理不尽さに謙虚になる場所のように見えてきました。

 日本の宗教は「困った時だけの神頼み」あるいは「自分の幸せだけの神頼み」のように感じてしまっていたのですが、もっとひっそりと大事なものがあったのかもしれませんね。

 

地図で見つけた小さな神社から、またさまざまな世界がつながって見えました。

 

 

 

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