散歩をする 493 立会川に侵食された台地を感じながら歩く

目黒川を越えると品川用水が潤していた田んぼがあったあたりから、新幹線の車窓の両側には尾根から谷地までぎっしりと家が建つ風景が何度か現れます。

 

あっという間に通過していくことと、A席とE席でも風景が違うので、舌状台地末端の複雑な地形のどのあたりを通過しているのかいつも見過ごしてしまいます。

最近は海側を見ることができるA席にすることが多いのですが、最初の緊急事態宣言のあと遠出を再開した2020年7月頃は1車両に数人とか20人ぐらいでガラガラだったころに比べると、最近はE席はまず取れないくらいに乗客数も復活しました。

 

2022年7月に西大井駅あたりから立会道路、そして立会川の河口まで歩きました。立会川が暗渠になった道路です。

新幹線の車窓からこの立会道路のあたりが見えるとまた高台の風景になり、次に見えるのは呑川の両岸の風景です。

 

今回はこの立会道路に沿って、E席から見える風景を歩こうという計画でした。

 

 

西大井駅そばの立会道路へ*

 

品川区立豊葉(ほうよう)の杜学園の間の品川用水の跡の暗渠を歩くと、四間通りの交差点に出て右手をまた新幹線が通過していくのが見えました。交差点には古い地蔵堂があり、かつてはどんな風景だったのでしょう。

しばらく高架橋に並行して歩くと地図にはない公園があり、小さな「杜松小學校創立之碑」と彫られた石碑が建っていて、その向こうに新幹線の高架橋がまた見えてきました。品川平和の花壇という公園にはカンナの花が鮮やかに咲いていました。

新幹線と横須賀線の高架橋の下に北側へと杜松地下道が見えますが、「水系と3Dイラストでたどる 東京地形散歩」の3Dイラストの地図と付き合わせると、どうやらその地下道のあたりにかつて品川用水が通っていたように見えます。

 

今回は、地下道を通らずにもう一つ先のガード下まで高架橋の南側を歩くことにしました。

間口の狭いあの京都の長屋のような家々がぎっしりと続いていて、新幹線が住宅の屋根のすぐそばを通過していきます。当日のメモには「かつては水田もあった」と記録していたので、おそらく小さな暗渠を見つけたのでしょう。

 

古い石垣が残るガード下の四間通りをくぐると、その壁に小学生が綱引きをしている絵が描かれていました。

その先に大きな一本の木が残り、線路の南側とはまた違った住宅地が広がっていました。そこから南西へと少し下り坂になっているので、かつての立会川左岸でしょうか。

 

新幹線の高架橋沿いに歩くと、暗渠の水路が住宅地の道として使われていて途中の橋も残っていました。

屋根に隠れて姿は見えませんが、時々静かな走行音が通過していきます。

 

商店街に入りました。立会道路の一本北側の三間通りのようです。

走行音が聞こえるたびに振り向くと、お蕎麦屋さんや花屋さん、焼き鳥屋さんの向こうに新幹線が通過していくのが見えました。

E席からはこんな風景が見えていたようです。

 

 

*立会道路を荏原町駅まで歩く*

 

 

途中で南側へと路地を曲がると、立会道路に出ました。ここでは、真ん中の道路が一段高くなっています。かつての川の堤防の跡でしょうか。

ここから東急大井町線荏原町(えばらまち)駅方面へと立会道路沿いに歩きます。「3Dイラスト」の地図によると荏原台の高台の上を流れる川のようですが、道路の南側が小さな崖のようになってそれを利用して家が建っているのに対して、北側は少し下りのような場所でした。

 

立会川の暗渠を利用した道の両側は公園や住宅の緑があって、想像していたよりものんびりとした道です。

しだいに新幹線の走行音も聞こえなくなりました。

国道1号線第二京浜)との交差点がありその先の立会道路は遊歩道になりますが、横断歩道を渡ると、その遊歩道へは階段で降りるようになっています。

横断歩道から見えた第二京浜は両側が緩やかに上り坂になって、かつての立会川の両岸だとわかりました。

 

遊歩道になると自転車と歩行者の道が分けられているので、ぼーっとのんびりとかつての川の上を歩くことができます。

よく手入れされている木々が植えられて、途中にある特別養護老人ホームの前にはベンチもあって一休みさせてもらいました。

80年ほどのこの地域の風景の変遷を見てこられた方々にとっても、きっと川の記憶が蘇るような穏やかな場所でしょう。

 

歩く人も増え両側にお店が増えてきたあたりで昔の川は北へとぐいと曲がり、そのそばに木と小さなお社がありました。水が溢れないように、そして水が足りなくなりませんようにとたくさんの人が祈ったのかもしれません。

 

15時40分、荏原町駅の賑やかな商店街に出て、今回の新幹線の車窓を歩く散歩が終わりました。

 

お腹も空いたので、ちょうど開いていた中華料理屋さんに早めの夕食と思って入りました。

隣の席で人が寝ている気配がありました。こういう生活の雰囲気も好きだと思いながら、美味しく食べて満足して散歩が終わりました。

 

今度新幹線に乗ったら古戸越川と立会川が侵食した荏原台の地形、そしてそこでの生活の風景を見逃さないように集中しなければ。忙しくなりますね。

 

 

 

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