アドバンス助産師とは 5 <「ALL JAPAN」の取り組みとは何か>

週刊医学界新聞の「今こそ、助産師像を描く必要がある」というインタビュー記事の最後の方に、「"ALL JAPAN"での取り組みを」と書かれています。


2013年7月に出された「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)活用ガイド」にも、この「ALL JAPAN」という表現が使われています。

助産師基礎教育を土台ににし、「新卒助産師研修」を基盤にしながらその後の助産師の実践能力を強化していくためには、施設の枠にとどまることなく、全国レベル(ALL JAPAN)で標準化された方略をもつことが求められている。(p.2)

「ALL JAPANで活用する助産師のキャリアパスとクリニカルラダーの必要性」(p.4)

「全国共通」とも違うのでしょうか?


<クリニカルラダーはどれくらい浸透しているのか?>



2012年に「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」が公表されたわけですが、その後、どれくらいの施設がこれを利用しているのかはわかりませんが、冒頭のインタビュー記事ではこんなやりとりがあります。

ー認証をすすめていくためには、まずは各病院や部署などの組織にラダーが広がっていかねばなりませんね。


福井 その通りです。現状、助産師育成に特化したラダーそのものが普及しておらず、日看協の調査によれば、助産師に特化したラダーを持つ施設は17.1%でした。この実態は課題としてとらえており、今後導入を広く呼びかけていきたいと考えています。


2013年7月に出された「活用ガイド」には「近い将来、全国統一の基準で認証(仮)される仕組みの構築を目指して日本助産実践能力推進協議会で検討されている」(p.5)と書かれています。


「近い将来」がわずか2年もたたないうちに、しかもラダーさえも浸透していない状況で認証制度が始まることは、驚くほど勇み足だと感じます。


何をそんなに急いでいるのでしょうか?


<まずは業務の標準化をするシステムを>


そして全国共通の標準化されたラダーの必要性の前に、助産業務の標準化が先に来る必要があるのではないでしょうか?


以前「助産院は安全?」のブログで、イギリスには全国統一された数百ページにも及ぶ細かい助産業務マニュアルがあって、それから逸脱したことをしないようなシステムがあるという話がありました。



そういう標準化された業務内容が明確にされていれば、どのレベルの助産師も知識のアップデートができますし、途中で出産やその他の理由で助産師の仕事から一旦離れていた人たちも復職するために自己学習しやすいと思います。



あるいは働き続けている助産師も、ひとつひとつの業務の根拠を全国レベルで検証するシステムがないから、してもしなくてもかわらないことに意味や効果を持たせ、自己満足のケアが助産師の中に広がりやすいのではないかと思います。


ホメオパシーや極端な自然分娩志向も、助産師向けの研修として行われてきました。
標準的な業務が明確にされていないから、それが周産期医療から逸脱しているとも認識できないのではないでしょうか。
「創造的な助産実践」という妄想とともに。




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