産後のトラブルを考える 25 感染症拡大時の乳腺炎の対応

未曾有の感染症のしかも世界中への拡大でしたから、ガイドラインを参考にしつつ、まだまだ網羅されていないことがたくさんあるので、今も手探り状態のところが多々あります。

少しひと段落し始めたところで、他の分娩施設はどう対応していたのだろうと知りたいことに、産褥乳腺炎があります。

 

産後1ヶ月前後から、突然、悪寒とともに40度近い発熱が起こります。

夜間休日を問わず、産科病棟への電話相談でも珍しくないものです。

 

産褥熱やインフルエンザなどの有無を電話で除外していきながら、乳腺炎の可能性があれば高熱があっても病棟で対応しています。

だいたいはうまく飲まれていないことが原因なので、しこりができている部分の排乳をお手伝いし、飲ませかたをアドバイスすることで改善されていきます。

できれば発熱し始めたら早めに対応することで、重症化を防ぐことができそうな印象です。

 

ところが、今回に限っては、「その熱はCOVID-19感染ではない」と確定できないので来院していただくわけにはいきません。

電話で飲ませ方、熱やしこりへの対処方法を説明し、改善されなければ「帰国者・接触者相談センター」へ電話をしてもらうしかありませんでした。

それでも、2月14日に厚生労働省が発熱者の相談窓口を設けたことで、こうした対応も一本化できたので助かりました。

 

他の分娩施設でも、やはりこの対応だったのでしょうか。

感染症指定病院の周産期センターや乳腺外科には、こうした乳腺炎の相談が増えたのではないかと思うのですが、実態はどうだったのでしょうか。

 

ふだんなら少し排乳をお手伝いし、直接、飲ませ方を見ながら乳腺炎予防のお話をすることができたのですが、そのタイミングが遅くなることで重症化した方もいらっしゃったのではないか。

あるいは、生活そのものが激変して、産褥期のお母さんたちの生活への影響はどうだったのか。それによって乳腺炎の発症や対応への影響はどうだったのか。

 

周産期看護の分野には、まだこうした症例報告を全国から集めて検討するというシステムがないので、こんな未曾有の事態の大事な記録や経験がまた埋もれていくような気がして残念です。

 

まだまだこのCOVID-19への対応は続いていますし、またもし新たな感染症に対応しなければならない時のために、産褥期乳腺炎にどのように対応するのか、まずは問題点をすくい上げることが必要なのではないかと現場では思うのですが、どこが拾い上げてくれるのでしょうか。

 

 

 

「産後のトラブルを考える」まとめはこちら

新型コロナウイルス関連の記事のまとめはこちら