落ち着いた街 43 香川用水の流れる地へ

9月初旬、家を出る時には久しぶりの雨で24度でしたが蒸し暑く感じました。早朝、秋の虫がリンリンと鳴いていました。やはり秋は来ていましたね。

 

直前になって香川県の地図を眺めていたら、琴電に「水田駅」があることに気づきました。

ちなみに読み方は「みずた」でした。

県東部には「造田」「讃岐津田」「引田」と徳島県境まで「田」がつく駅があります。どんな水田の歴史があったのでしょう。今回は残念ながらそちらを訪ねる時間を取れないのですが。これから訪ねる香川用水東西分水工からの水でしょうか。

すみずみまで水を行き渡らせる、すごい公共性ですね。今回訪ねるそれぞれの場所のテーマともいえるかもしれません。

 

6時40分発ののぞみ5号博多行きに乗りました。自由席、指定席ともに結構乗っています。みなさん、どこへ向かうのでしょう。

 

出発すると霧雨のうす暗い風景でしたが、車窓の風景に集中です。散歩で歩いた場所が増えるにしたがって、新幹線に乗るたびにまた見逃してはいけない場所がつぎつぎと増えていきます。

今回は、新丹那トンネルの真っ暗な車窓にトンネルの上の水田地帯と歴史を思い出しながら過ぎました。2分40秒ほどで通過することもわかりました。

 

トンネルを抜けると雨雲がなくなり、富士山の下側が見え始めていました。

浮島の水田地帯あたりに虹がかかり、まるで虹の中をくぐるように通過していきました。

日本の東西をあっという間に過ぎる東海道新幹線の車窓の風景は、本当にダイナミックですね。

 

9月初旬、すっかり稲刈りが終わった場所もあれば、黄金色の稲穂が重そうな水田もあります。

今まで歩いた場所の風景を確認し、見過ごしていた風景や水路が見えるとすぐに地図と確認してまた記録するので忙しい時間ですが、なんと充実した時間でしょう。

 

*香川用水記念公園へ*

 

そうこうしているとあっという間に岡山駅に到着し、10時5分の南風5号で大好きな瀬戸内海を眺めてこれまたあっという間に琴平駅に到着しました。いつか満濃池や香川用水の歴史をたどりたい、でもしばらく機会はないだろうと数ヶ月前に思ったのですけれど。

 

前回帰宅してから徳島の吉野川から香川へ山を貫いて送水されているのはどのあたりだろうと地図を拡大していくと、山の中に香川用水記念公園を見つけました。

訪ねるには遠過ぎるかなとあきらめつつも地図を眺めていると公園の近くにバス停があり、クリックすると琴平駅観音寺駅を結ぶ三豊市のコミュニテイバスがあることがわかりました。香川県南西部の山間部のため池と水田地帯をつなぐので、車窓の風景を見てみたいものです。

ぐるぐると1時間ほど乗っても100円均一です。この地域のコミュニティバスはどのような歴史があるのでしょう。

 

11時45分琴平駅からコミュニティバスに乗りました。てっきり数人乗りのハイエースだと思っていたら、小型バスでした。

琴平周辺をぐるぐると回るうちに、結構乗車してきます。若い二人連れの女性も乗りました。

平日のこの時間だと買い物や通院の中高年の女性が多いイメージでしたが、老若男女さまざまでした。

 

窓の外に見える側溝には、きれいな水が流れています。どこから来る水でしょう。

少しずつ山あいへと入ると、金倉(かなくら)川の支流でしょうか、けっこう水量がありました。

さらに山の中へと進むのに、国道32号線は車が数珠つなぎといってよいほど交通量が多いままです。少しずつ下りになり立派な黒瓦のどっしりした農家の屋敷や水田の風景があらわれ、財田駅のあたりの起伏がけっこうある集落を上ったりおりたりしながら、また上っていくと戸川ダムというため池を道の駅に整備した美しい公園に停車しました。

 

GPSで地図を追いながら車窓の風景を追っていましたが、地図から想像していた寂しい山間部の農村とは全く違い、静かで落ち着いた街が続きました。

どんな歴史が、こうした街の雰囲気をつくりだしたのでしょう。

 

県道5号線へと入ると美しい財田川(さいたがわ)沿いにしばらく走り、その財田川が大きく蛇行したところにある長野口バス停に12時半ごろに到着しました。

 

 

*雨乞いと雨宮神社*

 

バス停の前には鬱蒼とした鎮守の森があり、雨宮(あまみや)神社がありました。

 

県指定自然記念物 雨宮神社社叢

 

 財田町財田田中にある雨宮神社は昔から農耕に関係深い神様をお祭りして、住民から親しまれており、現在入樋に伝わっている弥与苗踊(県指定無形文化財)の起源もここに由来している。

 植生相として、高木層には、常緑広葉樹のアラカシ、タブノキクスノキ、カゴノキがあり、落葉広葉樹のムクノキ、センダンもコンセイする。亜高木層、低木層には、ヤブツバキ、マサキ、林床にホソバカナワラビが見られる。

 昭和五十一年三月二十三日  香川県

 

 1043年の大かんばつで稲苗の収穫が危うくなった時、村民が雨乞いをしたところ、にわかに恵みの雨が降り始めました。そのうれしさを表現しておどった踊りが今も入樋(いるひ)地区に伝承されている弥与苗(やよな)・八千歳(やとせ)踊りの発祥と言われています。また、大正4年大嘗祭(だいじょうさい)の際、主基殿(すきでん)に献納する筵藁(むしろわら)の御用苗を洗い清めたところで、石碑も建てられています。

 

 

なんと、今回の散歩の最初に訪ねた神社が農耕の神様であり、雨乞いの歴史につながるとは、ほんと神様のお導きですね。

 

 

すぐそばの交差点に「香川用水記念公園、右折1km」の標識があり、徳島との県境の山並みがみえました。

 

 

 

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