新生児のあれこれ  45  <ペットからの人畜共通感染症予防>

ペットを飼っていらっしゃる妊婦さんやご家庭から、「赤ちゃんに気をつけることは何かありますか?」という質問はあることはあるのですが、案外少ないものです。


皆さん、ある程度知識があって気をつけていらっしゃるのでしょうか?
それとも、まるで人間の家族と同じような気持ちになって、気にならないのでしょうか?


では、質問された私はどれだけ知っているかというと、周産期関係の文献では「ペットのいる家庭で新生児に気をつけること」をまとめたものをほとんど見ることがないので、「掃除をこまめに」「手をよく洗う」あるいは「部屋を別にしたり噛まれない、舐められないように注意して」ぐらいしか思いつきません。


でも「兄・姉からの感染」に書いたように、人から人への感染症も新生児では重篤なものになります。
ましてや「こんなことも起こるのか」ということがあります。


you tubeなどの動画で赤ちゃんとペットが一緒に寝ていたり、まるで家族のような姿はほのぼのする反面、感染症は大丈夫なのかなと心配になってしまいます。


特に、ペットのいる家庭に新生児を迎えるにあたって、医療従事者側にはまだまだまとまった情報がない段階なのではないかと思います。


<「乳幼児のいる家庭で『ペットを飼う』」より>


こうした生活に即した情報と言うのは、医学書よりもネット上の方が素早く対応できるところが現代のすごいところかもしれません。(もちろん、どうしようもなくダメな医学情報がまわってしまうデメリットもありますが)


和光堂の「赤ちゃん通信」の「No.23 乳幼児のいる家庭で『ペットを飼う』」が、丁寧な説明ではないかと思いましたので紹介します。


兄・姉からの感染症は人から人への感染ですが、動物から人へ感染する「人畜共通感染症」があります。
トキソプラズマはよく耳にすることでしょうし、妊婦健診の初期検査でも行っています。


その人畜共通感染症について、詳しくわかりやすく説明されています。
「表1 国内で発生する主な人畜共通感染症と発生がない主な人畜共通感染症」をみると、ペットからの感染症がいかにたくさんあるかがわかります。


ただ現実的には全てを怖れる必要はなく、「3.ペットからうつりやすいのはどのような人畜共通感染症でしょうか?」の答えとして、ネコひっかき病、パスツレラ症、オウム病、皮膚糸状菌症の4つがあげられています。


感染症ではないのですが、こんなことも起こるのか・・・と驚いたことが、「4.ペットとして選んだ動物は適切でしょうか?」の中にありました。
「冬の寒い時期に大きなネコがあたたかな赤ちゃんの上にのって寝たために赤ちゃんが窒息した」という事件があったことが書かれています。


大きなネコということですからある程度年齢のいったネコでしょう。
前回の記事で書いたような「年のいった犬やネコは、赤ちゃんを見守るような行動をするようですよ」なんて、個人的体験談に基づく話をしてはいけないとヒヤリとしました。


<「ペットと子どもたちが健康に暮らすには」>



そのサイトにある「ペットと子どもたちが健康に暮らすには」は、とてもまとまっていて参考になるのではないかと思います。
文章を簡潔にして、ポイントを紹介します。

1.野生動物はペットとして飼育しない
2.動物に触れたあとでは手洗いを励行する
3.飼育動物の排泄物を室内に放置せず、すぐに処理する。処理したあとは必ず手を洗う。
4.飼育動物に口移しで餌を与えないなど、動物との接触を節度あるものにする。
5.飼育動物を定期的にシャンプーしたり、ブラッシングしたりして、皮膚の清潔に留意する。これにより、皮膚糸状菌症やノミ症などが予防できる。
6.飼育動物に調理された餌や既製のペットフードを与えたり、小動物を捕獲して食べさせることを止めさせる。

どこまで厳密にするべきかという境界線は、まだまだあいまいかとも思います。


たとえば、日々医療現場で「一処置一手洗い」が体に染み込んでいるので、私は少しでもネコや犬に触ったらすぐに手を洗わないと気がすまないほどです。
本当はネコや犬が大好きなのですけれどね。


でも、日常の生活ではそこまでは必要ではないことでしょう。
おおよその目安ということで、取り入れていただければよいかと思います。





「新生児のあれこれ」まとめはこちら