産後ケアとは何か 24  <出産後の女性の継続的なケア>

しばらく産後ケアや産後の排泄のトラブルの話題から離れていました。


「産後のトラブルを考える」と「産後ケアとは何か」という二つのタイトルが同時に進んでいるのでわかりにくいと思いますが、今回はこちらでまとめた産後ケアの続きです。


「産後ケアとは何か」でみてきたように、産後の女性に十分な休息が必要ということが保健衛生的な知識としてひろがってたかだか半世紀ほどであり、それを可能にしたのは経済状態や食糧事情がよくなったからといえそうです。
「昔は大切にされてきた」というのは、イメージでしかないかもしれません。


さらにこの半世紀で医療を誰もが受けられる時代に入り、妊娠・出産を機に妊娠中毒症(妊娠高血圧症)や出血、感染などが原因で亡くなることが本当に少なくなりました。


では次の時代はと考えると、出産後の女性の継続的なケアではないかと思うのです。


<産後の女性を継続的に見守る体制がない>


生まれた赤ちゃんは1か月健診後も予防接種や乳児健診で見守られている体制がありますが、お母さんたちの中には産後健診のあとは医療とは縁が遠くなってしまう方々も多いのではないかと感じています。


もちろん不調があれば受診されると思いますが、それさえも赤ちゃんを預けられなければ我慢してしまうこともあるでしょう。


定期的な健康診断を受ける方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
眠れないのも、疲労感が強いのも育児中だからしかたがないこととそのままになっているのではないでしょうか。


そればかりか、妊娠・出産を機に抱えた心身の不調さえもそのままになっている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。
また、今まで紹介してきたさとえさんやあおばさんのように、出産を機に健康上の問題を抱えた方が継続して相談できるような窓口もほとんどありません。


それぞれの分娩施設などで個別に対応しているところはあるのでしょうが、基本となる考え方や対応方法もまちまちなのが現状ではないかと思います。


妊娠・出産までのサポートはこの半世紀だけでもかなり手厚いものになりましたし、ここ20年ぐらいは産後うつなどの産後のサポートの体制も一部は整ってきました。


<産後の女性の健康上の問題は社会の問題>


ただ、産後の女性の健康上の問題はまだ「私的領域」のままなのかもしれません。


「妊娠・出産は病気ではない」というイメージがそのまま「産後も病気ではない」となって、本当は妊娠、出産、産後は女性にとってさまざまな不調をもたらす機会であることさえ認めたがらない社会の力のようなものがあるのかもしれません。


水汲みやら女性が家事労働の重要な担い手であった時代には、「妊娠・出産は病気ではない」と言いたくなる人も多かったことでしょう。


女性には自然に産める力があるのだと信じたかった時代には、「妊娠・出産は病気ではない」と信じたかったことでしょう。


医療・社会福祉関連の支出を抑えるために、「妊娠・出産は病気ではない」と主張したい人もいることでしょう。


大半の方が大きな問題もなくこの妊娠・出産を過ぎます。
そこで不調を抱えた方のほうが少数で、「自分がなにかいけなかったから」「自分が不運だったから」と自分の問題として納得させようとしているのではないかと思います。


本当はそういう方にこそ、本質的な産後ケアのニーズがあるはずだと思います。


そういう声を社会の問題にしていくしくみには、どんなものがあるのか次回からしばらく考えてみようと思います。





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