世界はひろいな 20 <女性の体は誰のものか>

「母乳のあれこれ」はまだ続くのですが、母乳について書いていると力がはいっちゃうので一休み。
といっても、やはり力が入った記事ですみません。


今日は思いっきりジェンダーっぽいタイトルですが、先日、テレビ東京「所でナンじゃこりゃ!?」という番組を偶然観て、「ナンじゃこの番組は!」と思ったのでした。


インドのある少数民族の独自の風習で鼻に木の栓を入れている女性を後ろから追いかけ、その顔を観てレポーターが「ナンじゃこりゃ」と驚き、その映像をみて出演者も驚くというものです。
その瞬間にチャンネルを変えようと思いましたが、何故、そういう風習ができたのかを知りたかったのでぐっとこらえて観ました。


70代ぐらいの方でしょうか。
「私たち部族は昔から美人が多く、他の部族に略奪されないために子どもの頃からこうして鼻に栓をして、わざと醜くしている。美人であればあるほど、鼻の栓は大きい」。
1970年代には政府が禁止したので40代以下の女性はしていないことに対してどう感じるかという質問には、「これは私たち部族の伝統だから誇りを持っている」と答えていました。


<「女性の刺青とノーズフラグ」>


その部族はインドのアバタニ族で、検索するとけっこうその地を訪れた人の話が見つかります。
「西遊旅行社」の「インド北東部諸州ナガラント、アナレナチャール・プラデーシュ  極東インドに残る驚きの文化と風習」にその地域の状況がわかる説明がありました。
(直接リンクできないようなので、「インドの旅」からたどってみてください。)

インド北東部諸州とは
東はミャンマー、北は中国・チベット、西にブータンバングラデシュに囲まれた、インド本土から取り残されたかのような場所に位置するインド北東部諸州。
1947年8月、インド、パキスタンが英国から独立。その際に、東パキスタン(現バングラデシュ)がこの地を自国に併合すべく、多くのベンガル人ムスリムを送り込みました。最終的にはインド政府にとっては4カ国と国境を接する自国を守るための大切な地。

この一文を読んだだけでも、歴史に翻弄されて来た地域や少数民族の様子が思い浮かびます。
私が一時期住んだ東南アジアのある地域も同様でしたし、タイ国境付近、あるいはベトナム国境付近など、少数民族と呼ばれる人たちが近代国家に取り込まれていく半世紀でした。


そういう地域は、よほど「観光化」の道を選んだ地域でない限りは、中央から見えれば辺境の地です。

アルナチャール・プラデユーシュ州、ナガラント州はインド政府が外国人の入域を制限しているため、原則として4名以上の団体か、結婚している夫婦単位でないと入域許可がおりず訪問できない。

そこまで訪れることが難しい地域に出かけて「豚鼻おばさん」と嘲笑するのは、よほど現代の歴史に無関心だからできるのかもしれません。(ちょっと黒)


せめて「ノーズフラグ」と正しい呼び方で伝えてほしかったと思います。

<女性の刺青とノーズフラグ>
アバタニ族の女性で、40歳以上の方は鼻に穴を開け黒い栓をして、額から鼻筋に一本、そして顎に3〜5本の刺青をしています。これは、女性が他の氏族に奪われないように敢えて醜く見せるためといわれており、1980年頃まで行われていた習慣です。


たしかに、旧約聖書の中にも戦いの場面では家畜や宝石だけでなく奴隷や女性、子どもも略奪されていく場面があります。
現代に至るまで「女性は戦利品」にされているわけで、この理由にも一理あるのかもしれません。


<女性の体は誰のものなのか>


小学生の頃に、中国では女性が逃げられないように纏足(てんそく)を施されていた時代があったことを知り、女性として生きていくことの暗闇を覗いてしまったかのような気持ちになったことはこちらに書きました。


その後、1980年代初めの頃、アフリカの救援活動に関心を持って調べていた時に、アフリカの一部の地域で行われている女性器切除を知って戦慄したのでした。
当時はまだ「女子割礼」と呼ばれていましたが、男児に行う割礼とは似て非なるものです。


1980年代から90年代は、東南アジアの少数民族に関心がでていろいろな旅行記や文献を読みました。
少数民族のきらびやかな民族衣装や装飾品は、それぞれの民族の歴史や文化、そして民族の誇りが感じられてこちらも惹きこまれます。


ただ、北タイの山岳少数民族首に金属の輪をいくつもはめて、首が長い方が美しいという風習には、このノースプラグと同じ気持ちになります。
おそらく、その少数民族の女性も「自分たちの民族の伝統に誇りを持っている」と答えることでしょう。


でも、体の一部を強制的に変えさせられた女性は、その社会でしか生きて行けないことでしょう。
略奪されないためという大義名文で、実はその社会の男性からも逃げられないのですから。




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