生活のあれこれ 77 海岸線で生活をする

遠出をすると、どうしてもその地域で見たテレビ番組の記録が多くなるので、また寄り道をしてしまいました。

 

今回の2日目はまず、越前海岸をバスの車窓から散歩をします。

 

遠出をし始めた2019年ごろは、海岸線を走る鉄道に乗ってみたいと計画ができました。暇さえあれば地図を眺めていますから、日本の海岸線の長さやさまざまな形に目が引き寄せられます。

実際に乗ってみると、日本海側のように風や雪が大変そうなのに海岸すれすれに鉄道が通っていることに、なんとも畏敬の念が強くなりました。そしてトンネルを抜けるたびに、海辺に集落があることが印象に残りました。地図で想像していた「寒村」というイメージとは違い、どっしりとした家々があり落ち着いた街で、「力強く生活している」という感じ。

そしてここにも水田が健在です。どなたが水路や田んぼを維持していらっしゃるのでしょう。

 

しだいに実際に歩いてみたいと思うようになり、能登半島舞鶴を訪ねたときのように、鉄道だけでなくバス路線での計画が増えました。

以来、地図で海岸線を眺めては鉄道やバス路線を探して、日本中の海岸線を見てみようという無謀な計画も密かに進行中です。

 

2日目の朝、「日本縦断こころ旅」の再放送をしていて、火野正平さんが青森の海岸線を自転車で走り、途中、何かの工事をしている人と海辺で気さくに話しをしていました。

海岸線の集落、そこではどんな生活や仕事や歴史があるのだろう。知らないことばかりです。

まさに、この日にふさわしい番組を見ることができたと出発しました。

 

 

日野川沿いを越前海岸へ*

 

年々好きになってきた水仙を検索しているうちに、越前海岸の水仙を知りました。どうやってその有名な場所まで行くのだろうと地図を眺めていると、海岸線には小さな集落がいくつもいくつもあり、そしてバス路線があることがわかりました。

「越前ブルーライン」、わくわくする名前ですね。水仙の季節ではないけれど、この海岸線を見てみたいと思っていたことが叶いそうです。

 

福井駅前から10時13分に出発する越前ブルーライン下り線に乗りました。

駅前では恐竜がのんびり動いていて、路面電車が走り、ほどほどの人でゆったりとした朝の風景です。

大名町、城下町と幹線道路沿いでも建物も車もほどほどです。なんで東京はあんなにごちゃごちゃになちゃったんだろう、90年代でもまだ23区ではあちこちに畑が残っていてゆったりしていたのにと思い返していると、町屋風の家が増え、少し低地になり田んぼが増えてきました。

 

橋を渡り、九頭竜川左岸に入りました。ゆったりと蛇行しながら流れる川面が美しく、木陰に白鷺が休んでいます。西側の丘陵と九頭竜川との「羽」の地域には広い水田地帯が広がっていて、このあたりもかつて4世紀末ごろは湖だったのでしょうか。

 

田んぼの一角に何か水道施設があります。臨海工業用水の施設でした。ここから北西へ5kmほどの福井港の周辺の工業地帯へ送水しているのでしょうか。

大きな病院と手前に医療大学がありました。地域医療を担うであろう学生さんの姿が見え、四十数年前の入学式の記憶が思い出されました。半世紀後、日本の医療はどんな形になっているでしょう。

 

大学横の用水路はきれいな水が流れ、稲刈り後のひこばえの緑と美しい風景です。何かの沿革が刻まれた石碑がありました。下車して読んでみたいという衝動にかられながら、通過する時に「圃場整備」の文字が見えました。

沿道に美しい集落とそばの花が咲いています。西側の丘陵地帯へと上り坂になり山あいのような場所を走ります。少し高台に田んぼがあります。ほんと、どこでも水田は健在ですね。

美しい家々と落ち着いた集落が続き、柳原バス停あたりから下り坂になると、海が見えてきました。

 

*越前海岸をバスで走る*

 

松林の向こうに真っ青な海が時々見えます。国道305号線が「越前ブルーライン」と呼ばれているのでしょうか。ところどころ沿道によく手入れされた花壇が見えました。

 

数人乗っていたバスでしたが、いつの間にか私一人になりました。

ためらうことなく写真を撮り始めました。

黒っぽい瓦屋根が美しい福井の家が、真っ青な海と空によく映えています。海岸ギリギリのところに田んぼがあり、ここも無事に収穫を終えたようです。こんな美しい海を眺めながら田んぼで作業するなんて、うらやましいですね。

道が蛇行するたびに、穏やかな海と岩場が多く白波が立っている海岸と、息つく間もないほど景色が変わって行きます。

 

丘陵地帯が急峻な山になり、その麓のわずかな場所にも家が建っていました。

侵食された岩が広がる海を眺めているとトンネルに入り、抜けると今までより平地が広がる蒲生地区に入り、終点の波の華温泉バス停に到着しました。

そばに公園があり、しばらく海を眺めました。広大な景色を独り占めです。

ここは遠浅なのに、海岸に波がぶつかるたびに白波が上がっています。

ああ、だから「波の華」なのですね。

 

三国港方面に向かうために同じバス路線で少し戻るのですが、時間があるので次のバス停まで700mほど蒲生地区の街を歩いてみましょう。

高い防波堤に囲まれた茱崎(ぐみざき)漁港はお昼時で静かですが、漁港を眺められるようにベンチがあるのがすてきです。

週末には観光客が訪れるのでしょう、カフェやアイスクリーム屋さんのおしゃれな建物もありました。

 

一本、山側のバス通りへと入ると、古い木造の家屋が続いています。こんなに潮風や雪にさらされる地域なのによく手入れされていて、道もごみ一つ落ちていません。

氏神様でしょうか、まるでお城のような石垣の上に真っ黒な瓦のお社が鎮座されていました。

いつ頃からの、どんな歴史と生活がある街なのでしょう。

 

ここまで晴天だったのに、北西の山には黒っぽい雨雲がかかり始めました。

日本海側の天候は、ほんと、変わりやすいようです。

 

先ほどの運転手さんのバスが到着し、私一人を乗せて、来た道を再び走り出しました。

1980年代頃まで女性は一人だとどこにも行けない時代で、修学旅行で訪ねた東尋坊のような海岸沿いをよそから来た女性が一人で歩くなんてあり得なかったと思い出しました。もしかしたら、現代でも地元の方には心配させてしまうでしょうか。

暴漢への心配だけでなく、人生を悲観しているかのように見られやすいでしょうか、女性ひとりだと。

 

越前海岸はこの先で大きく「くの字」に曲がったあと、敦賀までまだまだ続くようです。ここまででその3分の1ほどでしょうか。

すべての海岸線と集落を見てみたいものです。

 

日本の海岸線というのは、こうした厳しい地形や天候に忍耐強い集落が守り続けて来たのだと思うようになりました。

 

 

*おまけ*

福井駅から波の華温泉まで約1時間20分ほどですが、ICカードが使えるので料金を確認し忘れました。

検索するとAIが教えてくれました。

福井駅から「波の華」(越廼(こしの)地区)へのバスは、京福バスが運行する越前海岸ブルーライン(旧鮎川線・越廼線)でアクセスでき、福井駅東口から乗車し、福井市中心部を通り越前海岸方面へ向い、「波の華」停留所が目的地の目安です。料金は「越前ブルーライン」として上限が運賃が設定されており、以前は1,190円でしたが、現在は700円(上限)に値下げされています

なんと、この時代に公共交通機関の料金が値下げされることもあるのですね。これは助かりますね。ほんと、生活の中で交通費は高いですからね。

いくつのバス停だったのか数えたら、なんと75箇所も通っていました。

観光目的というよりは、それだけの集落の生活をつなぐ公共性による値下げでしょうか。

 

 

 

 

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