記録のあれこれ 129 「大規模漏水から8週間」

車窓からの矢作川右岸の水田地帯は、他の地域となんら変わらないように見えました。

 

もしかすると今年はこの風景を見ることができないかもしれなかったのですから、水田を維持するというのは水の管理から天候まですべてがかみ合ってできることで、無事に収穫し、そのお米を食べることができるというのは「奇跡」に近いことだという思いがますます強くなりました。

 

5月以降、すみずみまで無事に水が行き届きますように、復旧工事で事故が起きませんようにと思いながらニュースを追っていました。

 

7月12日付のニュースに、ひとまず安堵しました。

大規模漏水から8週間、続く対策工事 明治用水頭首工をドローンで撮影

 

 愛知県豊田市の取水施設「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で大規模な漏水が確認されてから8週間が経った7月10日、復旧作業が続いている現場をドローンで撮影した。右岸側の取水は安定的に確保されている一方、左岸側はまだ漏水が止められていない様子が上空から見て取れた。

 

右岸側は水位上昇し安定的に取水

 頭首工は豊田市を南北に流れる矢作(やはぎ)川を堰き止め、並行する明治用水に取水するための施設。平年は右岸側から毎秒約20トン、左岸側から同約13トンを取水し、農業用水や工業用水に利用している。

 

 施設を所有する東海農政局は5月15日に左岸上流側で漏水を確認した。漏水していると思われる所に砕石を投入したがうまくいかず、その後はむしろ漏水範囲が拡大。通常通りに取水を行うことが困難になってしまった。

 

 対策工事として、農政局などはコンクリートの頭首工から上流数百メートルにある「旧頭首工」周りに土のうを積み、さらに鉄の矢板を打ち込んで導水路を確保。この結果、6月22日から右岸側の水位が上昇し、本来の取水口からも水が自然に取り込めるようになり、ポンプと合わせて毎秒約13トンの取水を確保した。

 

 ドローン撮影したこの日(7月10日)は前日の雨で川が増水し、矢板の上部まで水が満たされていた。下流側は堰で調整された水が勢いよくあふれ出していた。

 

左岸側は漏水状況の調査や対策工事続く

 一方、漏水が発生した左岸側では、状況を確認する調査や水の流入を止めるための各種工事が続いている。

 

 農政局の6月の調査では、川と並行する「魚道」の下に、深さ2メートルほどの空洞ができていたことが確認されている。また、魚道の側壁下部の隙間から水が流出していることも分かった。その下の土砂が落ち込み、下流までの水の通り道ができる「パイピング現象」が発生したと見られている。

 

 ドローン撮影では、側壁に調査用の穴が何箇所か開けられ、下部に複数の亀裂が入っている状態などが確認できた。

 

 隙間をふさぐために砕石を投入したり、薬液を注入したりしたというが、この日は水流が強いこともあり、まだかなりの水が流れているようだった。堰を挟んだ下流域でも水が噴き出しているような様子が確認できた。

 

 東海農政局によると、今後は漏水箇所を取り囲むように打ち込んでいた矢板の周囲にコンクリートを打ち、水の流入をくい止める予定だという。一連の対策工事の完成は7月下旬を見込んでいるという。

 

YAHOO!JAPANニュース)

 

専門的なことはわからないのですが、あの取水堰からみた水量を思い出すと「神業のようだ」と圧倒されます。

現場で作業される方々も、農政局をはじめとして重大な責任と判断を負う方々も、重圧の毎日だったことと想像します。

 

医療現場であれば一生に一度あたるかどうか。遭遇してしまった運命を呪いたくなるような事態に重ねて、胃が痛くなるような思いでニュースを追っていました。

 

30年ほど前ならまだまだ技術的に無理と社会も受け入れていたことも、より正確により安全に理想が実現するような方法で遂行することが求められる時代に急速に変化しました。

こんな「神業」のように対応しても、事故無くして完遂して当たり前と思われてしまうどころか批判も浴びる可能性があるのが現代かもしれませんね。

 

 

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