生活のあれこれ 16 生活の中の色彩

数年前に葬儀にでも行かれるかと思うほど全身が真っ黒の服に身を包む人が増えたことを書きました。

最近はさらにその度合いが増して、この冬は電車から一斉に吐き出される人の中で黒っぽい服でない人の方がごくわずかに見えます。

 

どうしてこんなに黒を好む社会になったのでしょう。

40年ほど前は、コムデギャルソンとかDCブランドを好む人のごく一部の色だったのですが。

 

そういえば楽しみにしていた「科捜研の女」が、全体に黒の色調になっていました。

以前だったら現場にさっそうと出かける科捜研のスタッフの姿に事件解決の希望を感じてちょっとワクワクしていたのは、もしかしたらあの色鮮やかなジャンパーも効果があったのかもしれないと思うほど沈んだ色調でした。

マリコさんだけでなく出演者全員がモノトーンのような服になり、画面もなんとなく薄暗くなってしまい、日頃からドラマや小説の中の人物や人間関係を覚えるのが苦手な私は今シリーズではストーリーがほとんど頭に入らなくなりました。

けっこう、登場人物の特徴のある服や色が記憶に残る鍵だったのかもしれませんね。

 

そんな生活全体の色調が暗い社会の中で元気に存在をアピールしているのが、ゆるキャラとかアニメやゲームのキャラクターですね。

通勤途中の道から電車の中まで妄想の世界の主人公が跋扈しています。

以前は電車内の広告がディスプレイ式になってスッキリしたと思ったのですが、最近はそのディスプレイでは早朝から夜遅くまで、色鮮やかなキャラクターが現実的ではない動き方でこちらに何かを宣伝し続けています。

駅のコンコースも最近は太い柱に埋め込み式のディスプレイが増えて、同じ派手な動画が何本も何本も続いているところがあるので、行き先案内の表示や色がわかりにくくなるほどです。

 

反対に、生きている人たちの疲れ切った黒い集団はまるで広告を引き立てているかのようですね。

90年代ごろまではもっと色々な色彩が、現実に生きている人の生活の中にあった記憶があるのですけれど。

 

ところで、このところ奈良を訪ねるようになって木目だけの質実剛健なイメージも少し違うことがわかるようになりました。

水田の向こうに朱色の大極殿院が現れた時に、奈良にもこんなに鮮やかな色調があったのかと驚きました。

絵図に残る服装を見てもさまざまな色の服や装飾品が使われているようです。

 

当時の宮廷外の人たちの生活にはどんな色があったのでしょうか。

何かを引き立てるために色を抑えた時代でなければいいのですけれど。

 

なぜ今の社会はこんなに黒い色調なのか、私の気のせいでしょうか。

 

 

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