米のあれこれ 133 コメ現物市場「みらい米市場」

昨年夏にいきなりお米の価格が上がり始め棚からも消えてしまった時に、どうやってお米の価格が決められてどんな流通なのか全く知らなかったことを痛感しました。

その時にこちらの記事で引用したNHKのニュースにあるように、「主食用のコメの価格をめぐっては、JAなどの集荷業者と、卸売業者の相対で決まるのが主流」で、それに対して現物を扱わない「コメ先物取引があることを知りました。

 

*「現物市場開設」と「先物取引の必要性」*

 

最近、時間ができたのでコメ先物取引の議論の歴史を検索していろいろなニュースを読んでいます。

その中で、こんな記事を見つけました。

 

堂島取引所、コメ先物の本上場を申請 市場復活なるか

(2024年2月21日 ニッキン)

 

 「コメ先物市場復活」への議論が動き出した。堂島取引所は2月21日、農林水産省経済産業省に対し、米の指数先物商品の上場認可を申請。両省の審査を経て、6月にも認可結果が通知される。コメ先物市場の歴史は、2023年11月に取引終了となった新潟コシEXWをもって途絶えていた。足元で米の現物市場が誕生し、リスクヘッジの手段として先物取引の必要性が高まっていることが、本上場申請の背景にあるようだ

 同取引所は、認可された場合、新たなコメ先物市場を開設する。農水省が毎月公表する米の相対取引契約の平均価格をもとに算出した指数先物商品を組成し、同市場に上場させる考え。組成する商品の詳細は、正式な認可をもって公表する。市場参加者は、卸売業をはじめとした実需者や商品先物取引業者などが想定されている。同取引所の担当者は、「トレードの世界の中で我々が指標を提示することで、日本の米を世界へより広げることに貢献できる」と話す。

 

本上場不認可で上場廃止の過去

 

 同取引所による米先物取引の本上場申請は、21年7月以来となる。当時、大阪堂島商品取引所(現堂島取引所)は、「新潟コシ」など5銘柄を期限付きの試験上場で取引していた。取引継続には試験上場期間の延長申請が必要だったが、延長申請せずに本上場申請一本にかけた。

 恒久的に取引できるようになる「本上場」の申請は過去2回にわたり不認可となっていた。所管の農水省からは取引量の少なさが指摘されていたが、21年6月の1日平均出来高は約6000枚と過去最高を記録。当時の中塚一宏社長は、「認可されない理由がない」と自信を示していた。

 だが、同省から告げられたのは、「不認可」の通知。意見聴取の場では、取引量は基準を満たしたと判断されたものの、取引に参加する業者が伸びていないことなどが指摘された。結果として、試験上場で取引していたコメ先物銘柄は上場廃止の道を歩むことになった。

 

現物市場開設は追い風になるか

 

 今回、堂島取引所が本上場申請に踏み込んだ背景には、米の現物市場の存在がある。23年10月、オンライン上でオークションや価格交渉を通じて売買できる「みらい米市場」が開設。農協などを介さずに米が取引できる現物市場の出現により、先物取引の必要性が高まった。21年7月の本上場申請時とは異なる環境が、認可申請を後押しする材料となったようだ。

 農水省は24年1月、「米の将来価格に関する実務者勉強会」の取りまとめを発表。現物相対取引や現物市場取引と先物取引などを組み合わせて活用することで、「各事業者が将来の価格変動に対するリスク抑制を行う場合の選択肢が広がる」と明記した

 坂本哲志農林水産相は2月6日の記者会見で、同取引所から上場申請があった場合、「十分な取引量が見込めるか、生産・流通を円滑にするため必要かつ適当かといった点について、慎重に判断をしていかなければいけない」と述べた

(強調は引用者による)

 

コメの現物市場開設のために、現物を扱わないコメ先物取引が必要になる。

その目的は、国民の日常生活のためというよりは「日本のコメを世界へ広げる」ため。

 

私の理解を超えているのですが、こういう経緯で、一旦「完全撤退」としたコメ先物取引が、昨年8月に本上場されたのだと私の年表が少し正確になりました

 

 

*みらい米市場「際立つ取引低調ぶり」*

 

「23年10月、オンライン上でオークションや価格交渉を通じて売買できる『みらい米市場』が開設。農協などを介さずに米が取引できる現物市場」はどんなものなのだろうと検索すると、1年後にはかなり厳しい評価が書かれていました。

 

「市場として機能していない」 コメ現物市場「みらい米市場」開設1年 際立つ取引低調ぶり

(2024年10月17日、産経新聞

 

 コメの売り手と買い手がオンラインで取引する現物市場「みらい米市場」が開設されてから16日で1年を迎えた。しかし、この間に成立した取引は20件にも満たず、目標から乖離した低調ぶりが際立つ。今夏のコメ不足で十分な量のコメが出品されなかったことが主因ともされるが、専門家からは「市場として機能していない」といった厳しい指摘も聞かれる。

 

成立取引は目標の1%

 

 みらい米市場は、公益財団法人「流通経済研究所」を中心にコメ卸大手など16社が出資して開設された。JAグループなどの集荷団体と卸業者などの相対取引で決まることが多いコメの価格形成を透明化するため、生産コストではなく需給に応じた価格指標の構築を目標に、農林水産省が開設を主導した。取引は専用サイトを通じ、生産者などの売り手が最低価格や期限を決めてコメを出品し、卸・小売業者や外食産業者などが入札して購入する仕組みを整えた。

 市場開設当初は、約50の事業者が取引に参加するなど順調な立ち上がりを見せていた。ただ、市場参加の登録事業者数がこの1年間で190を超えたものの。初年度(法人を設立した令和5年8月〜6年6月末)に成立した取引はわずか12件(約200トン分)。6年10月16日までの成立分を合計しても20件に満たず、初年度の取引量は目標に掲げた2万トンの1%程度にとどまった。

 肥料などを極力使わない「特別栽培米」が1俵(60キログラム)2万〜2万5000円程度と一般的なコメの相対価格よりも4000円〜9000円も高く売られ、売り手と買い手のニーズが合致しないケースも目立った。低迷した原因として、市場の折笠俊輔社長は「今年の米不足でコメ需要が急増し、この市場に出回るコメが不足した」と説明する。「自治体などからコメのテストマーケティングとして、みらい米市場を活用したいとの問い合わせもある」と強調し、巻き返しを図る考えを示すが、公転の材料が乏しい状況に変わりはない。

 

コメ現物市場「必要性ない」

 

 なぜ、市場は機能しなかったのか。宇都宮大の小川真如助教(農業経済学)は、政府が強く関与する生産調整が根本的な原因だと分析する。小川氏は「生産調整によって米は基本的にすでに需給調整した状態で作られており、みらい米市場が目指す(需給に応じた)新たなコメの価格指標・相場の構築は難しく、不整合な部分がある」と説明する。

 小川氏は江戸時代のコメの現物市場と異なり、「売り手と買い手が自然と集まりたくなる場所になっていない」と、その"必要性のなさ”も訴える。「少量取引では、わざわざ取引量が少なく実績に乏しい『みらい米市場』に頼らなくても、より信頼できる取引手段が他にもある。大量取引では、そもそも現在の相対取引に対する優位性が見出せない」と厳しく指摘する。(西村利也)

(強調は引用者による)

 

 

 

*今までは夢のような主食の安定した取引手段だったのだ*

 

 

私はそんなグルメでもないので、そこそこの値段のお米を買っていた時もほぼハズレがなく美味しかったし、最近はもっぱらパックご飯で、有名なメーカーでもなくPB商品ですがほんと美味しいです。

何よりも、非常時でもお米を探し回って農村まで買い出しにいかなくても、近くの店頭に年中安定した価格で在庫もほぼ途切れることなくあったし、さまざまな価格帯の国産米を自由に買えたこと、そしてJAを通さなくても直接農家さんとやりとりしたい人たちのための自由もできた、なんとすごいことでしょう。

そしてわずか30年ほどで、海外産のお米も普通に見かけるようになり、消費者のさまざまな選択ができるようになっていました。

あとは、農業から安定した収入を得られるように、そしてどの国の生産者も輸出入のシステムの中で搾取されないように国民みんなで知恵を出し合うことでしょうか。

私たちの生活の根幹である食糧を生み出す仕事ですからね。

 

この1年間で色々とお米の流通を勉強するようになって、生産から冷温保存、加工そして流通まで、本当にすばらしいことが実現していた時代だったのだとしみじみ感謝が湧いてきました。

 

「政府が強く関与する生産調整が(みらい米市場が機能しなかった)根本的な原因」と書かれていますが、それはすでに「より信頼できる手段」で生産者から消費者までつながっていたからではないか、そう思えてきました。

 

必要とされていなかったのに、なぜか農林水産省はこの現物市場を開設し、そのために「先物取引の必要性が高まった」と本上場を認めた。

誰もこれに触れないし、責任も追及しようとはしないのも腑におちないですね。

 

 

今までの夢のようだった安定したお米の流通手段を失うことなく、さらに生産者の方々にもきちんと対価が支払われる方法があれば良いのに。

失って初めて知ることになっているような、そんな昨今ですね。

 

 

 

 

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