これはないと思う  「助産雑誌 9月号」

2012年5月10日の「助産師の世界1 <助産師に感じる違和感>」http://d.hatena.ne.jp/fish-b/20120510からだいぶ間が空きました。
タイトルではなく、「助産師の世界」をカテゴリーにして続編にすることにしました。


助産師向けの雑誌には、医学書院から出版されている「助産雑誌」と、メディカ出版の「PERiNATALCARE」(ペリネイタルケア)の2誌があります。(「i」は小文字)


後者の雑誌は、周産期医学に基いてどう助産を展開していくかという視点が明確な雑誌です。
それに対して助産雑誌は「助産師とは」「出産とは」といった観念的な側面を強く感じる雑誌です。
また助産院や自宅分娩をかなり積極的にとりあげている雑誌でした。


「自立している助産師」のモデルとして開業助産師の妊産婦さんへの対応のコツを記事にした内容も過去に多くありました。
正直なところ、その内容を読んでも「それはある程度経験を積んだ助産師だったら当たり前」としか思えないものや、反対に根拠のない代替療法の考え方で対応していることを画期的であるかのように紹介することも多いので、学ぶことが少ないというよりも現場への影響が気になっていました。


定期購読するほどの魅力はなかったので立ち読みするぐらいでしたが、2010年からはしばらく購入しました。
助産院の食事」というシリーズが始まったからです。
それに対する批判は、doramaoさんが「とらねこ日誌」で書いてくださいました。
助産の専門誌で堂々と玄米菜食が掲載されていました」
とらねこ日誌、2010年2月11日http://d.hatena.ne.jp/doramao/20100211


このシリーズの影響は大きかったのではないかと思います。
当時、助産院のHPでマクロビを掲げているところはほんとうに珍しかったのですが、現在ではちょっと調べただけでも十数か所になっています。


助産雑誌は、2000年に入ってから代替療法の特集でホメオパシーも肯定的に掲載したことがあります。
2010年に助産師がビタミンケイツーシロップの代わりにレメディを与え、結果、脳出血で乳児が死亡したことがニュースになりました。
その年の8月にはホメオパシーに対する学術会議会長の談話が出されました。
それを受けた記事を期待して待っていましたが、ホメオパシーに関する記事は書かれませんでした。
もう読むべきものは何もないと、また購読を止めました。


最近は多少編集方針が変ったのか、病院での出産やハイリスク、あるいは予防接種の啓蒙の重要性など、本来の助産師の仕事に沿った内容が増えてきた印象はあります。


先日、助産雑誌9月号を書店で手にとったところ、「事例検討から学び活かす」という特集で興味を持ったので買ってみました。


その感想が、「これはないよなぁ、助産雑誌」というものでした。


自宅分娩から嘱託医への搬送例、そしてなんとあの吉村医院での事例検討も載っています。
今までは「助産所や自宅分娩は危険なことはないの?」と疑問に感じても、そういう事例報告を私たち助産師でさえ知る機会がほとんどなかったことを思えば、すごい前進だとは思います。


でも、症例検討の方向性が違うのではないかと感じるところもいくつかありました。
また、9月号には河合蘭氏のインタビュー記事と、「創立85周年に寄せて 日本助産師会 改革の20年とこれから」という岡本喜代子会長のインタビュー記事が掲載されていましたが、それについてもやはり「これはないよなぁ」というものでした。


と、前振りが長くなっていまいましたが、一言で言えば「変節」とでもいえましょうか。
こんな世の中(助産師の世界)に誰がした、と言いたくなるような内容満載でした。


医療介入シリーズは一旦お休みして、次回は助産雑誌9月号の内容を具体的に紹介してみます。