10年ひとむかし 86 30年前だったらどうなっていただろう

一つの感染症を片時も忘れることなく生活するなんて人生の中で考えたこともない日々が続いていますが、この感染症拡大がもし30年前に起きていたら、40年前に起きていたらどんな状況になっていたのだろうと想像しています。

歴史にもしはないのですけれど。

 

1970~80年代はウィルス疾患についてわかってきたことが少しずつ増えてきた時代でしたが、急激に広がる「風邪かインフルエンザのような症状で重篤になっていく疾患」の原因を特定するまでに相当な時間が必要だったのではないかと思います。

得体の知れない病気が家族内や地域内に拡大して、なすすべもなく亡くなっていく。

考えただけでも恐ろしいですね。

 

急激に症状が悪化しても、当時は救急医療に対応できる施設が少なかったし、救急搬送やその受け入れも限られていた時代でした。

 

幸運にも大きな病院に入れても、人工呼吸器をはじめとした医療機器も限られ、検査や診断方法も治療法も確立していない疾患から回復できる人は、たまたま体力があって生き残れたという感じだったことでしょう。

 

たまたま運がよかった人は生還できても、標準的予防対策が浸透する以前の病院では、スタッフも何をどのように予防すれば良いのか大混乱に陥り、疾病に抵抗力の弱い人が相当犠牲になったことでしょう。

 

今回は、マスクと距離を保つことの有効性あるいは換気や手洗いの重要性などを、厚生労働省が初期から伝えていました。

 

あるいは今回の感染症拡大では、医療の進歩だけでなく生活環境が良くなったことで助けられたこともたくさんありました。

ホテルでの宿泊療養という選択ができましたが、これもまた1990年代ごろからのワンルームマンションとかビジネスホテルのような個室が基本の住環境の広がりがなければできなかったことでしょう。狭い部屋数の少ない家の中では、家族を隔離するのは難しいですからね。

 

食品の貯蔵性が格段に進歩したことや、4年前にはまだまだ限られていた食品や日用品の配達サービスが一気に進みました。

 

さらにこの感染症が拡大している時に、猛暑やら自然災害が重なりましたが、なんとか切り抜けてきたのもすごいことだと思います。

 

医療と、社会の「感染対策」がずれていると感じることもしばしばあるのですが、30年前40年前だったらと思い返すことで、未曾有の事態でもぶれていないし、社会の葛藤の中で混乱はあってもおおむねより良い方向に向かっているのだろうと思っています。

 

そして、この感染症と貧困や戦争などもっともっと過酷な世界の状況への蜘蛛の糸の葛藤が、また30年後40年後に何か生かされるといいのですが。

 

 

 

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