9時22分亀山行きの列車に乗りました。4両ですが通勤通学時間が終わったためかガラガラです。
南四日市駅辺りは工場地帯で、「塩浜」という地名のようです。また空がこんなに青いとはという歌が頭の中に浮かびました。
河原田駅を過ぎると、その名の通り鈴鹿川に沿った河川敷や堤防が見えます。灰色の瓦屋根の落ち着いた街並みと黄金色の稲穂と、ほんとうに美しい風景です。
関西本線に乗りたかった理由に、この鈴鹿川沿いを走ることもありました。
3年半前に南紀の風景を見るための乗った特急でこの鈴鹿川を渡ったはずですが、当時はまだ今ほどメモをしていなかったので細かい記憶が残っていません。もう一度この川を見てみたいと思っていました。
Wikipediaの鈴鹿川の概要を読むと、その歴史の長さにかなわないなあと思いました。
川の名前は大海人皇子が東国へ向かう途中、洪水難渋しているところに駅路鈴をつけた鹿が現れ、その背に乗って川を渡ったという伝説から付けられたとされる。
*鈴鹿川ぞいに*
鈴鹿川はゆったりと流れて、対岸にも灰色の瓦屋根の落ち着いた集落の風景が見えました。
無人駅で下車する人がいると、車掌さんが外を走って改札をされます。
そうだった、昨年長良川河口堰を訪ねるのにJR長島駅で下車した時にも、一人下車した私のために車掌さんが外で待っていて慌てて走ったことを思いだました。
なんでもIT化という夢のようなことばかりが語られるけれど、まだまだ現実の生活はこういう人の手による業務がたくさんあるし、優劣つけ難く必要なことも多いのではないかと思いながら車掌さんの働きぶりを見ていました。
沿線の水田が黄金色で、コンバインに乗って稲刈り風景があちこちに見えます。そのそばで、やはりたくさんの白鷺がいました。
今年も無事に稲刈りができた。各地を散歩するようになって、感無量の思いになる風景です。
鈴鹿川沿いはすぐに山間部に入るのかと思っていたら想像以上に広々とした平地が続き、加佐登駅のあたりで少し高台になりました。駅の目の前には電柱の工場があり、コンクリート製の電柱が積まれていました。加佐登の由来を検索してもわからなかったのですが、加佐登駅は1892年には関西鉄道として開業しているようです。どんな街の歴史があるのだろうと、積まれてる電柱を眺めました。
次の井田川駅のあたりで、安楽川、椋川そして鈴鹿川が合流する場所があり、その名も「川合」という地名があるようです。どの川もそして遠くの山なみも美しく、水田地帯の風景に惹き込まれていきました。少し線路が上りになり、堤防が近づいて9時52分に亀山駅に到着しました。
*亀山駅から加茂へ*
亀山駅で10時14分の関西本線加茂行きにのりました。地図では三重県と京都府は隣接しているのですが、こうして1本の電車で1時間20分で京都に入るのがちょっと不思議な感じです。
ちなみに駅の表示も関西本線でした。
ここからは一両のワンマンカーになりました。8月下旬の平日でしたが、案外乗客は多く満員だったので、また最後尾の特等席で立って行くことにしました。
黄金色の稲がまるで菜の花のように見えます。少し川幅が細くなった鈴鹿川沿いに緩やかにのぼっていくと、次の関駅の前にはひまわり畑がありました。一人下車した20代ぐらいの女性がその道を歩いていくのが、まるで絵画のようでした。
ここから川が蛇行しながら山あいに入っていきます。どこまでも美しい鈴鹿川の風景です。
小さな沢が流れ込んでいるのも見えました。
少し風景が開けると川沿いに水田と落ち着いた街並みが見えました。鈴鹿川だと思ったら本流は関駅から1kmほど西のところで分かれていて、こちらは支流の加太(かぶと)川でした。
ここから次の柘植駅まで地図ではトンネルのように見える場所でしたが、実際にはほとんどがそれほど高くない山あいを抜けていき、少しだけトンネル部分があっただけでした。
そのトンネルを抜けると小さな流れから溜池があるのが見え、そのさきにまた水田地帯があります。
地図で確認すると、大杣(おおそま)池、鴉(からす)山池、馬場谷池で、その先に柘植川が西へと流れ、伊賀上野駅の先で他の川と合流して木津川になり、さらに巨椋池(おぐらいけ)の先で宇治川、桂川と合流して淀川になって大阪湾へと流れ込みます。
あのトンネルが続くかと思ったそれほど高地でもない山あいのあたりが、一級河川鈴鹿川と一級河川淀川水系の分水嶺のようです。
柘植駅のそばには白百合が咲いていました。結構な人が下車したのは、ここから草津線で琵琶湖方面へ向かうのでしょうか。
美しい映画のセットのような街並みがあちこちにあり、柘植川は河合川と合流して佐那具駅の前を流れ、一瞬たりとも見逃したくないような風景が続きます。
伊賀上野駅のあたりではそれまで真っ青な夏空でしたが、突然の雷雨になりました。
このあたりからまた蛇行した川沿いに月ヶ瀬口駅のあたりを緩やかに下りながら通過し、開けた場所に出ると「大河原」でした。
沈下橋が見え、また山あいに入ると棚田も見えました。堰もあり、途中下車したくなる風景です。
いきを呑むような木津川の美しい流れに見入っていると市街地に入り、11時34分に加茂駅に到着。鈴鹿川から木津川へ、満足の車窓の散歩でした。
加茂駅で大和路線に乗り換え、「大和路」という路線名だけでも奈良へ向かうのだという喜びが湧いてくるのでした。
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