砺波駅から散居村をぐるりと回って下車したバス停とダムのそばに、庄川の河岸段丘を利用して階段状に記念公園が広がっていました。
平日の10時前ですが、ぼちぼちと公園を訪ねる人の姿があります。
この公園は、庄川に沿って地図を拡大したり縮小して眺めた時に偶然見つけました。
敷地内に庄川美術館もあるようで、さらに地図を拡大すると薄い字でしたが「庄川水資料館」を見つけました。
ここ数年各地の川を訪ねていますが、川の資料館はまだまだ少ないものです。
庄川、どんな歴史があるのだろう、ぜひこの資料館を訪ねよう。今回の散歩の二日目はここを訪ねるためのバスの時刻に合わせた計画になりました。
*庄川の歴史がまとまった資料館*
水資料館には鍵がかかっていて、美術館の方に声をかけて開けてもらうようです。
私一人のために申し訳ないのですが、このためにはるばる訪ねてきたのでありがたく入館させてもらいました。
入るとすぐに「庄川水系庄川浸水想定区域図」があり、現代の庄川と小矢部川流域のリスクハザードマップがありました。
正直なところこの時点では庄川はあまり耳にしたことのない川だったので、民俗資料館的な展示が多いのだろうと想像していました。
次のパネル「庄川の水利用」では、庄川から扇状地に沿ってそれこそ「扇のよう」に張り巡らされている水路に圧倒されました。
前日の車窓から見えた舟戸口用水もその一つです。
いくつかのパネルのあと、「600年前の庄川絵図」を見て驚きました。
現代の地図では小矢部川と庄川はそれぞれの水源地があって、最後に下流では数百メートル隔てて河口近づいて富山湾に流れ込んでいるのですが、もともとは庄川の流れが何本にも分かれてぐいと西へと曲がった川の一つが小矢部川として描かれていました。
福野駅付近が分水嶺のはずが平坦だった印象も、そのためかもしれません。
この扇状の何本もの流れを制して水を治めてきた歴史の記録を残そうとする資料館でした。
5冊ほど資料を購入して、圧倒されながら資料館を出ました。
*閉館が決まっていた*
ここを訪ねた記録を書こうと思いつつ、庄川と小矢部川の関係とその間にある砺波平野を流れる何本もの川や幹線水路の関係は複雑すぎて頭の中で整理できないまま時間が過ぎました。
購入した資料は小学生向けですが、庄川とこの地域の地理や天候などがよくまとまっています。
こんな資料館が身近にあって、自分の住んでいる場所を学ぶことができるなんてうらやましい限りですね。
と、この資料館を紹介しようと検索したら、「2024年3月31日で閉館」がすでに決まっていたことを知りました。
松村外次郎記念庄川美術館・庄川水資料館が2024年度に閉館し、2025年以降に解体されようとしています。
庄川美術館は1989年(平成元年)庄川町出身で二期会名誉会員であった松村外次郎氏から彫刻作品を贈られたことに端を発し県内初の町立美術館として開館しました。自然公園と調和した庄川峡の景観を考慮して高台に建てられています。山と川と丘の庄川ちくならではの地形風土が、外次郎をはじめ多くの芸術家を育んできました。松村外次郎の収納作品の「常設展」、県郷土ゆかりの作家の「企画展」、実技講座や講演会、美術に親しめる「普及活動」等が行われ生涯教育の場を提供してきました。
水資料館は庄川地域が、山から切り出した木材を集積し搬送する地であったことや、砺波平野の要にあって河川の管理にかかわる人たちの様子を後世に伝える貴重な資料館で、木工や木彫、工芸家を育んできたことなどを伝えています。
市は美術館廃止の理由を「老朽化で雨漏り」としていますが、雨漏りは修繕の必要がありますが、耐震化もされており、決して老朽化した施設とは言えません。また「両施設とも高台にあって高齢者や障害者が来館しにくい」と言いますが、バリアフリー化もされておりこの高台こそが四季折々庄川峡と嵐山の絶景を楽しめるところなのです。この宝の場所を遊具の設置場所と取り替えるというのはあまりにも悲しいことです。
私たちは両施設の設立から三〇余年運営に関わった皆さんや、この施設を愛し誇りにしてきた幾多の人々の思いを大切にして、現在の地に美術館・水資料館を存続させた水記念公園の再整備を強く要望します。
(松村外次郎記念庄川美術館・庄川水資料館の存続を求める署名ーChange.org、2022年3月26日)
2022年8月11日付の「廃止決定 庄川美術館と資料館」(中日新聞)によると、署名や要望書は受け取りを拒否されたようです。
その地域の内情はわからないのですが、水資料館の展示内容や資料はこの地域の歴史がよくわかるものでした。ぜひそれを残していける見識を持った人が後に続くといいですけれど。
何にしても仕事というのは経験を積む長い時間が必要なものですし、安定した雇用を作るのは社会の責任ですね。
国内全体の経済成長が止まった国とか時代というのは、まずこういう大事な部分から削られていくのかもしれませんね。
「記録のあれこれ」まとめはこちら。