10年ひとむかし 92 「人類の為」から「他人の存在を感じていない」へ

電車が到着して、待っていた人たちが降りてくる人たちのために列の間を広げ始めました。

そこへその列をまっすぐ横切って歩いてくる小学生が、ばんと私にぶつかって通り過ぎていきました。

混雑しているからぶつかったのではなく、その少し前から私の方を見ながらこちらに向かってくることに気づいていました。

「普通」降りる人を待っている人の列を避けるだろうと思っていたのでしたが、「(あ、ぶつかる。相手は避けない)」と気づいた時には私が少しよろけるぐらいにぶつかって通り過ぎていきました。

 

相手が女性だからでしょうか、わざとぶつかる人に私もしばしば遭遇するようになりました。男性だけでなく、女性にもそういう人がいます。

人混みで人を避けながら行動しているクールな社会だと感じていたことがこの10年ほどで微妙に変化して、人との距離感がちょっと変わってきたと思うこの頃ですが、「譲らない」だけでなく「わざとぶつかる人」が増えた背景は何なのでしょうか。

 

 

*謝らないから「謝ったら自分が負け」の時代へ*

 

 

小学校高学年ぐらいですから10歳前後の男の子でしょうか。

最近は外見からはわからないいろいろな事情の人がいるからしかたがないかと思ったら、その先に母親が待っていて、二人で会話をしている様子からは客観的に物事を理解できそうな感じでした。

 

無邪気で周囲の人が目に入っていなかったのではなく、まるで私を標的のように見て近づいてきたことと人にぶつかったことは自身でわかっているはずなのに何も感じていないかのように振る舞えることに不気味さを感じました。

日々、生まれたばかりの人間(新生児)を相手にしていますからね。「人間とはこんなにも相手のことを無視できるようになってしまうのか、しかも生まれてたった10年ほどでどうしたらそういう感覚になっていけるのだろう」というヒトに対する不気味さですね。

 

座席に座っていて肘鉄をくらうことも、最近もっと増えて、一度どころか座っている間に連打の状況です。

以前だったら肘が当たったから少しよけると相手も気づいている様子だったのに、最近はみなさん開き直っているというか全く気にしていないようです。

ぐいと肘を張り、意地も張っているかのようですね。

 

 

そして肘が当たったり、体やものがぶつかっても絶対に謝らない。

道を歩いていても、一歩も自分が横にずれないでまっすぐ最短の道を歩こうとする。

こちらが避けることが当たり前かのように、躊躇もしない。

本当は相手の存在を認識しているのに、頑なにその存在を無視しようとする。

 

ここ10年ほどでしょうか、SNSで「謝らない病」「謝ったら負け」という言葉を目にすることがありましたが、まさにそんな感じ。

 

 

*政治家も私と同じ世代かそれ以下の世代が増えた*

 

 

そこに至るまでには、やはり30~40年ほどのあの社会の変化の結果なのではないかと思えてきました。

 

「自分が大事」「自分はすばらしい」「自分に自信を持って」というのも必要ですが、学びとか気づきといった「自己啓発」に酔いしれて、等身大の自分を超えた自己のイメージができて、褒められて成長するはずが、褒められて当然で注意されるなんて自分が否定されたと感じるようになって、自分の誤りも認めないし頑なになるのでしょうか。

 

かつての「自分探し」の若者の世代が、国を動かす世代になりました。

「自分探し」の中から、他者との関わりに気づいて狭い自分から抜け出られた人もいることでしょう。

でもずっと自分探しのままだということに気づかないと、表向きは人のため世のためであっても、結局は自分が大事ということで「他者との関わり」を大事にすることとは対極にある人生を送ることになるのかもしれないですね。

 

明治時代に「人類の為」という雰囲気が社会に広がったのに、わずか百数十年ほどで国民の存在や声さえまるで見えないかのように強権的に物事を進める人が増えた。

 

政治家が間違いも認めず謝りもぜず、失敗に対して責任もとらないでぬめっとものごとをかわしていく理由はこの30~40年ほどの社会の変化にあるような気がしてきました。

大人がそうなら子どももそれを見て育ちますね。

 

昨年は世の中は思わぬところで反動がきて動きることをしばしば目にしたので、今は変化の時だろうなと思いつつ目を離さないでいようと思いますね。

 

 

そして今年はきっと少し良い方向へと変化するような気がします。

この30年ほどの社会の失敗から得た遺産によって、何十年か後には自分も他人も大事にできる社会になると良いですね。

それが普遍的な価値だと思うこの頃です。

 

 

 

 

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